44 不思議な少女に会いました②
少しの間気まずい沈黙が流れたが、私としては、もうすぐ木の下まで来るシン様にバレずにすむので好都合だった。
お願いだから、このまま気づかないでとおりすぎて欲しいなぁ。
「ねぇねぇ、リーンちゃん。なんでこの木のこんな高いところまで登ってきたの?」
と、いきなりツインテールの少女に話しかけられたので、私は咄嗟に口を塞いだ。
「モゴモゴ。」
「お願いだからもう少し、喋らないで。」
そう言うと、コクンとうなづいてくれたので手を離した。
「それでさ、なんでこの木まで……」
「いいから喋らないで。」
と、気づいたらかなり聞こえる声で喋ってしまった。言い訳になるけど、まさかうなづいてすぐに喋るとは思わなかったもの。
これは絶対に気づかれたなと思っていたが、シン様はまるで私たちが見えないかのように通り過ぎて行った。
「あれ、これどうなってるの?」
「だから、私が魔法で見えなくさせたんだよ。」
「えーーー!!!そんなことも闇魔法できるの?とても便利じゃない!」
と、私はさっきまでとは打って変わったテンションアゲアゲで聞いたためか、若干女の子に顔をしかめられた。
「あれ?なんか思ってたのとちょっと違うかも。」
「ちょっと失礼ですね。初対面で名前も名乗らずに人をちゃん付けで呼ぶあなたの方が失礼よ。」
お、これは結構私正論じゃない?
女の子も今気づきました、みたいな顔してるし、勝ったわね。
「ごめんね。忘れてたわ。私の名前は、エマよ。」
「あれ、ファミリーネームは?」
そう聞くと、ニッコリと微笑んで、人差し指を口に当てた。
「それはまだ秘密。」
秘密かー。なんか、秘密にされると逆に気になる気がする。
「えーと、私はアスガルド公爵家の」
「知ってるから大丈夫だよ。リーンちゃん」
そうなんだよね。私見た事ないのに、何でこの子私の事知ってるんだろう。一応、貴族の名前は全て覚えてるんだけどな。まあ、でもアスガルド公爵家は有名だから知っていってもなんの違和感も無いもんね。
それにそっか。貴族じゃないって言ってたものね。
だから、わからなかったのか。
「それでなんでリーンちゃんは、こんな高い木の上まで登ってたの?」
「えーと、逃げるため?」
「あー、さっきのアイツ、この国の宰相の息子シン・ラティフォーナだよね。」
「そうです。」
そんなこと聞いてどうするんだろう。不思議な子だなぁ。
なんてことを考えていたら、とんでもない取引をもちかけられた。
「ねぇ、リーンちゃん。僕、アイツがもう追いかけて来ないように追い払ってあげようか?」
「…え?」
「悪い話じゃないと思うよ。僕だったらそのくらいのこと簡単だしね。」
「いや、でもそんな美味しい話には裏があるに決まってるわ。」
そう言うと、やはり面白そうなものを見つけた顔をした。
「うん、よくわかってるね。僕が君に求めることそれは僕から魔法を習うことだよ。」
「…は?」
おっと、ついまた心の声が漏れてしまった。
闇魔法を習えるなら滅多にないありがたい話だけどそれでメリットになるのって私だけじゃない?
「いやいや、そんなことないよ。僕にも、もちろんメリットはあるさ。まあ、その内容は言うことが出来ないけどね。」
んー、この話めちゃくちゃ私にとってはありがたい話だ。あんなに便利な魔法が使えるようになるなら、ちょっと危ない橋でも渡るべきかな。
「あの、本当に教わるだけですよね。他に何か変なこととか要求しないですよね?」
そう聞くと、少し驚いた顔をされた。
「僕は、そんな事しないよ。」
「それなら是非ともよろしくお願いします。」
私達は固く握手をした。
「あの、エマ様と呼んでもいいですか?」
「いや、エマでいいよ。」
「わかりましたわ。エマ、これからよろしくお願いします。」
「はーい!よろしくね!!」
その後も、私達は木の上でしばらくの間、談笑した。エマは、私の知らないことを沢山知っていて話すだけでもかなり面白く興味深かった。
また、これから魔法を教わるのは闇魔法が使いやすい夜にすることになった。
今日は、とりあえずおやすみということで明日からすることになった。
よし、たまたまだけど闇魔法を訓練できる機会もつくれたのはよかったわ。明日からもっと頑張るぞー!




