55闇魔法の訓練は大変でした⑦
あれから、数時間いや、実際はたった数十分かもしれないが、今もなお全力で魔物との鬼ごっこ中である。
普段から鍛えているが、こんな森林の中をかけるような訓練はしていないため、草木に足が取られて体力消費が激しい。しかも、このままだと埒が明かないし、どうしたものか。
「リーン!攻撃しないとずっと走り続けて大変なだけだよ。」
途中、エマの声が上の方から聞こえてきたので顔を上げた。なんと空中からレリスちゃんに跨りながらひょうひょうっと移動していた。その後ろをアルセンさんがこれまた木の杖に跨りながら追いかけている。アルセンさんの木の杖は、なんだか黒くてたくましい感じだ。
ていうか、エマとアルセンさん実は魔女だったのか!羨ましい、私も空をほうきで飛びたいわ!
って、そんなこと考えてる場合じゃなかった。
間一髪で魔物の攻撃を避けた。ひゃぁ、危ない!スレッスレだったよ、今の攻撃。
んー、氷魔法で壁を作ってちょっとずつ攻撃するのもありか。
そう考えた私は、イメージした氷壁を魔物が捕まりやすい位置を予測しぶつけることにした。
「!!!っ氷魔法の使い手?いや、そんなず………………なるほど、これは面白い。」
その頃後ろの方でリーンの様子を見ていたアルセンはにやりと微笑んだ。
やった!今の攻撃で何体か仕留めることができたわ!この調子で残りもやっつけてやる。
そう思っていると、上からエマのご立腹の声が聞こえた。
「ちょっと、リーン!闇魔法の訓練してるのに、氷魔法使ってどうするのよ!闇魔法使わなきゃ訓練にならないじゃない?」
「氷魔法を使っちゃダメなんて言われてないもん。」
「じゃあ、今から氷魔法を禁止するわ!闇魔法以外は使っちゃダメだからね!」
「わかったわよ!」
残念、氷魔法封じられちゃったか。まあ、元々闇魔法の訓練に来たんだし、当然といえば当然の話しね。
んー、じゃあどうしよう?闇魔法は、基本的に影を操る操作が多い。よって、くらいところの方が魔法効果をあげやすい。
なら暗いとこに行って一気に仕留めるのがベストね。ちょうど、練習したかったけど出来なかったあの魔法を試すのもありね。
そう考えた私は、とにかく森の深い方へ走った。段々と周りの草木が月の光さえも阻み、徐々に暗くなっていく。
そろそろいいかしら。そう思った私は、地面に向かって
「ダークホール」
と詠唱したあと、最大質力の闇魔法を放った。ダークホールは、突如地面に影の穴を開けるいわゆる落とし穴というやつである。
これによって、先程まで私を追いかけてきた魔物は一匹残らず闇の世界に落ちていった。ちなみに闇の世界に取り込まれたあとどうなるのかは、本にも詳しく書かれていなかったためよく知らない。
様子を伺っていたエマとアルセンは、リーンが魔物を捕獲するのを見て、ゆっくりと地面に降りてきた。
「いやはや、お見事だったよ!リーン!僕が思っていた以上に闇魔法も素晴らしかった。」
「いや、何とかなってよかったよ。もう、体力的にはボロボロだけどね。」
「これなら、もっと上級の魔物でも何とかなりそうだね!明日からの訓練も期待しといてね」
「へっ?いや、もう十分だよ!」
そう否定する私をよそに、アルセンはエマに深みのある笑みで話しかけた。
「そうですよ、エマ様。リーン様はまだ実力のそこを見せてないので上級レベルの魔物では相手になりませんよ。」
「…ふふ、それもそうね。それにまだ爆発するような威力の闇魔法は見せてもらってないしね。」
エマとアルセンさんの笑みを見てから私は、これから起こる未来を想像して嫌な汗が出てきた。
「え、いや、程々でお願いします。」
「大丈夫だよ!死ぬなんてことは、……多分半々ぐらいだから。なんとかなるよ!」
「え、それ何とかなってなくない?死んだら終わりなのでは?」
「あは、まあ大丈夫だよ!死ぬ気でやるほど、魔法の上達は早いんだから。」
「…え?」
「まあ、エマ様の言ってることは、間違いではないですよ。戦場では、よくある話ですが死線をくぐってきたものほど強くそして誰もたどり着けない領域に達するものです。要は、追い込まれた状況の方が人間実力を発揮しやすいってことです。」
「なるほど、確かに一理ありますね。」
「そうそう!それが言いたかったのよ!まあ、いざとなったら、僕とアルも手伝うから、そんなに心配しなくていいよ。」
「なら良かったわ。さすがに死は回避したいから。」
「あんまり、エマ様を信用しない方がいいですよ。この人半殺しぐらいじゃ人助けしないような冷酷な人なんですから。」
「ちょっと余計なこと言わないでよ、アル!そ、そんなことないからね、リーン。」
そういったエマは、何故かすごく焦った表情で弁明してきた。エマ、わかり易すぎ。まあ、要はガチ で死ぬ寸前ぐらいに行かないと助けて貰えないってことね。肝に銘じよう。
それから、明日以降の予定を聞いたあと今度はアルセンさんの瞬間魔法で私の部屋に戻ってきた。先程同様、一瞬で部屋に着いた。
「それでは、夜も遅いのでもう就寝なさった方がよろしいでしょう。私とエマ様はこれにて失礼致します。」
「バイバイ!リーン!また明日ねー!」
そう言って、2人はまた瞬間移動で去っていった。疲れが一気に押し寄せてきた私は、そのまま倒れ込むようにベットに横になった。そういえば、エマに面白いものを見せるの忘れてたわ。ふぁー、あくびがとまらない。とりあえず、明日考えよう。そう思った私は、すぐに深い眠りについた。




