表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
164/244

EP 14

狂気の天才からのデリバリー

 赤黒い闘気を全身から立ち昇らせる龍魔呂に向け、数十匹の地獄の鬼たちが巨大な金棒を振りかざして殺到してくる。

「ギャハハハッ! 生きたままその皮を剥いでやるよォ!」

「泣き叫べ! 絶望しろォ!」

 下劣な嘲笑が飛び交う中、龍魔呂は右手の『Korth (NXS)』を構え――しかし、引き金を引かなかった。

 彼の見据える先は、目の前の雑魚どもではない。そのさらに奥、果てしなく広がる賽の河原と、そこに湧き続ける無数の鬼の大群だ。

 拳銃一つで相手をするには、圧倒的に数が多すぎる。

 だが、龍魔呂の顔に焦りはない。

 彼は通信インカムのスイッチに触れ、低く呼びかけた。

「……ガジェット。特注の『オモチャ』はできているか」

『――ヒィィィーッハァァァァァッ!!』

 次の瞬間。

 地獄の淀んだ空(次元の天井)に、耳障りな電子ノイズと共に巨大なホログラム映像が投影された。

 ハンバーガーを咥え、狂ったように笑う白人の巨漢、マッドサイエンティスト・ガジェットだ。

『待ってたぜブラザー! ミザリー(嫁)の目を盗んで、お前のために最高の「兎」を仕上げたぜ! 死の国のシステムだろうがなんだろうが、俺の科学力で全部スクラップにしてやらァ!』

 ズギャァァァァァァンッ!!

 地獄の空が、文字通り「ガラスのように」粉々に砕け散った。

 次元の壁を強引に突破し、超高空から巨大な鋼鉄のコンテナが音速で落下してくる。

「な、なんだァ!?」

「空が、割れた……!?」

 鬼たちが足を止め、間抜けな顔で空を見上げる。

 ズドォォォォォォンッ!!!

 龍魔呂と鬼たちの間に、巨大なコンテナが隕石のように突き刺さった。衝撃波だけで前衛の鬼たちが吹き飛ばされる。

 プシュゥゥゥ……ガコンッ!

 大量の冷却ガスを噴き出しながら、コンテナの装甲板が四方に展開する。

 その中から姿を現したのは、神々しいまでの純白の装甲に身を包んだ、全高7メートルほどの巨体。

 ウサギを模した長いアンテナ状の頭部センサーと、宇宙論的密度を持つ特殊合金『ヒイロガネ』で構築された絶対的なシルエット。

 ――人型機神『ラビーク』。

 内蔵火器を一切持たず、搭乗者の「武術」のみを機体挙動に直結させる、狂気の超接近戦特化型機体である。

『さあ、乗り込みな! その兎に、たっぷり「ニンジン(血)」を食わせてやれ!』

 龍魔呂は小さく息を吐くと、跳躍してラビークの開かれたコックピットへと滑り込んだ。

 シートに座り、操縦桿ではなく、自身の両腕・両脚にセンサーデバイスを接続する。

 モビルトレースシステム(完全同調操縦機構)が起動。

『機体リンク率、100%。……鬼王の指輪、リミッター解除』

 ガキンッ!

 ラビークの双眸が、血のような真紅に発光した。

 同時に、龍魔呂の左手から溢れ出た『赤黒い闘気』が、ヒイロガネの装甲を通じて機体全体へと流れ込む。

 純白だった機体が、まるで血管が浮き出るように、禍々しい真紅のラインで染め上げられていく。

「な、なんだあの鉄の塊は……!」

「かまわねェ! 叩き潰せ!!」

 鬼たちが恐怖を振り払うように、一斉にラビークへと躍りかかる。

 コックピットの中。

 龍魔呂は無表情のまま、スッ……と右手を前に突き出した。

 外のラビークが、全く同じ動きで巨大な右腕を突き出す。

 ガガガガッ! と装甲がスライドし、右腕部に内蔵……いや、外部から直接マウントされた特大の火器が展開した。

 本来、護衛艦の主砲として使われる口径の砲身を束ねた、頭のおかしい面制圧兵器。

 ――『127mmガトリング砲』。

「……掃除の時間だ」

 龍魔呂が、静かに宣告した。

 ギュィィィィィィ……ズガガガガガガガガガガガガガッ!!!!

 地獄の底で、護衛艦クラスの主砲が「毎分数千発」の速度で連射されるという、物理法則を無視した悪夢が顕現した。

 しかも、その一発一発の弾丸には、龍魔呂の『赤黒い闘気』が極限まで圧縮されて纏い付いている。

「ギャァァァァァァッ!?」

 金棒を振り上げていた鬼たちの上半身が、文字通り「ミキサーにかけられたトマト」のように粉砕され、赤い霧となって消滅していく。

 悲鳴を上げる間もない。

 逃げることも、防御することも不可能。

 127mmの闘気弾幕は、鬼の肉体はおろか、地獄の赤茶けた大地そのものを数メートル単位で削り取り、地形を完全に書き換えていく。

「ひぃっ! ば、バケモノォォッ!」

「逃げろ! 逃げ――ギャベェッ!」

 パニックに陥り逃げ惑う鬼たちを、ラビークの真紅のセンサーが冷酷に捉え、ガトリングの砲火が正確に追いすがる。

 圧倒的。あまりにも一方的な蹂躙。

 子供たちを痛めつけていた無慈悲なシステム(鬼)どもが、さらに理不尽で無慈悲な『科学と武術の暴力』の前に、ゴミのように掃討されていく。

「すげぇ火力だ……。これなら俺の出番はなさそうだな」

 後方で、子供たちを瓦礫の陰に庇いながら、マモルが口笛を吹いた。

 震えていた子供たちも、自分たちをいじめていた恐ろしい鬼が、謎の白い(赤い)巨人に次々と倒されていく光景を、ポカンと口を開けて見つめている。

 数分後。

 ガトリングの砲身が焼き切れんばかりに赤熱し、回転が停止した。

 あたりには、濛々たる硝煙と、完全にミンチとなって消滅した鬼たちの残骸、そして抉り取られた巨大なクレーターだけが残されていた。

 純白だったラビークの装甲は、敵の返り血(生体組織)を浴び続け、禍々しい【真紅の鬼神】へとその姿を変貌させている。

「……雑草の刈り取りは終わった」

 龍魔呂がコックピットの中で息を吐いた、その時だった。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォ……ッ!!!

 賽の河原の大地が、激しい地震のように揺れ始めた。

 三途の川の水が真っ二つに割れ、地獄の底から、山のように巨大な『漆黒の影』がゆっくりとせり上がってくる。

『……生者の身でありながら冥府の扉をこじ開け、我が獄卒どもを塵芥ちりあくたに変えた大罪人よ』

 世界の空間そのものを震わせる、重く、絶対的な圧力を持った声。

 それは、死のシステムを統括し、理不尽なルールを司る冥界の王。

 ――『閻魔えんま』が、その巨大な姿を現した瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ