EP 7
突撃取材(後編)! 秘書のせいと当局の影
「ふふーん! 事実無根で押し通すつもりだね? じゃあ、もっと強烈な証拠を出してあげるよ!」
破壊された黄金の豪邸のリビング。天使族のT-チューバー・キュララが、容赦なく『エンジェルすまーとふぉん』の画面をフリックした。空中に浮かび上がったのは、オロチとリーザがテレビ局の裏口で仲良く『ずっ友ロコシ』を半分こして、お互いにあーん、と食べさせ合っている決定的な隠し撮り写真だ。
「この親密極まりない様子! これでも癒着を否定するのかなー!?」
キュララの鋭い追及に、アルニア領全土の視聴者がネット上で「これは言い逃れできない」「完全に黒」と大盛り上がりを見せる。
追い詰められたオロチの顔が、呪いの電撃によって引きつった。額から滝のような冷や汗を流しながら、彼はハンカチで顔を拭い、なおも国会答弁のようなトーンで声を張り上げた。
「……確かに、その写真にある通り、その方と面識はございますが、あくまで一般的な付き合いであり、深い関係ではございません!」
「きゅら!? 一般的な付き合いでトウモロコシあーんってする!? 無理がありすぎるでしょ!」
すかさずキュララが突っ込む。チャット欄はすでに『一般的な付き合い(笑)』『新しいパワーワード出た』と大荒れだ。
すると今度は、後ろに控えていた芋ジャージ姿のリーザが、ガタガタと震えながら一歩前に出た。その目は泳ぎきっており、ポケットから覗く高級メロンが激しく揺れている。
「そ、そうですの! 私は、私は一切悪くありませんの……ッ! 事務所に確認させたところ、事務的なミスが判明いたしました!」
「はぁ!?」
「すべての手続きは、私の秘書……いいえ、シェアハウスの同居人が勝手にやったことであり、私は一切、報告を受けておりませんでした! すべては管理不足によるものであります!」
「人のせいにするなァァァッ!!」
シェアハウスのテレビ前で、俺はついに立ち上がって画面に叫んだ。
「おいリーザ!! どこの世界に、パンの耳食ってるアイドルに専属の秘書がいるんだよ! 事務的なミスってなんだ! しかも同居人のせいって、遠回しに俺やキャルルに擦り付けようとしてんじゃねえか!!」
「あら、リーザさん、追い詰められて見事な責任転嫁(トカゲの尻尾切り)ですわね。政治家としての素質がありますわ」
ルナが感心したようにスムージーを飲んでいるが、画面の中のキュララはすでに勝利を確信していた。
「あはは! 秘書のせいにするなんて、往生際が悪すぎるよーっ! さあオロチ会長、裏金工作の主犯として、アルニア領の司法当局に突き落とされちゃう気分はどう?」
キュララが最後のトドメを刺そうと、カメラをオロチの鼻先に突きつけた。
その瞬間、オロチとリーザの頭上に、これまでにない巨大な呪いのイカズチが落ちた(幻覚)。
二人は同時に、まるで取り憑かれたかのようにロボットのような動きでカメラを凝視し、声を揃えて絶叫した。
「「現在、当局が捜査中(調査中)の案件でありますので、私からのコメントは一・切・差・し・控・え・さ・せ・て・い・た・だ・き・ま・す!!!」」
「あ、逃げた!」
キュララが声を上げた瞬間。
――バタッ!!!
オロチとリーザは、示し合わせたかのように同時に白目を剥き、豪華な絨毯の上へとぶ倒れた。ピクリとも動かない。
「え、ええーっ!? ちょっと、二人とも!? 死んだふり!? 配信のネタとしては最高だけど、警察呼ぶよ!?」
キュララが慌てて近寄るが、二人の『謎の体調不良』は本物(呪いによる強制イベント)だった。
すぐさま、どこからともなく手配されていた謎の救急隊員たちがリビングに雪崩れ込み、手際よく二人を車椅子に乗せていく。
「オロチ会長、およびリーザ氏が突然の激しい体調不良を訴えたため、これ以上の取材は不可能です! 王立特別病院のVIP病棟へ緊急搬送します! マスコミはシャットアウトだ!!」
バタン! と豪邸のドアが閉まり、生配信は強制的に終了した。
見事なまでの『強制入院』。
静まり返ったシェアハウスのリビングで、俺は静かに立ち上がり、キッチンの棚を開けた。
「マモル様? 何をなさるの?」
ルナが不思議そうに首を傾げる。
俺は棚の奥から、業務用の『特大サイズの粗塩(5キログラム)』を取り出し、ドサッとテーブルに置いた。そして、愛用の赤ペンを耳に挟む。
「……あいつら、病院のベッドの上で『これで逃げ切れた』とか思ってやがるな。俺の許可なく勝手に炎上して、勝手に病院に逃げ込むなんて、プロデューサー(管理人)として許せるわけねえだろ」
俺の目が、怒りで静かに据わっていく。
「ルナ、キャルル。ちょっと病院に行って、あの『ずっ友(癒着)』を物理的に引き剥がしてくる。お前らもついてきな。たっぷり……塩揉みしてやるからよ」
逃げ切ったと確信している汚職コンビの元へ、最悪の『塩対応(物理)』を持った男が動き出そうとしていた。
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