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58 閑話 主人との出会い(アルセン視点)後半②

ある日の晩、いつものように喧嘩に挑み、殴られ蹴られていた。その日は憎たらしいほど、美しい月夜だった。


痛みには慣れてはいたが、その日は人数が多かったこともあり、さすがに気を失いそうだった。視界がぐらつき、ふと天を仰いだ。


すると虚ろな視界の中で屋根の上から足をぶらぶらさせ面白そうに笑顔を浮かべながら座る少女が見えた。


「ねぇ、君はなんでわざわざこんなクズに殴られているの?」


少女はふわりと笑顔をうかべまるで不思議なものでも見るように問いかけた。


「あぁ?なんだあの女?今、俺たちのことクズって言ったのか?」


「クズは今、俺たちに殴られてるこいつだろ。気持ち悪い目の色しやがって薄気味悪いんだよ!」


そう言いながら、脇腹に蹴りを入れられた。

「ウッ…。ゲホッ…、ゲホッ。」


少女は、相も変わらずにっこりとした笑顔のまま、

「クズ共には聞いてないわよ。僕に話しかけないで。」


と、おそらく彼女より上の年齢であろう野郎どもを一蹴した。


「おい、このアマ!誰に向かって口聞いてんだ?俺たちはな、…」

ボスらしき男の声を遮り、その少女は凛とした口調で私に再度質問をなげかけた。


「ねぇ、僕は君に聞いてるんだよ。なんで、こんなクズ共にわざわざ殴られてるの?」


「…うるせぇ…ほっとけよ。」


少女は少しムッとした表情をした。

「へぇー、チビのくせに口先だけは立派なのね。」


「…チビって言うな!」


「あら、実際チビじゃない?僕と身長変わらないでしょ。それにこんな、クズどもにも勝てないヘタレね。あなたは、弱いことに安心しきったただの弱者よ。」


「……。」

私は、何も言い返すことが出来なかった。今まで、母への贖罪だと御託を並べ喧嘩をしてきたが、結局は弱いことにどこか安心している節があったのかもしれないと感じたからだ。


「おい、てめぇ。また俺たちをバカにしやがって。」


「降りて来やがれ!女だからって俺たちが容赦すると思ったら大間違いだぞ。」


「嫌よ。それに、クズは相手にしない主義なのよ。」


「おい、女!ふざけんじゃねえぞ!」


「ピーチクパーチクうるさいわね。ねぇ、君、君はやられっぱなしでいいの?こんなクズみたいな連中と一緒にいても強くは慣れないよ」


「………ネェヨ」


「今、なんか言った?言いたいことがあるなら大きな声で言いなさい!」


「良くねえよ!強くなりたい!」

そう、私が心の底でずっと感じていたいた事を初めて大声で口に出した。すると、なぜだか胸の奥がすっと軽くなった気がした。


少女は、私の言葉を聞いてニヤリと微笑んだ。


「いいわ!私からのプレゼントよ!」


そう言い、少女はパチンと指を鳴らした。すると、私の視界は一瞬何も見えない暗闇に包まれた。まるでなにかに体全体を覆われているような感覚だった。


数十秒後には徐々に視界が開けたが、先程から何かが体全体を覆っていた。


「…こ、これは、…」


「ふーん。どうやら成功したみたいね。今あなたの周りをおおっているのは魔力よ。無理やり起こしたから早くしないと魔力切れになるわよ。」


「お、おい、魔力だと!!どうやって使うんだよ!」


「そんなの感覚よ!!さぁ、あとは頑張りなさい!!」


なんて無茶苦茶なんだ。それに、先程から今まで感じたこともないような力が体全体が溢れているのを感じた。


「おい、魔力だかなんだか知らねぇが俺たち抜きで話進めてんじゃねえよ。野郎ども、あいつをもう一度叩き潰せ。」


そうボスらしき男が言った後、一斉にこちらに向かってきた。


しかし、先程とは違い私は全く怖さを感じなかった。なぜだか、魔法の使い方を本能的に理解していたからだ。


気がつけば、私の周りには先程まで殴り蹴られていた男たちが地面に転がっていた。


「こ、これは、一体?…」


これまでの始終を見ていたであろう少女の方に顔を向けると目をキラキラさせてこちらを眺めていた。


「…よし、決めた!君!今日から私の従者ね!」


「……従者?おい、それは一体どういう…こと………」


その言葉を言い終わる前に私は誰かに強く揺さぶられた。


……


「アル!ちょっと起きなさいよ!」


「…」


「アル!起きて!ねぇねぇ」


突如、体を強く揺さぶられたことで私は目覚めた。


「…エマ…、様、今何時だと思っていやがるんですか?」


「ねぇ、アル!次のリーンの訓練は洞窟を吹き飛ばすなんてどうかな?」


「……。いいんじゃないですか?」


「今の適当だわ!ちゃんと考えてよね!!」


最近のエマ様は、このとおりアスガルド嬢のことで頭がいっぱいのご様子である。


先程の懐かしい光景はどうやら夢だったらしい。


百面相する主人を見ながら、今も昔も変わらないなと改めて感じた。


けれども、あの日の出会いで私が救われたことは確かだ。私の残りの人生は、エマ様のために費やすとあの時決めた。


だから、今はかわいい主人が暴走しないようコントロールしていこう。


「エマ様、それはまだ段階が高すぎます。」


「ええー、そうかな?」


何やら不服そうなエマ様をなだめた。その日の夜はとても美しく月が輝いていた。

次回からは、本編に戻ります!!

次はお茶会編です!

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