EP 3
食費削減大作戦! ルナの家庭菜園開幕
「月末までに300万G。このふざけたローンを返済するため、我がシェアハウスは本日から『超・緊縮財政』に移行する!」
爽やかな朝日が降り注ぐ、マイホームの広大な庭(芝生付き)。
俺は腕を組み、同居人たちに向かって高らかに宣言した。
「最大の出費である『食費』を極限まで削る! そのために、この無駄に広い庭を耕し、自給自足の『家庭菜園』をスタートさせるぞ!」
「ええーっ!? せっかくの綺麗な芝生が土だらけになっちゃうじゃない!」
キャルルが不満げに唇を尖らせる。
「文句を言うな。背に腹は代えられないんだ。……というわけでルナ、頼んでいた『アレ』は用意できたか?」
「ええ、もちろんですわマモル様」
ルナが優雅に一歩前に出ると、どこからともなく取り出した小さな麻袋を掲げた。
「わたくしの実家(魔界)の庭師から取り寄せた、最高級の特製シード(種)ですわ。これならどんな痩せた土地でも、あっという間に豊穣の恵みをもたらしてくれますわよ」
「よし、でかした! さすがルナだ。早速植えよう!」
俺たちは庭の隅の土を掘り返し、ルナが持ってきた怪しげなドス黒い種を等間隔に植えていった。
腹を空かせたリーザも「これでパンの耳以外のものが食べられますの……!」と、よだれを垂らしながら一生懸命に土を被せている。
「仕上げに、この『魔界特製・超速成長肥料(栄養度10000%)』を数滴垂らせば……完成ですわ」
ルナがスポイトで、紫色の怪しげな液体を土にポトリと落とした。
その瞬間だった。
――ドゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
「な、なんだ!?」
庭の地面が、まるで局地的な大地震のように激しく揺れ始めた。
バヅンッ! メキメキメキッ!!
土を突き破り、尋常ではないスピードで植物の芽が吹き出す。
芽は数秒で大木のように太い茎へと成長し、巨大な葉を広げ、どす黒いツルを四方八方へと伸ばし始めた。
「ひゃあっ!? な、なんかツルが足に絡みついてきましたの!」
リーザが悲鳴を上げる。彼女の足元には、真っ赤な果実をつけた巨大なトマト……のような植物が、タコのようにウネウネとツルを動かして這い寄っていた。
「シャーッ!!」
「……は?」
その巨大トマトの表面に突如として『裂け目(口)』が開き、鋭い牙を剥き出しにして威嚇してきたではないか。
「ル、ルナ! これ、ただの野菜じゃないぞ!? 明らかに殺意を持ってる生き物だ!」
「あら? それは『テンタクル・ブラッドトマト』ですわ。獲物の血を吸うことで糖度を増す、魔界では定番のサラダ野菜ですのよ?」
ルナが呑気に解説している横で、今度はキャルルの背後から、大人の背丈ほどある巨大なキャベツが大きな口を開けて襲いかかってきた。
「危ないっ、キャルル!!」
「チッ、鬱陶しいわね!」
キャルルが振り返りざまに渾身の右ストレートをキャベツの芯に叩き込む!
ドゴォッという鈍い音が響くが、キャベツは分厚い葉のクッションで衝撃を吸収し、再びキャルルに噛みつこうと迫る。
「くそっ、打撃が効きにくい構造か……!」
俺は舌打ちをし、腰に提げていた得物――『三節棍』をシャラッと引き抜いた。
「いいかキャルル、ああいう球体で衝撃を吸収する敵には、重心を崩して内部に回転のエネルギーを叩き込むんだ!」
俺は迫り来る巨大キャベツに向かって踏み込み、前世(数学教師)の頭脳をフル回転させた。
(対象の質量は約50kg! 突進のベクトルに対して、斜め45度の角度から三節棍の第一節を接触させる! 作用点に遠心力を乗せ、テコの原理で威力を倍増……ここだ!!)
バァァァンッ!!
俺が放った三節棍の一撃が、キャベツの回転軸を完璧に捉えた。
運動エネルギーを逆利用された巨大キャベツは、錐揉み回転しながら宙を舞い、マイホームの頑丈な外壁に激突してベチャッと弾け飛んだ。
「ふぅ……よし、これで今日の夕飯の『キャベツの千切り』は確保できたな」
俺が三節棍を肩に担ぎながら息を吐くと、
「たす……けて……消化、され……ますの……」
いつの間にか、リーザが巨大な『食虫植物風のブロッコリー』に頭から丸呑みされ、腰から下だけをジタバタとさせていた。
「みんなー! 見て見て、うちの庭が完全にダンジョン化しちゃったよー!」
キュララは安全なベランダからスマホを構え、ドローンを飛ばしてこの地獄絵図を呑気に生配信している。
『草www』『スローライフ(物理)』『マモル先生の三節棍エグくて好き』といったコメントが、画面を滝のように流れていた。
……どうやら俺の望む平和なスローライフは、まだまだ遥か彼方にあるらしい。
お読みいただきありがとうございます!
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