12 初めての親子喧嘩②
勢いよく廊下に飛び出したのはいいんだけど、一体お母様はどこにいるんだろう。
早く、見つけたいのに、場所が分からない!
何か、方法ないかな。公爵邸広すぎて、全部回るのすごく大変そうなんだもん。
そーだ!確か、乙女ゲームの舞台が王立魔法学院高等部ってことは、魔法使えるよね!だって、多分魔法学ぶところでしょ!
私も使えたりするのかな?試しにやってみちゃう?
「サーチ。」
なんちゃって。出来るわけないか。なんか、中二病みたいだわ。そう思っていたら、突然道が、ピカッと光り、まるでスポットライトで照らされているかのようだ。
で、で、で、できちゃった。えーー!、ただのノリだったのに。
いや、うん、すごいわ。
あれ? でもだんだん光が薄くなってきてる!
やばい、急がないと、これ消えるやつだ。
そう思い、私は全速力で走った。
ハァッ、ハァッ
流石に今日は朝から体力を使いぱなしでもう残ってないや。あ、光が止まった。こっちの方向は、お父様の書斎の部屋だ。
走る速度を落とし歩くようになるとスっーと光は消えてしまった。
ゆっくり近づくと話し声が聞こえた。あんまり、良くないけど聞かせてもらおう。そう思い、壁にもたれかかって聞き耳を立てていた。
グスッグスッと泣く声が聞こえる。
「エルザ。落ち着いたかい?ほら、エルザの好きなホットの紅茶だ。」
「グスッ。グスッ。 ありがとう。サイクス。」
「いったい、何があったんだい?
君が泣くなんてただ事じゃないだろう。」
「完全にリーンに嫌われたと思ったら悲しくなってしまったの。私は、リーンを産んだ時から、身分的にも年齢的にも将来は、王太子妃になるんだろうと思っていたから、必要以上にあの子に厳しく当たり、それを強要してしまったわ。」
「そんなことはないだろう。君は君なりの方法でしっかりとあの子を育てているさ。」
「いや、あるのよ。今日初めてあの子に反論されるまで、私は自分の何が悪いのか、わかっていなかったんだから。それに、あなたには言っていなかったけど、私あの子に手をあげることもあったのよ!」
「優しい君のことだ。なにか理由があったんだろう。」
「そうよ。社交界なんかの外の世界に行けば、嫌でも色んながいるわ。時には人を蹴落としたりすることも日常茶飯事の世界だもの。リーンのメンタルを少しでも強くしてあげないとと思ってたのよ。王太子妃なんて、役目は強くないと生き残れないもの。」
「それは、君の経験からかい?」
「そうよ。でも、手を挙げたのはいけなかった。そこまでする必要なんてなかった。」
「それはそうだね。手を挙げたのは良くないことだ。でも僕も、そんなことをしているなんて知らなかったし、仕事で忙しくて家庭のことを君に任せ切りにしまっている部分も大きい。君一人のせいでは無い。」
「そうね。私たちは、2人とも悪かった。謝りに行きましょう。」
「いや、その必要は無いよ。リーンいるんだろう?出ておいで。」
お父様も絶対超人だわ。結構、息を殺して頑張ってたつもりなんだけどな。でも、お父様とお母様の考えてることを知れてスッキリした。このまま、仲直りできるようにあとは、私が頑張るだけだ。
お母様すごく驚いた顔してる。私も、少しだけど手が震えてきた。その時、ふとさっきの笑顔のジンの顔が思い浮かんだ。なんでこんな時にアイツの顔なんか…
でも、なんか勇気がでてきた。
「お父様。お母様。盗み聞きしてごめんなさい。
それに、お母様!せっかく私のために毎日レッスンしてくれていたのに逃げてしまってごめんなさい。」
「いいのよ!なんであなたが謝るの?謝るのは、私よ。教育に夢中になりすぎて、あなたのことを見ていなかった。時には、叩いてしまったり、部屋に閉じ込めてしまった。そんな私に怒るのは当然だわ。ほんとにごめんなさい。」
「それはもういいんです。お母様のさっきのお話を聞いて、意図が理解出来ましたし、私にも悪いところはあった。」
「そう言ってもらえると助かるわ。」
「うんうん。2人ともこれで仲直りだね。」
「お父様!」
「あなた!」
私と、お母様の声が被った。
「僕もすみません。」
「「ツッ、ふふふ。あははは!」」
お母様と一緒に笑ったのは本当に久しぶりだ。
仲直りできて本当に良かった。
「そうだわ!リーン!ひとつ提案があるの。私と一緒に何もせずに過ごす時間を作って貰えない?もっと、あなたとの時間を大切にしたいのよ。それとも、いまさら、虫がよすぎるかしら。」
「いいえ、お母様。私ももっともっーと仲良くなりたいです。」
「ちょっと!エルザだけズルいじゃないか。僕も混ぜてくれ。」
「お父様はダメー!」
そう言ったら、お父様が明らかに落ち込んでいた。なんか、大型犬の耳が見える。お父様にも可愛らしい一面があって、ちょっと安心だわ。
「じゃあ、3人で出かけるのはどうだ。今の仕事に一段落したらの話だが。」
「いいわねー!久しぶりに出かけましょうか。」
「ヤッター!お出かけ!」
その後は、家族仲良く夕食を食べた。今まで、どこかギスギスした雰囲気の食卓だったが、ふんわりした雰囲気に変わった。
まるで、私の前世の家みたいに、暖かくて幸せだ。そう思ったら、自然と涙が溢れてきた。
「リーン。どうした?大丈夫か?」
「あなたがなにかしたんじゃないの!?」
「僕は何もしてないよ!」
「あなたじゃないなら、私がなにかしてしまったって言いたいのかしら。」
ちょっとした夫婦喧嘩が始まりそうだったので、私は急いで止めに入った。
「2人のせいでは、ありません。ただ、幸せだなって思ったら、自然と涙が出ただけです。」
「それならよかった。」
「これからは、リーンに寂しい思いをさせないようにするわ。」
「はい!」
ただ、心のどこかで私はお父様とお母様の本物の家族では無いことに罪悪感を覚えた。私は、あなたたちの本当の娘では無い、決して口に出来ない事実を飲み込んだ。
その後も和やかな雰囲気でその日一日を終えた。




