Ver.1.2
ノウンの視点に戻ります。
誤算だった。
やはりシナリオにないことをすると予想外な展開になるのはニーアの時と同じだった。
だが、ここまでしておいてダメでしたと諦められるオレではない。
アイシャとの戦いの時もそうだったが、自称往生際の悪いことに定評のあるオレは、なんとしてもニーアを、そしてコハル達を守りたかった。
今の自分にはそれしかできないのだから。
だが、センチネルのガチの攻撃を退ける自信は今のオレにはない。
そもそも、ゲームの中でプレイヤーが盾になって守ったというのもないし、今のオレは主人公ではなく波動人形だ。
よしんばこの身体で、一発は守れても次はどうなることやら。
(できればそれであのセンチネルもクールダウンしてくれると助かるんだが……ダメだったらダメだったで何発だって受け止めてやる! すまないなノウン、こんなオレが魂で)
オレの判断で巻き込まれるノウンに謝りながらもオレは魂の震えを抑えず、ノウンもそれに応えるように波動炉が唸りを上げていった。
【ダメだよ、ノウン!】
覚悟を決めるオレの視界にチャットが流れる。
慌てて周囲を確認したら、オレの隣に立ち、腰辺りにギュッとしがみついているニーアの姿があった。
幼体を確保し、親の元に送り出す二人の姿を確認した時はホッとしたが、親の怒りが収まらなかった段階でこうなる可能性を考慮していなかった。
いや、こうなるだろうと心のどこかで思っていた不甲斐ない自分が正直いた。
だからだろうか、あまり驚き狼狽えることはなかった。
【すまない……あれだけキミには使わせないと豪語しておきながら、このザマだ】
オレの自嘲気味なチャットにニーアは首を振る。
【一緒に、コハルの元に帰ろう】
その言葉を皮切りに、ニーアが離れ、後ろに回るとオレの波動に合わせて声を発していく。
共振ブーストだ。
(いくぞ、ノウン!)
オレの魂がさらに震え、それに応えるように波動炉がさらに唸りを上げていく。
耐久値バーが変化して見る見るうちに上がっていった。
さらに自身の身体が変化するにつれ、持っていた大弓にも光の粒子が纏わり付くと、一回り大きく、より強力な大弓へと変化していく。
そして、タイムリミットが表示されると、オレはその大弓をセンチネルへと向け、太く硬質になった弓弦を引いていった。
それに合わせて、弓へと光が収束し、巨大な光の矢が姿を現す。
オレの視界の隅で親の近くに浮遊し、その気迫に押し返されてどうしたら良いのか分からず、必死に親へと訴えかけているような幼体の姿が見えた。
(頼む、あの子のためにも殺させないでくれ)
だが、幼体の訴え空しく、それを掻き消すかのようにセンチネルの叫びが一帯に響き渡ると、それに合わせて熱球がオレ達に向かって襲いかかった。
オレは意を決し狙いを定めると、足付近の装甲が変形し、安定するように地面に固定される。
これで避けるとか、逃げるとか、そういった行為はできなくなった。だが、する必要性がないくらいの強力な光の矢があることをオレは理解している。
そう、今のオレはゲームで登場してセンチネルを倒したあの波動弩弓とかいう武器に似た性能の大弓を持っているからだ。
(ニーアの力を借りているんだ! 負けはしない!)
オレは迫り来る熱球に狙いを定め、そして、引き絞っていた弓弦を離した。
襲いかかる巨大な熱球に向かって光の矢が放たれる。
ぶつかった瞬間、轟音と共に衝撃波が町を襲った。
だが、それで終わったわけではない。
破裂し爆散する熱球を貫き、光の矢は衰えることなくセンチネルへと飛んでいく。
が、その矢はセンチネルの頭の上を掠めて空高くへ飛んでいき、光となって消えていった。
相手が避けたのではない。幼体の姿を見てオレは最初から当てるつもりはなかった。
さすがに予想外の出来事だったのか、その圧倒的な力を見せつけられて、センチネルの動きがやっと止まった。
オレが構えていた弓を降ろすと、ニーアの声が聞こえなくなる。
後ろにいたニーアが喉を押さえてフラついたので慌てて支えようとしたが、どうやったら良いのか一瞬で判断ができず、操作に手間取り動けなかったオレの代わりに駆けつけた少女が彼女を支えてくれた。
「やったね、ニーア、ノウン!」
喜ぶコハルにオレは頷くBOTしかできず、もうちょっとなにかした方が良いのかなと今はどうでも良いことを考えてしまう。
空中では呆然としていたセンチネルが近づく幼体を迎え入れ、なにか音のようなものを発し合っていた。
しばらくして、センチネル達がフヨフヨと何事もなかったかのようにファイスから離れていく。
ここでセンチネルに文句を言う輩など一人もおらず、町の皆の安堵の声だけが伝わってきた。
(良かった。本当に良かった。今回も運命に抗うことができたみたいだ)
コハルの喜びに触発され、町の皆が喜びの声を上げる中、オレはニーアを見て、これから先もこんな運命の悪戯が起こるのだろうかと心配になるのであった。




