第百十一話「加速の報告」
センからの報告は短く、しかし内容は重かった。
「封印の状態が変化しています。先月より薄くなっています。このペースだと、一年以内に対話が必要になる可能性があります」
一年。二年という想定が、さらに縮まっていた。
チームを集めて状況を確認した。センが観測データを持参してくれた。数値を見ると、確かに変化が速くなっていた。
「原因は何ですか」とクルトが聞いた。
「炉の逆転が止まってから、封じられた存在が少し目覚めてきている可能性があります」とエムが言った。「眠りが浅くなると、封印への負荷が増えます」
「封印への負荷が増えると、薄くなるのが速くなる」
「そうです。ただし、これは悪い変化ではないと思います。対話の準備が整えば、向こうが目覚めていた方がむしろ対話しやすい」
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「一年で、どこまで準備できますか」と蒼は全員に聞いた。
エムが答えた。「炉との接続の深度は、今の訓練を続ければ一年で十分なレベルに達すると思います。補助炉での練習も進んでいます」
「俺自身の《限界突破》はどうですか」
「今のペースなら、一年でBの上限くらいまで届くと思います。それで十分かどうかは対話の状況次第ですが」
「言葉は完成しています」と蒼は言った。
「チームの体制は整っています」とクルトが言った。
「一年でやります」と蒼は言った。「準備の密度を上げます」
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方針が決まってから、訓練の頻度が上がった。
補助炉での接続訓練は毎日行うようになった。感情共鳴発動の練習も毎日続けた。魔法陣の設計も、より複雑なものに取り組み始めた。
そんな中、ある日リーナが訓練場の外で蒼を呼び止めた。
「少し休みませんか」
「まだできます」
「できることとすべきことは違います」とリーナが蒼を見た。「昨日からずっと訓練しています。飯もちゃんと食べていない」
「一年で」
「一年あります。今日休んでも、一年は変わりません」
蒼は少し黙って、それから頷いた。「そうですね」
「わかれば良いです。夕飯を食べましょう」




