大人になる薬
あれかロイ王子は私達の前に何度か現れては、逃げるように言った。
それでも、やっぱり私達の決意は揺るがない。
まずは私達は当初の予定通りお金をためながらお城に近づくことにした。
思いついたのが、旅芸人のほかに、ブルーノの知識で薬草を売ることだ。
意外と人間たちは無知なのと、薬屋は高額だということを調べるうちに知った。
「まあ、僕達で試さないといけないな……」
宿の中で大量の薬草を並べてブルーノは言った。
「これは、大人の姿になれる薬草だ」
「そんなものがあるの!? ブルーノ」
「三十分で、一生に一度だけ使える。乱用するといけないからな」
「……いざとなった時に取っておけば?」
なんか、使えそうだけれど。
「クリスはそう言うが、その時効果がなくて泥沼になるかもしれないだろ」
確かにね。
それよりはマシかなあ。
ってわけで私達は試してみることにした。
薬草を煎じて、青い液体にして飲む。
すごく苦くて視界がくらくらする。
「!」
目を覚ますと……素っ裸な十八歳ぐらいの私達がいた。
着ていた服は引き裂かれている。
反射的にタオルを引っ張り出す私。それを取っていく皆。
チェリーの場合タオルがほとんど頼りない感じになっている。
大柄な体系は誰が見ても長身で、どっしりしていた。それでも穏やかそうな雰囲気はキープしている。
真っ先にチェリーに目がいったけれど、ブルーノも結構立派に育っている。
頭がよさそうな顔立ちはそのままに、肩幅も少し広くなった。
顔は真っ赤だけれど、肌は白く艶めかしい。
ショートは案の定小柄でかわいらしい品のあるルックスになっていた。
ブルーノより白い肌に、華奢な体は中性的だ。
一番自分の姿にショックを受けているのは彼だった。まあ、小さいままだから仕方がないだろう。
でかい順にチェリーが百九十越えぐらい、ブルーノは百七十八ぐらい。ショートは……百六十ちょっとかな……。私もだいたいそれぐらい。
「うわあああああああん、ボク大きくなれないんだああ」
「ショート、タオル取れてる取れてる」
「ぎゃああああああああ」
「……チェリー坊」
「あははーオレ思ったよりおっきいねー」
「いや、予想通りだけどな」
「そう?」
「ああ」
「ブルーノお兄ちゃんも結構長身じゃん」
「……不満はない」
「うわああああん、ボクだけが小さいー」
騒がしいなあ。
そんなふうに騒いでると宿の店主が騒ぎ始めた。
「ちょっと! 誰!? 誰が勝手にクリスさんたちの部屋に……」
ガタガタと鍵のかかった扉をあけようとしている。
まずい、と思ったけれどもう遅かった。合いかぎを使って店主は部屋をあけて……。
「きゃああ!? 裸の男女がいつのまに!」
「あの、これは違うんです」
「何が違うの、クリスさん達に似てるけれど……気のせいよね」
気のせいじゃないです! 本人です!
でも、この薬草の知名度は低いからなあ。
「変態! 出て行きなさいっ」
「きゃあああ」
私達は追い出された。
裸のまま。このままじゃ動けない。
一応タオルは持ったままだけれど……後に十分ぐらい外で裸だ。
「寒いよー」
ショートがすぐにねをあげた。
そして私にくっつこうとしてきた。
「おい、わんこ! 何してんだ!」
「だって、寒いときは人肌でしょう?」
「ショート君、オレのところにおいで。オレのが体温高いからー」
「わかった」
ありがとうチェリ―。さすが空気読める。
中身だはまだ七歳のままだから、今一そう言う感覚がショートには弱いのだ。
でも身体は大人だから、何があるやら……。
ブルーノが頭を抱えている。
「まさかこうなるとはな……」
「風邪ひきそう」
「クリスちゃん大丈夫?」
「チェリーが一番寒そうだけど」
あんまり見ないようにしているけれど、タオルはみんな同じサイズだから、きっと一番肌を露出しているのはチェリーだ。
「オレは筋肉があるから、大丈夫」
「なるほど」
「ボクはないみたい」
「それはそのまま大きくなってるからだろ。努力すれば筋肉ぐらいなら変化する」
「本当? ブルーノおにーちゃん!」
「ああ」
「わあい」
ちょっとショート、万歳しないで! タオルが取れる!
慌ててチェリーがショ―トタオルを押し付ける。
中身がピュアな子供なのも、こういう時困るなあ。
草むらに隠れ気味なブルーノがため息をついた。
「そろそろ戻るだろう、中に入るぞ」
ブルーノの宣言通り、私達は元に戻った。
そして、宿にタオルをもって入ることにする。
宿の店主にはぽかんとされた。
「なんで裸なの、皆」
「あの、お風呂に服を持っていくのを忘れて」
「ドジねー」
店主の言葉に、あははと笑う私。
慌ててみんなできがてため息をつく。
「この薬は危険だな……」
「そうねブルーノ」
「知名度がなくってよかったぐらいだ」
「私もそう思う」
薬草を燃やすことに決めた私達。
これを乱用されたら社会がおかしくなるに決まってる。
結局この薬草は売らないことにしたのだった。




