表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
166/244

EP 16

雷帝神ユイ、愛の乱入

 冥界の淀んだ空気を一掃する、圧倒的な青白い閃光。

 ラビークの眼前に降り立ったのは、神々しい雷光を纏った一人の少女だった。背負った光の輪がパチパチと紫電を散らし、彼女の足元の大地がプラズマ化して融解していく。

『な、なぜだ……!?』

 死の概念を体現する巨大な閻魔が、初めてその鉄面皮を崩し、驚愕に声を震わせた。

『なぜ、天界を統べる帝釈天の系譜――雷帝神が、生者のために地獄へ干渉する! これは天地の不可侵条約を破り、世界のシステムを根底から破壊する大罪であるぞ!』

「大罪? システム?」

 雷帝神ユイは、黄金色の瞳で冷たく閻魔を見上げた。

「そんなもの、僕の知ったことじゃない。僕が神様になったのは、ただ一人……たつまろを守るためだ。彼を泣かせるシステムなんて、この宇宙に必要ない!」

「……ユ、イ……」

 ラビークのコックピットの中で、血まみれの龍魔呂が呻いた。

 薄れゆく意識の中、モニター越しに映る少女の後ろ姿に、10年前の記憶がフラッシュバックする。

 自分を救うため、炎の中に身を投げ打った、あの日のままの幼い背中。

「やめ、ろ……。お前が干渉すれば……お前まで、神の座から堕ちて……ッ!」

「たつまろ」

 ユイが振り返り、ひどく優しく、愛おしそうに微笑んだ。

「君は、優しすぎるよ。ずっと一人で、僕の分まで、ユウの分まで苦しんできたんでしょう? ……もういいんだよ。君が泣きながら背負ってきたものは、全部、僕が一緒に壊してあげる」

『神の身でありながら、世界の理に背くか! ならば、貴様ごとこの賽の河原の塵に帰してくれよう!!』

 閻魔が激昂し、地獄の空を覆うほどの巨大なしゃくを振り上げた。

 先ほどラビークの装甲を透過し、龍魔呂を死の淵まで追いやった『死の概念』の塊。それが、ユイとラビークをまとめて消し去るべく、無慈悲に振り下ろされる。

「ガジェット!! ラビークの全システム・リミッターを解除して!!」

 ユイが天に向かって叫んだ。

『ヒャッハー! 待ってたぜ女神サマ!! とっくに限界突破オーバーロードの準備はできてるぜ!!』

 次元の向こう側からガジェットが叫び、ラビークのシステムから全ての安全装置がパージされる。

「たつまろ! 僕のすべて、君にあげる!!」

 ユイの身体が、何百万ボルトという青白い雷光の粒子へと変換された。

 それはただの魔法やエネルギーではない。神としての『権能』そのもの。システム(ルール)を書き換えるための、絶対的な特権パスワードだ。

 シュバァァァァァァッ!!

 ユイの光の粒子が、真紅に染まったラビークの胸部装甲をすり抜け、コックピットの龍魔呂へと、そして機体のコアへと一気に流れ込んだ。

 龍魔呂の身体を蝕んでいた『死の概念』のダメージが、神の力によって瞬時に回復・上書きされていく。

 【システム同調リンク――神格拡張ゴッド・オーバードライブ

 ズガァァァァァァァンッ!!!!!

 振り下ろされた閻魔の笏が、ラビークに直撃する――そのコンマ一秒前。

 ラビークの機体から爆発的に噴出した『赤黒い闘気』と『青白い雷光』が交じり合い、螺旋を描く巨大なエネルギーの竜巻となって、笏の「死の概念」を真っ向から弾き返した。

『な、何ィィィッ!?』

 閻魔の巨体が、己の力が反発した衝撃で大きく体勢を崩す。

「……ユイ。お前って奴は……本当に、昔から無茶ばかりしやがる」

 光の竜巻が晴れた後。

 コックピットで立ち上がった龍魔呂の瞳には、かつてないほどの静かで、しかし途方もない力が宿っていた。

 彼の左手に嵌められた『鬼王の指輪』が、ユイの神気と完全に融合し、脈動している。

 そして彼と同調するラビークもまた、究極の進化を遂げていた。

 真紅のヒイロガネ装甲の隙間から、青白いプラズマの雷光が漏れ出している。

 背部には、雷神の太鼓を模した光の輪が展開。

 純粋な『殺意(闘気)』と、純粋な『愛(神気)』。本来なら絶対に交わらない相反する二つの力が、龍魔呂とユイの絆によって完璧なハイブリッドを成していた。

『バ、バカな……! 死のルールで構成されたこの冥界において、物理法則を、因果をねじ伏せるだと!?』

 閻魔が、初めて己のシステムが通用しない存在を前に、狼狽の声を上げた。

「ああ、そうだ。お前たちのルールは、ここで終わる」

 龍魔呂は、操縦桿センサーを通して、ラビークの背部に格納された「最後にして最強の武装」のロックを解除した。

 ガシャァァン……!!

 真紅と蒼雷の機神が、背中から『超巨大な大剣』を引き抜く。

 ガジェットがこの瞬間のために用意した、狂気の近接兵器。

 ――『無量大数獄炎刀むりょうたいすう ごくえんとう』。

 刀身から噴出するプラズマ獄炎に、龍魔呂の赤黒い闘気と、ユイの青白い雷光が絡みつく。

 それはもはや剣ではない。空間そのものを焼き斬る、概念破壊の刃だ。

「行くぞ、ユイ。……俺たちの、本当の戦いだ!」

『うんっ! たつまろ!!』

 コックピット内に響くユイの声と共に、龍魔呂はラビークを前傾姿勢に沈め込んだ。

 システムの体現者である閻魔と、神の権能を簒奪した鬼神。

 理不尽な死の世界をぶち壊すための、最後の一撃が放たれようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ