EP 6
突撃取材(前編)! 呪いの言い訳フェーズ発動
「さぁ、観念しなよオロチ会長、そしてリーザちゃん! 怒れるお茶の間の前で、真実のお時間だよーっ!!」
破壊された純金製の門扉。もうもうと立ち込める土煙の中、天使のT-チューバー・キュララがスマホのカメラを突きつける。
画面の端には『同接:250万人』という、アルニア領の人口の半数が視聴している異常な数字が表示されていた。
「き、ききき貴様ァ! ワシの屋敷に押し入って勝手に配信などと……営業妨害やぞ! いますぐそのカメラを止め……ッ!?」
オロチが青筋を立てて怒鳴り散らそうとした、その瞬間だった。
彼の脳内に、ピシャァァン! と謎の電撃が走る。
ルナが持ち込んだ禁断の魔植物『ずっ友ロコシ』。
その恐るべき副作用――『不正な癒着が第三者にバレて追及された場合、強制的に政治家の逃げ口上を詠唱させられる呪い』が、ついに発動したのだ。
「……ッ、ワシは、ワシは……ッ!!」
オロチの口が、自分の意志とは無関係に、勝手にパクパクと動き始める。
ヤクザ顔負けのダミ声が、突如として国会答弁に立つベテラン議員のような、妙に落ち着き払ったトーンへと変化した。
「アルニアTVへの裏金工作および、番組の不当な乗っ取りにつきましては……身に覚えがございません。記憶にございません。」
「きゅら!?」
あまりにも堂々とした、テンプレすぎるシラ切り。
キュララは目を丸くしたが、すぐさまニヤリと笑って反撃に出た。
「いやいやオロチ会長! 記憶にないって言っても、特定班が抜いた『ゴルド商会からアルニアTVのプロデューサーへの裏金送金履歴』がバッチリ残ってるんだけど! はい、これ証拠のホログラム画像ドーン!!」
空中に、決定的な証拠となる送金記録が映し出される。
チャット欄は『出たww記憶にございませんww』『テンプレすぎるだろww』『言い逃れ不可避!!』と、弾幕のような速度で流れていく。
「な、なんやその画像は! ワシの極秘裏帳簿やないか!? なんでそんなモンが……ッ!!」
「ちょっとキュララさん! 勝手にオロチおじ様を悪者にするのはやめてくださいですの!!」
オロチのピンチに、ずっ友であるリーザが芋ジャージ姿で颯爽と前に出た。
彼女のポケットからは、先ほどまで食べていた高級メロンが半分はみ出している。
「私とオロチおじ様は、純粋に夢を追いかける最高のパートナー(ずっ友)なんですの! 癒着だなんて言いがかりは……ッ!?」
リーザもまた、反論しようとした瞬間に呪いの電撃を受けた。
彼女は突如として背筋をピンと伸ばし、記者会見のフラッシュを浴びる政治家のような厳粛な表情を作ると、カメラに向かって高らかに宣言した。
「わたくしとゴルド商会との不適切な金銭授受および癒着疑惑については……事実無根であります!!」
「お前もかよっ!!」
シェアハウスのテレビでその生配信を見ていた俺は、思わず画面に向かって全力でツッコミを入れていた。
「おい、あの二人完全に呪いに操られてんぞ! 柄シャツのオッサンと芋ジャージの小娘が、国会答弁みたいな言葉使いしてんの、シュールすぎて腹痛ぇ!」
「ふふっ。素晴らしい効き目ですわね。世界樹の呪い、恐るべしですわ」
ルナが優雅に拍手をしているが、事態は完全に火に油を注いでいた。
『事実無根いただきましたー!』
『証拠突きつけられてるのに事実無根は草』
『この芋ジャージ、ポケットにメロン隠し持ったまま事実無根とか言ってて腹よじれるww』
配信の熱狂はさらに加速し、同接数はついに300万人の大台を突破した。
「ふふーん! 事実無根で押し通すつもりだね? じゃあ、もっと強烈な証拠を出してあげるよ!」
キュララは天使の輪をピカピカと光らせながら、次なる追及の矢を放つ。
「特定班が、テレビ局の裏口でオロチ会長とリーザちゃんが『美味しそうにトウモロコシを半分こしている隠し撮り写真』まで手に入れてるんだよねー! これが親密な癒着の証拠じゃなくてなんなのさ!!」
決定的な証拠(ずっ友の儀式の瞬間)を突きつけられ、顔面蒼白になるオロチとリーザ。
逃げ場を失った二人の口から、いよいよ「あの究極の責任転嫁コンボ」が飛び出そうとしていた。




