表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Pandora(改稿版)  作者: あすか@お休み中
第3章:鋼鬼狩りの俺は最強剣士……かな
PR
88/107

殺戮

 コロニーの中に後続の車両も引き入れると、このコロニーを治めている安川と言う人物と面会する事にした。理由は俺たちへの攻撃的な行動への謝罪なんかじゃなく、そんな事をせざるを得ないほどのこのコロニーの現状を知るためだ。

 面会場所はコロニーの中にある元々大手企業が入っていた建物の上層階の一室。立派な調度品をそろえた応接室に福原と土居、沢井と俺が並んで座り、安川の到着を待つ。窓から見えるこのコロニーの光景から推測するに、俺のコロニーなんかより、はるかに規模が大きそうだが、その多くが何もない土地っぽい。なぜに、そんな広大な範囲をコロニーに取り込んでいるのか? なぜにその土地で耕作もしていないのか? そんな疑問を抱きながら、不自然な光景に目を向けていると、部屋のドアをノックする音がした。

 ドアを開けて現れたのは、眼鏡をかけた60近そうな小柄な男だった。


「ここを治めている安川です」


 外の者たちも痩せ気味だったが、コロニーのトップだと名乗ったこの男も痩せ気味の体格だ。マジで食料が不足しているのかも知れない。


「第43普通科連隊の福原と土居。

 それと供の者二名」


 福原が立ち上がって、そう名乗った。俺と沢井はお供扱いらしい。


「お話のご用向きは?

 ここの者たちが騒動を起こしたそうですが、その事でしょうか?」

「それは逆に私どもの方が怪我をさせてしまい、申しわけなく思っております。

 うかがいたい話と言うのは、ここの食料事情です。失礼なようですが、決してよいとは言えなさそうに見えます。

 私たちはいわば、政府側の人間ですから、何か協力できることがないかと」

「ありがとうございます。

 もし、お助けいただけるのなら、ありがたい事です」


 そう言って、安川がここの現状とこれまでの経緯を語った。


 それによると、俺たちがいるここは製パン工場らしい。そして、少し離れた場所にあるコロニーの統治者 田井省吾がこの工場に目を付け、小麦の耕作地を拡大するように勧めてきたのだそうだ。

 田井と言う人物の話は俺のコロニーにも届いていた。自分の農地を囲む小さなコロニーから出発し、所有者が逃げ出し、実質的に耕作放棄地になった周辺の農地を吸収し、巨大な農地を持つコロニーを作り上げた人物。そこに、食べ物にあぶれた者たちを雇い入れ、農業に従事させ、今では一大穀倉地帯を統治する人物だが、決して評判はよくはない。

 その田井がしばらくは食料を供給してくれていたらしいのだが、小麦のための耕作地が完成する直前から、食料が届けられなくなったらしいのだ。このコロニーとしては、耕作地を広げるためと、その後の小麦の栽培に外部から人を集めていたため、田井からの食料が滞ったダメージは大きく、多くの者たちが飢えているとの事だ。


「なぜ、食料が届かなくなったのか、分かっているのですか?」

「食料が遅れるようになって、田井さんの所に使者を遣わしました。

 最初の者が戻って来て言うには、鋼鬼が多くなって、コロニーから食料を輸送できない状況だ。鋼鬼が少なくなれば、必ず食料を運ぶと約束してくれたらしいのですが、それっきりで。

 その後も使者を出したのですが、それ以降は戻って来ないのです」

「なるほど」

「なら、今から行きますか?」


 福原の言葉を土居が受けて、安川にたずねた。


「今から……。ですか?」

「はい。嫌なんですか?」


 にこりとした笑顔で土居が言っているが、嫌とかではなく、急すぎるだろと思わずにいられない。


「わ、わ、分かりました」

「じゃあ、沢井さん、一緒に来てくれるかな?」

「分かりました」


 土居の誘いに沢井は迷いも見せずに承諾した。


「なら、俺も」


 鋼鬼に取り囲まれたコロニーに向かうと言うのなら、俺も行くしかないだろう。そんな思いで、立候補を表明した。


「いや、本当に鋼鬼が多くなっているのなら、危険すぎる。

 君はここに残っていてくれ」

「そんな訳にはいかないでしょ。

 沢井さんだって、行く訳でしょ。

 女の子の沢井さんが行くのに、男の俺が留守番と言うのは無いでしょ!」

「それって、女を見下してない?」


 沢井がちょっときつめの視線で、睨み付けるようして言った。


「そう言う訳じゃないけど、戦いは男の方が向いてるもんだろ」

「分かった。

 君も一緒に行こう」

「ありがとうございます」


 福原の言葉で参加する事になった俺も含め、上本の運転で田井のコロニーを目指す事になった。


 そのコロニーは道が普通の状態だったら、車で20分ほどの距離にあった。今では、放置された車や鋼鬼の群れ回避などの手間がかかり、二時間ほどを要して、そこに到達した。

 特にコロニーの周辺に鋼鬼が多いと言う事もなく、ごく普通の数だ。


「修君、この数ならいけるか?」


 福原が言った。なぜだか、今回は福原の兵たちは連れて来ていない。戦力は福原、土居、沢井、俺の四人だけだ。この中で、鋼鬼退治なら俺しかいないに違いないが、じらしてみる。


「まあ、いけない数じゃないが、俺なのか?」


 不満げな口調を添えて、一旦拒否っぽい言葉を口にした。


「瑠璃ちゃん、だったら私たちで行く?」

「じゃあ、そう言うことで」


 土居が沢井を誘うと、沢井もあっさりと承諾し、車のドアに手をかけた。


「いやいや、それ違うだろ!

 ここは俺だろ?」


 俺のじらし作戦は女性陣のスルー作戦の前に破られてしまった。きっと、スルーする事で、俺を焦らせると言う作戦に違いないと分かってはいても、女性陣を鋼鬼の前に押し出すなんて事はできやしない。


「俺が行く」


 車から飛び出すと、レーザーソードを起動した。

 鋼鬼を狩るのは俺が背負ってしまった宿命だ。

 お前たちさえいなければ!

 そんな思いを込めて、鋼鬼を脳天から真っ二つに切り裂く。

 いつかは俺自身もこんな姿になり、最期の時を迎えるかも知れない。それまでの間、詩織のためにも、一体でも多くの鋼鬼を葬ってやる。それがただの俺自身の自己満足だとしても。

 斬って、斬って、斬りまくる。

 そんな俺の姿を田井のコロニーの見張り台の上にいる男たちが見て、驚きの声をあげている。


 鋼鬼狩りの修。その名は伊達じゃない。

 今までに、どれだけの鋼鬼を葬って来たか。それでも、俺の心の渇きは癒されない。無くしたものが大きすぎたから。

 視界に映る最後の一体を腹部辺りで真っ二つに切り裂くと、地上に落下した上半身にある頭部をレーザーソードで切り裂き、この鋼鬼の生き物としての存在を抹殺した。


「終わった」


 達成感もない代わりに、罪悪感もない。ただ、虚しい殺戮が終わっただけ。そんな気持ちを抱きながら、一人そう言い終えた時、俺の背後に福原たちが乗る車がやって来た。

 振り返ると、安川が車から降りて来て、田井のコロニーを取り囲む壁の上に設けられた見張りの塔に向かって叫んだ。


「佐伯のコロニーの安川が来たと田井さんに伝えてくれないか?」


 安川の言葉に応えたのか、コロニーの門が開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ