59話 サルスト人ゴバの回顧
この星への第一次サルスト人は、およそ1800人。
ここに来る前、ゴバは村長をしていた。
ある日、神のお告げがあった。
「西より、異邦人がやってくる。彼の言葉を信じて準備せよ!」と。
それから3年、忘れたころに怪しげなボロボロの男が隣村との境にやってきた。隣村の者は寄ってたかって、自分たちの村には近づかせないように罵った。
それを見たゴバは、きっと西から来る異邦人ではないかと思い、彼を家に招き入れた。
先だっての神のお告げに従って、お迎えする部屋を母屋の東側に張り出して作っておいた。ベッドと机と椅子。
そこへ案内して、風呂を浴びてもらい、用意した衣服を着てもらった。
彼は、毎日村の中をうろうろしては、時々相槌を打つように頷いていた。牛や鶏など家畜を見て回り、近くの森にも散策に出かけた。村長のゴバは忙しい合間を縫って、一緒に歩いたこともあった。
彼に与えた小屋を覗いてみると、こちらが備えたベッドや椅子、机以外には何もなかった。
彼は、時々丸い棒のようなものを取り出して、牛の前にかざしたり、我々の方に向けてみたり、机の上でそれを触っていた。あれは何だろう??。
10日ほど経ったある日、彼が朝早く私のところにやってきた。
「10日後、北の山から炎が降りてくる。この地は炎で焼かれるので、非難を勧告する。10日後の朝に避難するものと家畜を集めておくように!。」
とそれだけ言って、忽然と消えた。
確かに、3年前から地揺れが頻繁に起きており、古い石碑には北山からの炎の話が刻まれている。そこには、200年ごとに大小の災害の事実が列記されていた。
そして、前回から既に193年が経過している。何時起きても不思議がない。
ゴバは、石碑の話と異邦人の話を村人にした。また、隣村にも伝えた。
そして、当日の朝が来た。
北山の中腹から、激しい噴煙が噴出した。と同時に小刻みに地揺れがしてきた。
村の広場に集まった人は、およそ1500人。隣村からも300人ぐらいが来ている。
背荷物の人、荷車に家財を積んだ人、家畜を曳く子供などなど。
そして、太陽が上に上りきった頃、それはやってきた。
今まで、森があったところが緑色の草原に変わった。そして、その草原から2人の人が歩いてきた。
一人は、先日まで村長宅に滞在していた男。もう一人は、白と黒の基調でふわふわした衣装の小柄な少女。
「さあ、皆さんこちらへどうぞ。」と少女。ゴスロリ衣装のアイリスである。
村人は怪訝そうにしていたが、村長の掛け声で次々と歩みを速めて入ってゆく。
荷車や家畜などがあって、およそ2時間かかった。
「みなさん、予定の方はすべて移動が終わったようですが、もう一度回りを確認してください。」と男。
陽炎ように見えていた村がゆっくりと、赤い炎に包まれていった。皆は立ち止まってその光景に戦慄した。
「それでは、転移門を閉めます。」




