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ただいま

 目の前に現れた猫の賢者エイベルを見て、泣き出すショート。

 抱き着くチェリーに、頭を下げるブルーノ。

 エイベルが、シャロック国にやってきた。

 今回はどうやらひとりで来ることに決めたらしい。


「待たせたね、クリス達」

「賢者様!」


 私も泣きそうになる。よかった、正直不安だったよ。

 エイベルが私達を順番に撫でてく。

 なんだかんだで、ブルーノも泣き祖な顔だ。

 まあ、ずっとお兄ちゃんとしてこの旅の間頑張ってきたんだから、当然だよね。


「お前が賢者のエイベルか」

「ロック王様、そうでございます」


 笑顔で頭を下げるエイベル。ブルーノはロック王をにらんでいる。


「わたし達はお前らを受け入れる気はない」

「……ですが、自分の力で、あと五年はこの四人を保護しようと思います」

「はん、たかが五年か」

「自分の力ではそれが限界です」


 それでも、だいぶでかいと思うんだけれど……。


「その後も、クリスの力で平和は保てるはずです」

「いいや、必ずお前らの弱みを握り、探してやる」


 ロック王はくくくと笑う。

 エイベルは真顔でロック王を見た。


「……五年後、気が向いたらまずは交流をしてやってはくれませんか、自分達と」

「気が向いたらでいいのなら、考えてやらん事もない」

「ありがたきお言葉」

「どうせその間に魔力をためるんだろう」

「残念ながら、五年間が限界です」

「……表向きはまだできると言えばいいものの」

「駆け引きは苦手なんです。それに、貴方たちを信じたい……」

「交流すれば理解し合えるとは、わたしは思わない」


 うわあ、大人の会話って怖いなあ。

 ショートなんか、おびえちゃってるし。


「ロック王様……」

「ただ、こっちとしても準備期間もあるからな、五年間、そちらの国には触れないでおこう」

「感謝します」

「では、帰りの馬車を用意してある、帰るがよい」


 ロック王のその言葉で部屋を出る私達。

 使用人たちに案内されて馬車に乗る。

 馬車には、最低限の旅の道具だけが入っていた。


「賢者様、魔法って本当にかけたの?」


 こっそり私はきいてみる。


「はったりだ」


 あ、私と同じなんだ。


「そんなものがあれば、最初に使っている」

「だよね……」

「人間は魔法が使えないのが普通だから、そんな事にも気が付くには時間がかかるだろう」

「なるほど」


 こそこそ話しながら数日、ロマンヌ国にたどり着く。

 懐かしい森たちに、獣人がいっぱいいる景色。

 大歓迎で私達を迎え入れる彼ら。


「おかえりなさい、クリス様! そして、三人」

「僕らはおまけかよ」

「まあまあ、オレらよりクリスちゃんのほうが大事なんだよ」

「ボクは王子様なのにー」


 拗ねるショート。かわいい。

 私達には、豪華な料理がお城でふるまわれた。

 両親の登場に、甘えだすショート。照れながら褒めてもらいたがるチェリー。

 いつも通りそっけないブルーノ。

 三人それぞれのそれらしい行動に和みながら、私は箸を進める。

 料理って案外前の世界と変わらないんだよね。和洋中が普通にある。

 ただ、それぞれがどっかの国オリジナルってことになってるだけで。

 お寿司も、少し味が違ったりする。それでも、こっちのお寿司はお寿司でおいしい。


「久しぶりにまともな服を着たよー」


 王子様! な感じの服を着たショートはご機嫌に言った。

 金の刺繍が入った服なんか、旅の途中じゃ無理だったもんね。


「オレはまあ、仕立ててくれた服がすでに小さくてはいらなかったよー」

「さすがだね、チェリー。私は入った」

「いいなあ。まあ、騎士団見習いとしては、でっかいことは大事だけど」

「……僕のはでかい」

「あらら、ドンマイだよ。ブルーノ」

「クリス……」


 皆の帰還を祝ってのパーティが始まる。

 誰一人大きなけがをすることもなく、無事戻ることができた。

 まあ、正直ほぼ捕まってすぐ終わった旅だったけど。

 リルも花で作ったわっかを首にかけられお酒を飲んでいる。

 私はももいろの色のふんわりしたドレスを着ている。大きなリボンがすごく可愛い。あとの三人も、おめかししてすごく決まっている。


『まあ、まだ問題完結はしていないが』


(そうだねー、これからだね……)


『五年後からが勝負だ。それまでに教養とかを身につけるべきだな』


(なるほど)


『王族とうまく渡り歩くには、それなりの覚悟もいるぞ』


(たしかに……)


『特に兄王子は曲者に感じた』


 それは私も。弟のロイ王子はいい子って感じだけれど……。

 ルイ王子は一筋縄ではいかないだろう。


「クリスちゃーん、踊ろう」

「あ、うん。チェリー」

「おい、僕が年長ものだから、先だ」

「そんなの関係ないよ。オレが先に声かけたしー」

「ボクは最後でいいかなー。最後で終わるまでずっと一緒」

「まあまあ、落ち着いて。皆と交互に踊ろうよ」


 私は思わず笑う。こんなふうに、平和な日々がずっと続くといいのになあ。

 シャロック国も一緒に、ふたつの国が仲良くできれば……そう思うと私の目に涙がにじんだ。


「クリスちゃんっ!?」

「ごめんなさい。ボクケンカするつもりは」

「泣くな、クリス」

「ううん、大丈夫。ちょっと切なくなっただけ」


 その言葉にみんなは沈黙する。

 しばらくして私を見つめたチェリーが言った。

 それにみんなも続く。


「オレがいれば大丈夫だよー」

「僕のほうが有能だね」

「えー、ボクだよー」

「あっ、ケンカじゃないからね、クリスちゃん」

「……ありがとう、三人とも。さあ、踊りましょう?」

「うん、ボク踊るー」


 そうして、私達は上品な曲に乗ってダンスを踊った。

 きれいなネオンがまぶしい。大人も子供も楽しそうに踊っている。

 ダンスは久しぶりだったけれど、楽しい雰囲気のせいか、下手でも不思議と楽しめた。その後は、皆でお城に泊まり、次の日の朝もみんなでワイワイ食事をとった。


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