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EP 9

塩ぶっかけ浄化! 完全なる塩対応の発動

「さぁ、口を開けろ。たっぷり……塩揉み(浄化)してやるからよ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 アルニア領・王立特別病院のVIP病棟。

 マモルが容赦なく振りかぶった5キロの特大粗塩が、純白の吹雪となってオロチとリーザの頭上から降り注いだ。

 バサァァァァァァッ!!!

「ぎゃあぁぁぁっ! 目がぁ! ワシの蛇目に塩がぁぁっ!!」

「ひぃぃぃっ! エラに、私のエラに粗塩が染み込みますのぉぉっ!!」

 ベッドの上で悶え苦しむ成金と人魚。

 その瞬間、二人の全身を包み込んでいた『ずっ友ロコシ』の呪い――ピンク色のドス黒い癒着オーラが、ガラスが砕け散るような高い音を立ててパリンッ!と弾け飛んだ。

「よし、除霊(コンプラ違反解除)完了だ」

 マモルが空になった塩の袋を放り投げ、パンパンと手を払う。

 病室には、大量の塩まみれになった二人が、ぜぇぜぇと肩で息をしながら倒れ伏していた。

「……う、うぅ……」

「……あ、あれ? ワシは、一体何を……」

 オロチが顔についた塩を払い落とし、ゆっくりと身を起こす。

 リーザもまた、ジャージに入り込んだ塩を払いながら、ぼんやりとした目で隣のオロチを見た。

「……」

「……」

 数秒の沈黙。

 つい先ほどまで「オロチおじ様♡」「ワシのずっ友や!」と熱烈な愛人契約(?)を結んでいた二人の間に、突如としてシベリアの永久凍土のような冷たい風が吹き抜けた。

「……あ?」

 先に口を開いたのは、オロチだった。

 彼はリーザの頭から足先までを、まるで道端の汚物を眺めるような目で見下ろした。

「誰やねんお前。なんでワシのVIPベッドに、魚臭い芋ジャージの小娘が乗っとるんや。シーツに鱗が落ちるやろがい。……あーキツ。貧乏人の匂いがするわ。さっさと帰れや」

「は……?」

 氷点下の罵倒。

 しかし、言われたリーザの反応もまた、先ほどの「純真で強欲なアイドル」からはかけ離れていた。

 彼女はまるでゴミムシを見るような、絶対零度の冷たい視線でオロチを鼻で笑った。

「……は? なに寝言ほざいてますの? そもそも、なんでパチンコ屋の成金崩れみたいな脂ギッシュなオッサンが、私みたいな美少女に気安く話しかけてますの? 加齢臭と安っぽい葉巻の匂いで吐き気がしますわ。近寄らないでくれます?」

 完全なる『塩対応』。

 粗塩による強力な浄化の反動で、二人の関係値は「ずっ友(MAX)」から「嫌悪(絶対零度)」へと強制反転してしまったのだ。

「なんやとコラ! ワシを誰やと思っとるんや! ゴルド商会の……!」

「はいはい、不正と裏金でしかイキれない可哀想なお爺ちゃんは、大人しく当局の捜査でも受けていればいいんですの。……あーあ、時間が無駄になりましたわ。パンの耳の特売に遅れちゃいますの」

 リーザはシッシッと手を振り、オロチに背を向けてベッドから降りようとする。

「す、すげえ……」

 入り口で見ていたキャルルが、ドン引きしながら呟いた。

「あんなにズブズブだったのに、一瞬にして見ず知らずの他人以下の対応になってる……」

「ふふっ。これが『ずっ友ロコシ』を塩で浄化した時の副作用、強制・塩対応化ですわ。素晴らしい冷え込み具合ですわね」

 ルナが満足げに頷く横で、マモルは首の骨をボキボキと鳴らしながら、リーザの芋ジャージの襟首をガシッと掴んだ。

「ひゃんっ!?」

「どこに行くつもりだ、リーザ。お前のパンの耳の特売なんか知らねえよ」

「マ、マモル先生……? 離してくださいの。私、こんなおじさんとのスキャンダルなんて身に覚えが……」

「うるせえ。塩対応になって癒着が切れたからって、お前が『ポロロロン♪』を乗っ取って大炎上させた事実は消えねえんだよ」

 マモルは悪魔のような笑みを浮かべ、震えるリーザの耳元で囁いた。

「さぁ、シェアハウスに帰るぞ。お前にはこれから、炎上タレントの最終工程……『涙の謝罪生配信(スーパーチャット全解放)』で、この尻拭いをしてもらうからな」

「えっ……? す、スパチャ……!?」

 塩対応で冷え切っていたリーザの目に、一瞬だけ『強欲カネ』の光が戻った。

「キャルル、そっちのオッサンの身柄は、アルニア領の警察(当局)に突き出しておけ。ルナ、お前はシェアハウスに戻って配信の準備だ」

「了解よっ! 顎砕きで大人しくさせて連行するわ!」

「ええ、任せてくださいな」

 かくして、アルニア領を揺るがせた大放送事故の主犯格たちは、最強のプロデューサーの手によって、それぞれの「残酷な末路」へと連行されていくのだった。

お読みいただきありがとうございます!


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