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34 視線の正体 ジン 視点

あの後、俺は王族専用として学院内に用意されている自分の屋敷にリーンを運んだ。運ぶ途中何度も、苦しそうに呼吸を弾ませていた。


ちっ。ココ最近、リーンの目の下にクマができていたことには気づいていた。けれど、まさかここまで体調が悪化しているとは。


目の前で苦しそうにしているリーンを見ると、自分の不甲斐なさに怒りがこみ上げてきた。


俺は怒りを抑えとりあえず、ベットにリーンをおろし、小さい頃からお世話になっている医者のジャックを呼んだ。


ジャックは、歳はかなりいっているがとても信頼できるやつだ。俺が、毒を飲んでしまったときも命を救ってくれたのは、ジャックだった。


いわば、俺にとっては、命の恩人だ。

少しの間待っているとジャックがそれはもう、慌ただしく入ってきた。


「ジン様いかがされたのだ。また、どこか怪我されましたか?わしがあれほど気をつけろと言ったのに。」


口からマシンガンのごとく言葉が出てきて口を挟む隙すらない。


「いや、俺じゃない。こいつをみてやってくれ。」


そう言うと、俺からやっと視線を外しリーンを見た。そして、もう一度俺の顔を見るなりにやけた顔をした。


「ふむ。なるほどそういうことか。ちょっと待ちなさい。」


そう言い、ようやく診察を始めた。男の俺がリーンの診察に立ち会うのはさすがに気が引けたので一度部屋を出て執務室に向かった。



俺は、執務室の扉を勢いよく開けた。


「バロン。いるか?」


「おかえりなさいませ。ジン様。」


そう言い、完璧な角度で丁寧にお辞儀をしたのは専属執事のバロン・シェナード。代々王家に使えているシェナード侯爵家の長男だ。


小さい頃から俺の身の回りのありとあらゆる事をやってくれる頼りになる存在だ。


「バロン。リーンに付きまとっているやつについて情報を探せ。」


「かしこまりました。処分の方はいかが致しましょう。」


「あぁ。少し、気になることもあるから俺の前に連れてこい。処分はその後だ。」


「承知致しました。」


バロンは、そう言い、一瞬で闇に溶け込み姿を消した。リーンを怖がらせるなんて、そいつほんとにタダじゃ置かない。


再び、1人になると怒りがこみ上げてきたが1度落ち着くことにした。


しばらくすると、扉をノックする音が聞こえた。


「診察が終わりましたぞ。」


「そうか。それで、容態は?」


ジャックは、髭を擦りながら言うには、


「あれは、過労による風邪じゃな。ストレスからくるものだろう。おそらく、精神的に何か来る出来事があったのじゃと思うぞ。今は、薬を服用させてぐっすり寝ておる。よく寝て、よく食べればすぐに回復するじゃろう。」


「わかった。ご苦労だった。」


そう言った後、ジャックを退室させた。

とりあえずは、リーンがなにか重い病気ではないと言うことに安堵した。



………


数時間後、バロンが連れてきたのは、いかにも貴族という感じの美味しいものをたらふく食べているのであろうお腹を持ち、でっぷりとした男だ。

見ているだけで男の腹に1発殴りを入れたい衝動に駆られた。


「おい。離せ。俺を誰だと思ってるんだ。たかが執事ごときが触れていいような存在じゃないんだよ。」


声まで豚か。無駄な抵抗だな。

てか、こいつ。よく見たら、べラビスタ男爵家の奴か。前に貴族一覧表で見たことあるな。べラビスタか、これは使えるな。


どうやら、椅子に座っている俺の顔は暗闇なので見えないらしく、ひたすら騒いでいる。


「黙れ。」


俺が少し、殺気を込めて話したことで肩を振るわせはじめた。大したことないな。


「それで、なぜリーンにつきまとう。」


男は、全身で震えているせいか、なかなか答えなかった。ところが、突然開き直ったのか態度が変わった。


「…それは、俺たちは愛しあっているからさ。リーン様は、僕に何度も天使のような微笑みで毎朝挨拶をしてくれるんだ。それに、リーン様だって、本当は僕以外と話したくはないはずさ。」


…何を言ってるんだ。こいつは。

頭のネジが外れてるとしか思えない。


リーンが、こいつのことを認識しているとは思えない。俺と似たようなやつだからな。だいたいめんどくさい時は、笑顔張りつけてることが多いし、それにこの執着している様子は、何かが変だ。


「んな、わけねぇーだろ。馬鹿かおまえ。」


と、吐き捨てて言った。


「僕に向かってそんな口聞いていいのか。お父様にいいつけてやる。」


と、ふんぞり返りそうなほど偉い口を聞く。


「そんなのはどうでもいい。それより、これからリーンに付きまとったりするのやめてくんないか?これは、警告だ。」


不敵な笑みを浮かべて言ったが、効果はなかったらしい。


「な、なんで僕が彼女を見るのをやめないといけないんだ。彼女にふさわしいのは、僕だ。ああ、リーン様今すぐにでも迎えに行って君を僕のものにしたい。ぐふふ。」


気色悪い。

まあ、いい。俺は、満面の笑みを浮かべて言った。


「言ってるだろ。これは、最終警告だ。さもなくば、代償は、お前の家に払ってもらう、」


「その手には、のらないぞ。誰だか知らないがこんなことで僕の愛は、屈しない。」


俺は、笑みを浮かべたままバロンに視線を送った。それで、内容を理解したのか、魔法を使い瞬間移動した。


「ここは、どこだ。なぜ、僕はお城にいる。一体どうなってるんだ。」


と、うるさい声が聞こえた。


俺は、笑みを浮かべながら言った。


「だから、言っただろう。警告を無視したからここに来たんだよ。」


「で、で、殿下。さ、さ、先程は、し、失礼しました。」


ようやく、俺の事に気づいたらしく急に態度を改めてきた。でも、もう遅い。


「ああ、きにするな。既にべラビスタ男爵家は、爵位を失った。」


「…そ、そんなはず。」


そう言い、言葉を失い、放心状態だ。


「そんなことは、いくらなんでも許されないはずだ。ただ、ずっと見ていただけではないか。それだけじゃないか。」


「お前、ほんとバカだな。俺がべラビスタ家の不正を知らないわけないだろう。大量のアヘンを密輸し、売りさばいているだろ。ほら、これが証拠。」


そう言い、1枚の紙を目の前に落とした。男は、その紙を確認し、驚愕していた。


「ど、どうか。お慈悲を。」


「さっき警告してあげたのに、無視したのは君だろう。それに、俺の大事なものを困らせてタダで済むわけねぇだろう。ジャック、後処理は任せた。」


そう言い残し、今度は自分で瞬間移動し、リーンの部屋に戻って来た。



部屋に戻ると無防備に寝ているリーンがいた。先程に比べて呼吸も安定している。

俺は、無意識のうちに頭を撫でた。


「怖い思いさせたよな。ごめん。もっと、早く気づけばそんな思いさせずに済んだのに。…」


そう、独り言をいい、しばらくの間頭を撫でていた。

すると、


「…ジ……ン。…ありがとう…。」


と、無意識だろうが、寝ながら返事をしてくれた。


俺は、衝動的に寝ているリーンに優しくキスをした。リーンの唇は、思ったよりもずっと柔らかかった。


大切にしようと思ってこれまで手を出さなかったのに。あんな、可愛い顔で寝言を言われたら、衝動的になってしまった。


俺は、火照る顔を覚ますために一度部屋を出た。

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