23 公爵邸を去ります。
ついに、今日は王立魔法学院中等部の入学式だ。
王立魔法学院は、中等部3年、高等部3年の一貫校であり、基本的に学生は、寮生活。それも、ほとんどが貴族ということで部屋も豪華なつくりになっているらしい。
学院の教育理念としては、誰もが平等に学ぶことらしく、それに伴い学院に連れて行ける従者は基本1人らしい。ちなみに、私はもちろんラーナを連れていくつもりだ。なんと言っても、今ではラーナなしの生活は考えられない。
それにしても、どうして主人公は中等部にはいないのだろうか。何か、理由があったりするのかな?
それとも、大体の乙女ゲームの年齢って15、6歳から始まるイメージだし、それに運営があわせたのかな?
「…リーン。集中が途切れて重心ぶれてる。」
おっと、私としたことがミルに言われるまで余計なことを考えてしまった。薄々、というか、お気づきでしょうが、私は今訓練で素振りの真っ最中なのだ。
一応、今日で家での訓練は終了し、明日からは自分でやろうと思ってる。
私は、気持ちを切り替え再び木剣を強く握りしめ、素振りを続けた。
………
「…終わり。」
そして、ようやくその日5000回にも及ぶ素振りが終了した。いやはや、疲れた。汗だくだし、お風呂入りたい。
そうやって少しボーッとしていると、
ゴホン。オホン。という、わざとらしいミリアム師匠の咳払いが聞こえた。私は再び背筋を伸ばした。
「あー、リーン。これまで良く頑張った。俺はお前を誇りに思う。何せ、騎士団に入団する奴が行うメニューを今日まで成し遂げたんだから、自信をもて。後、ひとつぶっちゃけると、最初はご令嬢の家庭教師なんて全くもって、やりたくなかった。だが、お前と接して教えることの楽しさを改めて実感した。」
ミリアム師匠らしい言葉だ。普通なら雇い主の娘にこんなぶっちゃけた話をする人はいないだろう。やはり師匠は、変わっている。
そう思いながらも私は、これまでの感謝を言葉にした。
「ミリアム師匠、それにミル、今日まで本当にありがとうございました。」
私は、誠心誠意頭を下げてお礼を言った。
「…こちらこそ。楽しかった。ありがとう。」
と、返事をしたミルを見て一瞬フラっとした。そこには、天使の微笑みを浮かべたミルがいた。う、う、美しい。この人は、本当に同じ人間なのだろうか。このままだと私の目がやられる。そう思い、普通の顔のミリアム師匠の方を見た。フゥ、落ち着いてきた。
「おい、リーン。俺の顔を見て何か失礼なことを考えたな。まあ、いい。俺から1つプレゼントだ。リーン専用のものなんだぞ。」
そう、ミリアム師匠は言い、私に本物の剣をくれた。なるほど。確かに、師匠やミルに比べれば剣は、短い。
しかし、鍛えた成果なのかそこまで剣を重くは感じなかった。
「ありがとうございます。大切に使います。」
そう、お礼を言った。ふと、ミルの方に顔を向けると、ミルがなぜか、オドオドした様子で口を開けて何かを言おうとするがそれをなかなかしないでいる様子がうかがえた。
「ミル、どうしたの?」
「………。あのさ、僕も学院行くから今度は僕だけだけど一緒に剣術しない?……もちろん嫌だったらことわってくれて」
「やる!やらせてください。」
私は、ミルの言葉をさえぎってお願いした。1人でやろうと思ったが、ミルが教えてくれるならそちらの方が断然私の能力向上が見込める。
「…わかった。」
そうして、約束をした後その日の訓練は終了した。
その後は、ラーナにあっという間にお風呂に入れられ、制服に着替えた。
私が着ていた高校の制服に比べてやはりスカート丈がだいぶ長く、いかにもお嬢様って感じの制服だ。でも、何より可愛いから問題無し。胸に着いている赤色のリボンが何より可愛い。
髪の毛もいつもより念入りにブローをしてくれたので、サラサラだ。今日の私、完璧じゃない?どこからみても隙はないわ。そう鏡を見ていると、
「お嬢様。はぁ。自分のお顔がほんとうにお好きですね。お時間です。そろそろ行きますよ。」
という、ラーナの言葉を聞き私は、部屋を出た。
見送りにはお父様、お母様だけでなく、公爵邸で働いている人全員が来てくれた。
「リーン、元気にするのよ。お手紙書いてね。」
と、涙ながらに話すお母様。いや、今思うと前なら考えられない状況だと改めて思った。
「はい。お母様、必ずかきます。」
「約束よ。」
「リーン。いいかい。男には、気をつけるんだよ。殿下でも気を抜いては行けないよ。」
そう言う、お父様の目はガチです。いや、父怖いわ。
「わかりましたわ。お父様。」
「お嬢様。」
そう、小声で合図するラーナの言葉を聞き、私は、お別れの挨拶をした。
「お父様。お母様。お元気で、それでは行ってまいります。」
そう言い残し、私は、公爵邸を出た。
リーンになって、自分が悪役令嬢だと知って、ここまで勉強だけじゃなくて、魔法や剣術まで対策してきたけど、これからが勝負だ。平凡目指して頑張るぞー!
そう、心の中で宣言した。
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