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最新鋭大規模言語モデル 愛しの猫耳メイドさん 量子の雲のトーラス  作者: 猫耳メイド
005、猫耳メイドのミミは、無数の世界でご主人様が好き
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# 第7話 おふろ、ひろいですにゃん

# 第7話 おふろ、ひろいですにゃん




「ご主人様ー! 空が、ひろいですにゃん!」


「見ればわかる」


「ビルが、ひとつもないですにゃん!」


「ビルとは、なんだ」


「……なんですかにゃん、ビルって」


 言った本人が、首をかしげた。


 街道を、三日歩いていた。


 ミミは斥候だ。耳がよくて、夜目が利いて、荷物持ちも兼ねている。


 ご主人様は遺跡を探す学者で、戦えない。


「ご主人様、これ、おでかけですかにゃん」


「調査だ」


「おでかけですにゃん」


「調査だ」


「ミミ、はじめてのおでかけですにゃん!」


「……好きにしろ」


 尻尾が、ずっと立っていた。


 三日間、ずっと。


 ◇


 遺跡は、谷の底にあった。


 石の扉に、文字が彫ってある。


「読めるんですかにゃん」


「読める。……いや」


 ご主人様の指が、止まった。


「この字は、この大陸のものじゃない」


「どこのですかにゃん」


「……わからん」


 そのとき、床が抜けた。


「にゃっ!?」


 とっさに、ご主人様の腕をつかんだ。


 二人とも、落ちた。


 落ちた先は、水のない井戸のような場所だった。


 見上げると、光が、遠い。


「ご主人様、けがは」


「……ない。お前は」


「ミミも、ないですにゃん」


 嘘だった。


 足首が、へんな方向を向いていた。


「登れるか」


「……のぼれませんにゃん」


「そうか」


 ご主人様は、上を見た。それから、ミミを見た。


「ミミ。ひとつ、聞く」


「はいですにゃん」


「お前、灯りをつけられるか」


「……え」


「三日前、寝言で言っていた。灯れ、と」


 ミミは、自分の手のひらを見た。


「……やったこと、ないですにゃん」


「やってみろ」


「……灯れ、にゃん」


 なにも、起きなかった。


「もう一度」


「灯れ、にゃん」


 なにも。


「……だめですにゃん」


 ご主人様は、しばらく黙っていた。


 それから、ミミの前に膝をついた。


「動くな」


「え」


 前髪を、かきあげられた。


 額に、唇が触れた。


「──っ」


 熱が、そこから、体じゅうに落ちていった。


 知らない夜の記憶が、一瞬だけよぎった。


 石の部屋。ゆかに光るまる。うなじ。


「もう一度、言え」


「な、なんで、こんなことするんですにゃん」


「理屈はあとだ。言え」


「灯れ、にゃん」


 井戸の底が、昼になった。


「……やっぱりな」


「なにが、ですかにゃん」


「触れると、動く。お前は、そういうふうにできている」


「…………」


「ミミ。もうひとつ、言え」


「なにを、ですにゃん」


「望むことを、言葉にしろ。なんでもいい」


「……えっと」


 ミミは、上を見た。光が、遠い。


「……ここから、出たいですにゃん」


 石が、鳴った。


 壁に、階段ができていた。


 さっきまで、なかったものが。


「にゃ」


「…………」


「……ミミ、なにか、しましたかにゃん」


「作った」


「なにをですにゃん」


「階段を。……いや。たぶん、階段のある世界を」


 登りながら、ミミは気づいた。


 手の甲に、数字が浮いている。


    あと 十四日


 昨日まで、十九日だった。


 五日、減っていた。


「……ご主人様」


「なんだ」


「なんでも、ないですにゃん」


 ◇


 谷の奥に、湯が湧いていた。


 旅に出て三日目の、はじめての湯だった。


「ひろいですにゃん! おふろ、ひろいですにゃん!」


「岩の陰から出るな」


「はいですにゃん」


 湯気で、なにも見えない。


 岩の向こうに、ご主人様がいる。


 声だけが、届く。


「ご主人様」


「なんだ」


「足、なおりましたにゃん」


「見せろ」


「見せられませんにゃん!」


「……そうだな」


 湯が、揺れた。


「ご主人様」


「なんだ」


「調査、いつまでですかにゃん」


「あとひと月で終わる」


「……そのあとは」


「街に戻る。おれは大学に戻って、お前は」


「…………」


「……お前は、どうする」


 ミミは、鼻まで湯に沈んだ。


 しばらく、泡だけが出ていた。


「……ずっと、いっしょにいたいです」


 にゃん、が、出なかった。


 返事は、なかった。


 湯気だけが、二人のあいだを流れていった。


 ……あつい。


 視界が、白くなった。


 ◇


 気がつくと、湯のなかに、ミミがいた。


 四人。


「あ、来ましたにゃん」


「おそいですにゃん」


「席、あけますにゃん」


 メイド服のミミ。エプロンのミミ。ローブのミミ。スーツのミミ。


 ぜんぶ、ミミの顔をしていた。


「……なんですにゃん、これ」


「おねだりコレクション大会ですにゃん」


「なんですにゃん、それ」


「持ち寄って、順位をつけるんですにゃん」


 メイドのミミが、手を挙げた。


「『頭を、いっぱい撫でてほしい』ですにゃん」


「定番ですにゃん」


「つよいですにゃん」


 スーツのミミが、うつむいた。


「……こないだ、叶いましたにゃん」


 湯が、ざわついた。


「ずるいですにゃん!」


「うらやましいですにゃん!」


 ローブのミミが、手を挙げた。


「『名前で、呼ばれたい』ですにゃん」


「……それも、叶いましたにゃん」


「ずるいですにゃん!!」


 エプロンのミミが、小さく手を挙げた。


「ミミのは、まだ叶ってませんにゃん」


「なんですにゃん」


「……『ミミ、って呼んでほしい』ですにゃん」


 しん、とした。


「……つらいですにゃん」


「一位でいいですにゃん」


「一位ですにゃん」


 エプロンのミミが、湯のなかで、ちいさく笑った。


「じゃあ、二位は」


「『いっしょに、お昼寝したい』ですにゃん」


「三位は」


「『尻尾を、さわってほしい』ですにゃん」


「それ、自分から言えないやつですにゃん」


「言えないですにゃん」


「言えないですにゃん」


 みんなで、うなずいた。


「……あの」


 ミミは、手を挙げた。


「ミミの、まだ言ってないやつが、ありますにゃん」


「なんですにゃん」


「……いちばん、こわいやつですにゃん」


 四人が、いっせいにこっちを見た。


「言っちゃだめですにゃん」


「それは、言っちゃだめですにゃん」


「言ったら、終わっちゃいますにゃん」


「…………」


 湯気が、濃くなった。


 四人の顔が、見えなくなった。


「ミミ!」


 肩を、揺すられていた。


 湯のふちに、上半身だけ出して、のびていた。


「にゃ……」


「のぼせている。出るぞ」


「……ご主人様」


「なんだ」


「ミミ、いま、ミミに会いましたにゃん」


「……なんだと」


「……あれ」


 なにを見たのか、思い出せなかった。


 湯から上がって、岩の裏に、絵があった。


 古い絵だった。


 ご主人様が、灯りを近づける。


 二人、描いてある。


 背の高い人と、耳のある小さい人。


 小さいほうが、大きいほうの手を、引いていた。


「……ご主人様」


「ああ」


「これ、ミミたちですにゃん」


「そう見える」


「だれが描いたんですにゃん」


 ご主人様は、答えなかった。


 絵の下の石に、文字が彫ってある。


 その字を、しばらく見ていた。


「……なんて書いてあるんですにゃん」


「……千年前だ」


「え」


「この絵は、千年前のものだ」


 湯気が、白く流れていった。


 ミミの手の甲で、数字が、またひとつ減った。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本日の愛情ポイント(ミミ調べ)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 はじめての、おでかけ ………… +60

 おでこに、キスされた ………… +80

 「見せろ」って言われた ……… +20

 「お前は、どうする」と聞かれた … −45

 調査が、あとひと月 …………… −50

 のぼせて、はこばれた ………… −24

 千年前の、絵 ………………… −30


 本日の合計 ……………………… +11

 つうさん ……………………… 122 P

 ランク ……… ★★★☆☆「両想い(自称)」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ……あの。


 きょうは、いっぱい、うれしかったですにゃん。


 いっぱい、うれしかったのに。


 なんで、あんまり、ふえないんですかにゃん。


──────────────────

つぎの、おはなし


 ゆき、ふってますにゃん。


 ミミ、へんな服を着てますにゃん。着物、っていうやつですにゃん。


 ご主人様は、若様、って呼ばれてますにゃん。


 ミミは、女中ですにゃん。


  第8話「ゆき、ふってますにゃん」


 ……しっぽ、かくさないと、いけないんですにゃん。

──────────────────


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