五年後
あれから五年がたった。
私とチェリーは十五歳に、ブルーノは十八歳に、ショートは十二歳になった。
ついでに言うと、ロイ王子も十五歳で、ルイ王子は二十歳。
きっちり五年がたつまで、本当にシャロック国からは全く接触はなかった。
けれど、突然手紙が来た。
「……ルイ王子とロイ王子がこちらに向かっているらしい」
エイベルはため息をついて言った。
そこには、大きく育った三人が固まっている。
すらりとした体系に育ったブルーノ。
大柄だけれど、ほんわかした雰囲気のままのチェリー。
やっぱり小柄だけど少し大きくなり、さらに可愛いショート。
私は……少しだけど凹凸もでき、黒髪もさらに長く伸びてきた。
まあ、前薬で育った十八歳の姿よりはさすがに幼い。
「なんでまた……僕はきいてないよ」
「交流を図る気だそうだ」
「いい事じゃないのー? オレは賛成」
たれ目をさらにたれさせてチェリーはおっとり言った。
「ロイ王子だけならとにかく、ルイ王子は何を考えているか……」
エイベルの言葉に、深く頷くのはブルーノ。
「あいつは何を考えてるかわからないからな」
「ボク嫌いー」
素直なショートは、ご機嫌斜めだ。
「多分お城に滞在すると思うけど、ショート君」
「げっ」
露骨に嫌そうな顔をするショート。
それを見てエイベルは苦笑い。
「王子様同士、仲良くしたらどうだ」
「ブルーノおにーちゃんの意地悪うう」
「いや、多分オレらも相手するんじゃない?」
「……マジか、チェリー坊」
「面識あるのオレらぐらいじゃんー?」
「確かにそれは事実だな」
「王子ふたりの部屋、広くて豪華なんだってーボクのと同じくらい」
ショートはちょっとご機嫌斜めだ。
とりあえず皆で彼らが来る時間までをつぶすことにした。
もう五年もあってないけれど、どんな姿に育っているんだろう。
そう思っていると、すぐに時間が来た。
「ルイ王子とロイ王子がきましたよー」
使用人の声に、私達は少し身構える。
そこには、貴族らしいしっかりとした身なりをした王子ふたりがいた。
ルイ王子は髪の毛を少し伸ばし、一つにまとめている。ロイ王子はそのまま大人になった感じだ。
ルイ王子は余裕のある表情をしているが、ロイ王子は困惑した様子で自信なさげに立っている。
「久しぶり、クリス。ぼくは、しばらくこの国に滞在することになったよ」
「俺も、お世話になるが……まあ、気を使わないでくれ」
「ロイ、気は使わせるものだよ。そして、少しでも消耗させるためにぼく達は着ているんだから」
「兄上……」
相変わらずはっきりとした価値観の違いだなあ、と私は呆れる。
ロイ王子は歩み寄る気はあるけれど、ルイ王子は全くない。
それは、五年たっても変化がないようだ。
ブルーノが露骨に嫌そうな顔をしてルイ王子をにらんでいる。
ショートは、使用人にふたりを部屋に案内するように言った。
「クリスもここに住むのかい? ぼくはクリスに会いに来たんだ。かまってくれないなら帰ってしまうよ」
「え」
「そうだね、皆住んじゃないよ。クリスおねーちゃん達なら大歓迎だよー」
「ショート、そんな気軽に」
「部屋はいくらでもまあってるから、余裕だよっ」
そりゃ、このお城はびっくりするほど広いから、あるだろうけれど。
「賢者様もきっと許可くれるし、ビット騎士団長も大丈夫なはず」
「そりゃ、王族のお願いだからねー、オレらがどうこう意見する話じゃないし」
あきらめ気味のチェリー。まあ、なんだかんだでショートは王子様だから、わがままを言ったらすぐ通っちゃうんだよね。それは、ルイ王子やロイ王子も同じ。
私達平民は、意見の重さでは叶わない。
「ちなみに、シャロック国からたくさん本を持ってきたよ、ぼくは」
「……僕にも読ませてくれるか」うず
「減るものじゃないから、別に構わないよブルーノ。でもきっと、価値観が違うからつまらないんじゃないかい?」
「医学書とかにも関心はあるから、先進国の情報は気になるんだ」
「なるほどね、ぼくの国のほうが医療は進んでるしね」
うわああ、頭がいい者同士の会話って感じ。
ロイ王子はなんだか落ち着かない様子だ。
「ねぇ、ロイ王子。チョコレートあるー?」
「ちょっとチェリー、もう子供じゃないんだから」
「だけどさー、クリスちゃん。あのチョコは格別だよ」
「一応持ってきたよ、チェリー」
「やったね!」
「……なんかこのリアクションを見ると落ち着くな。あんまり変わってないんだな、チェリーは」
「よく体だけおっきくなったねって言われるかなー」
それをまったく気にしてないのもすごいと思うんだけどね、チェリーは。
外見だけなら色気をまとうぐらいになってきたのに、本人はそっち方面は疎く、わたしばっかり構っている。騎士団見習いとしても、だいぶ上位になり、将来は確実に活躍できるだろうと思えるのに……。
「クリスちゃん好みになりたいなあ」
愛情表現がストレートすぎるので、たまに私は困るんだけれど。
それはショートも割とそう。
何でそんなに私が好きなのか、よくわからない。
まあ、実際問題私のせいで女の子がほかに寄り付かないのもそうなっちゃった原因なのかもしれないけれどね。
リルが私の足元にまとわりついてる。人間国の王子ふたりは部屋に案内されていく。
「夜這いしちゃダメだからね」
ルイ王子は、通り過ぎ間際に、耳元でつぶやいた。
私は思わずルイ王子の足を踏んづけた。
ロイ王子がびっくりした顔をしている。
こうして、私達はお城でみんなで住むことになった。




