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25 怒涛の入学式②

入学式後、私はラーナに連れられ寮に来ていた。言うまでもなく、公爵邸とあまり大きさが変わらない部屋だ。

きちんと、清掃もされており、寮というより屋敷に近いようにおもわれる。


そんな中、私は今ラーナによる全身マッサージやら、お風呂に入れられるやらと目まぐるしく準備している。当然、お昼ご飯も食べていないわけで、とてもお腹がすいた。せめて、ちょっとしたお菓子だけでも食べたい。


そう思い、ラーナに何か食べものを食べてもいいか聞いたら、有無を言わさぬ笑顔だけが返ってきた。

怖い、私のメイド本当に怖い。もしかしたら、お母様と怖さではいい勝負をするかもしれない。


だいたいなんで入学初日にパーティなんてするんだ。ただ、ただめんどくさいだけなのに。

はぁ。そう小さくため息をついた。


そして、ようやくラーナも納得がいったのか私に鏡を渡した。すると、そこにはラーナの努力の甲斐もあり、さっき以上に自分の顔が可愛らしく見えた。今は、いつもとは違い髪を結い上げて編みこんである。 だから、顔立ちが髪をおろしている時よりしっかりと見えるのでより一層綺麗に見えるのだ。

いやー、これが自分の顔なんだから本当に不思議だなぁ。前世は平凡を貫き通したようなどこにでもいる顔だったしね。

もしかしたら、前世の顔のままの方が私的には目標達成できるのではないだろうか。


ちなみに今私が着ているドレスは青色の所々に宝石が散りばめられている高価なものだ。これは、昨日ジンから送られたもので、急遽ドレスを変更する羽目になったのだ。届いた手紙にはこれを着てこい。の一言しか書かれていなかった。その割にドレスのサイズはピッタリだったのでかなりびっくりした。いつ、私のサイズ測ったんだろう。


……


そうして、私が寮を出るとそこにはジンが待っていた。

正装したジンはやはりどこからどう見ても本物の王子様だ。いつものガキ要素はどこにも見当たらない。

それに、改めて見ると、本当に整った顔をしていた。

これは、今日は女の子の歓声がやまないなと思った。


ジンは私と目が合うと、少し目を見開いていた。


「リーン嬢。今日は、いつも以上に本当にお美しいです。」


と、いつもなら言わないお世辞まで言ってきた。

ついでに口調もいつもとは違った。周りを見ると、ちらほらまだ寮に残っている貴族がいたので、あぁ、なるほどなと納得した。



「ありがとうございます。ジン様も素敵です。」


私も笑顔をつくり、そう返事をした。ジンは一瞬ピクっと眉間に皺を寄せたがその後は、ジンのエスコートのもと馬車に乗り込んだ。


実は、今日の入学パーティは、王城で行うことになっているのだ。多くの有名貴族が来るのでしっかりとおもてなしをするのが目的らしい。私は、お城へは小さな頃に行ったきり行ったことがないのでリーンの記憶でしか知らない。だから、少しワクワクしていた。


あっという間にお城に着いた。そこからはジンのエスコートのもと会場に向かった。お城は、ほとんどが大理石でつくられており、時々壁に飾ってある絵画や装飾品は、全て図鑑や本で見たことがあるものだった。


「リーン。そんなに城に珍しいものでもあるか?」


そう、聞かれたので私は、目をキラキラさせて答えた。


「何言ってるの!こんなに素晴らしいところ他に見た事ないわよ。装飾品から何から見てて飽きるものがないわ。」


「フッ。そうか。なら今度リーンを城へ招待しよう。リーンに見せたい庭園があるんだ。」


「行く!」


こんな楽しいところをもっと見学できるなんて最高だわ。そうこう、思っているうちに会場に着いた。


会場に入ると、とりあえず一通り挨拶を済まさなければならず、表情をコントロールするのに疲れた。ずっと、笑顔で対応するのも大変だわ。ジンはと、言うとそれはもう見事に張りつけた笑みでご令嬢方をうっとりとさせていた。さすが完璧超人だわ。


その後、私たちはダンスホールへと向かった。もちろん、初めてのダンスは婚約者である、私が務めなければならなかった。


この間練習したかいもあり、スムーズに踊ることができている。


「リーン、今日初めにお前に言った言葉、あれは本心だからな。」


「何を急に言ってるの。あんな見え見えのお世辞言っといて。」


そう、私が返すと何故か今度は顔を近づけてこう言った。


「じゃあ、もう1回言ってやる。今日この会場にいる誰よりもリーンは、美しい。」


あまりにも、予想外の言葉だったので私の顔は今真っ赤に違いない。これは、ズルい。反則すぎる。あー、顔が暑い。真夏みたいだわ。


それに、ジンは中身を知らなければ全てに秀でたまさに女子の理想なのだ。そんなジンと婚約をしてダンスまで踊っている私に向けられる世の女性からの嫉妬の眼差しが怖い。背中にビシバシ当たっている感じがするのだ。

そんなに、羨ましいなら私と変わって欲しいものだ。


でも、やられっぱなしの私ではない。ここは、ひとつ年上の威厳を見せねば。そう思い、今度は私からジンに顔を近づけて微笑みながら


「では、私もお返しに言ってあげるわ。ジン。今日は、本当にカッコいいわ。」


と言った。いや、言った私のが恥ずかしい。こんなセリフ今まで言ったこともないわ。

ジンの反応が気になり見てみると、いつもと同じように見える。ただし、耳は真っ赤になっているので照れているのは隠せていない。よし、私だってやれば出来るわ。


「ふーん。まあ、ありがと。」


そう、ぶっきらぼうに言いながらもさっきより丁寧に踊ってくれているので踊りやすくなった。

ところが、今度はニヤリと笑い本来は無いはずのアレンジのステップを入れてきた。私も負けじと何とか食らいついていく。


「見て。あそこの2人だけダンスのレベルが全く違うわ。」


「ほんとだわ。それになんて楽しそうにダンスを踊るのかしら。」


「本当にお似合いだわ。これならこの国の将来も安泰ね。」


なんて、言う周囲の歓声は全く耳に入らなかった。何より、今までで踊ってきたなかで2人で踊るのが何より楽しかったのだ。


ダンスが終わった頃には、会場の至るところから拍手され大歓声につつまれた。



その後、ジンが陛下に用があると言い、どこかへ行ってしまった。そこで待ってろとは言われたが、どうにもお腹がすきすぎて待っていられない。私は、あまり人が居ない軽食のコーナーへ移動した。


私は、とりあえず手当り次第に食べてみた。美味しい。さすが王宮のシェフが作っているものだ。味、品質どれをとっても本当に1級品だ。


わぁ。デザートもある。

あ、プリンがある。この世界に来て初めて見た。そう思い、プリンを食べようと手を伸ばすと誰かと手が当たった。


「すみません。」


そう、謝りその人を見ると、そこには今朝あった黒髪のイケメンがいた。


「大丈夫です。麗しいお嬢様。」


この人もすごいイケボだ。そう思って、いるとプリンをひとつ差し出してくれた。


「ありがとうございます。」


「いえいえ。僕も甘いもの好きなので。」


そう言い、その男性もプリンを食べだした。

私も、食べてみると、お、お美味しい〜!まろやかな口触りで、何個でも食べられそうだ。はぁ、幸せ。


「プッ。いや、失礼。あまりにも美味しそうに食べるものですから。」


「そうですね。美味しいものは、人を幸せにするものですから。」


そう言うと、何故か少し驚いた顔をされた。


「そういえば、自己紹介をしていませんね。私は、アスガルド公爵家の娘、リーン・アスガルドでございます。」


「これは、失礼しました。私は、ハルト侯爵家長男、

レオン・ハルトでございます。以後、お見知り置きを。」


そう言い、少し会話をしたあとダンスを踊ることになった。ジンとは違うタイプだが落ち着いて踊ることが出来た。


「それでは。リーン嬢いい夜を。」


そう言い、どこかへ行ってしまった。なんか、疲れたし帰りたいな。そう思っていると、ようやくジンが帰ってきた。何やら不機嫌そうな顔をしている。


こうして、私は何故か不機嫌なジンのエスコートを受けたまま馬車に乗り込んだ。

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