57閑話 主人との出会い(アルセン視点)後編①
一部暴力的な表現が含まれます。苦手な方は閲覧を注意してください。
その後のことは、母が亡くなったショックで漠然としか覚えていない。頭がずっとぼんやりし、夢なのか現実なのか区別できないほど虚な状態に陥った。
しかし、そんな状況でもあの方や奥方さまへは報告をしなければと思い、使いを送った後に本邸の屋敷に向かった。
‥‥
「失礼いたします。」
「‥久しいな。何用か?」
「先程、使いを送りましたが、母が亡くなりました。」
「‥‥‥‥そうか。……君は、亡くなったのか。」
あの方は、何やらうつろな表情でそう一言空中を見て呟いた。
奥方さまは、しばらく黙り込んでいたが無言の状態に痺れを切らしたらしく声を張り上げた。
「‥‥して、報告は以上か?ならば、もう帰るが良い。あのめざとい醜女が亡くなったからと言って私には関係ない。」
「‥それが、亡くなった原因は毒殺のようです。まだ毒の成分は、解析できていませんので、わかり次第後ほどご報告致します。」
「報告?そんなものいらん。にしても毒殺?‥‥愉快じゃな。あのめざとい女の末路としては、お似合いだわ。人のものに手を出したものの末路じゃな。」
そう奥方さまが、満面の笑みで狐のように嘲笑いながら言う様子が私には忌々しく感じられた。知らぬ間に顔に怒りが出てしまっていたようで、奥方様には怪訝そうな表情をされた。
その後奥方様は私に近づき、思いっきり頬をぶった。最初何が起こったのか、わからなかったが徐々に打たれた方の頬が熱を帯びるのを感じた。
「何じゃ、その目は?お前は、自分の立場がわかっていないのか? 」
「申し訳ございません。失礼いたしました。」
「申し訳なさそうな顔ではないじゃろう。」
奥方様は再び私の頬を思いっきりぶった。
思わず、よろけて転んでしまったが、ぶたれた頬よりもその時の私は怒りで頭が一色だった。
その後も奥方様による暴力が続き、部屋にはその残虐な音だけ響いていた。
「……もうよいだろう。…お前は帰れ。」
そうあのお方が何を考えているか分からない虚ろな表情で呟いた。
ところが、奥方様はどうやらやめる気はないようだった。
「まだ、仕置が終わっておらん。お前は残って私の気が済むまでぶたれておれば良い。」
私は、どうすれば良いかわからず黙って地面を見つめていた。
「…私は帰れと言うておる。」
あのお方の低くてしんの籠った声にさすがの奥方様もびっくりしたのか、私をぶつ手を止めた。
「…運が良かったのお。この程度ですんで。ホントならば、あと3時間は地獄を見てもらいたいところだが見逃してやろう。」
「‥承知致しました。失礼致します。」
そう言いのこし、すぐさま本邸を後にした。
…
母の葬式は私だけでひっそりと執り行い、誰1人として母の追悼に訪れるものはいなかった。私は、あの日母にあげるはずだったプレゼントを一緒にお供えした。
葬式の後は、しばらくの間毒殺に使われた薬品の解明をいそいだ。しかし、めぼしい名前の薬品は使われておらず、結局なんの毒を盛られたのか分からずじまいだった。
また、私は母がなくなってからは、来る日もくる日も悪夢にうなされるようになった。目が覚めると、悪夢の内容は覚えておらず、ただほろりと涙が溢れてくるのだ。
私は母に楽をさせてあげたい一心で昼夜問わず、働いた。しかし、それは間違いだったのだ。辛い時こそ、母との時間を大事にし、思い出を作っていくべきだった。
母に、謝らせるために私は仕事をしていたわけではない。母が笑顔に、健やかに過ごしてほしい、昔みたいに貧しくも幸せな時間を過ごしたい、その一心で取り組んできたのだ。
結局、私がしてきたことは何の意味もなかった。私だけが幸せになっても何の意味もない。
そう思うほど、母の死は、私の心の奥底までぐっさりと刺さり、それまで取り組んできたこと全てがどうでもよくなった。
次第に、生活も前より荒れ始めた。この頃の私は全てがどうでも良くなっていたのだ。そのため、現実を逃避するために貧民街に赴き、喧嘩をするようになった。
同年代の子供に比べて肉付きが良くなく、背も低かったため、ボコボコにやられた。
毎日、殴られ、蹴られはしたが全てがどうでも良かった。それらは、全て母への贖罪に過ぎなかったからだ。
そんな当時の荒れていた時期に私の運命を変える出来事が起こった。それがエマ様との出会いである。
更新遅くなりすみません。
中途半端なところですが、想定より、長くなってしまったためここで切らせていただきます。次で閑話が完結します。
楽しみにお待ちください!!




