王族がやってくる!?
次の日。私達はカチンコチンだった。
ご飯もろくにのどを通らない。それが露骨だったのはブルーノだ。何も食べない。
チェリーは緊張からお腹が減るタイプらしい、がつがつ食べている。
ショートはどこかおびえていた。
「怖いよお、怖いよお」
「よしよし、ショート」
「でもっ、ボクがクリスおねーちゃんを守るんだよっ」
「ありがとう」
あーんもう、可愛すぎるよ……ショート、もふもふさせてー!
ショートを抱っこしながら、外を見る。重いけれど!
今から逃げるわけにはいかないだろうし、どうせ最終的には王族と会わなきゃいけないし。まあ、一応は最近普通の服も買ったし、その格好で会いたいんだけれど……。
とりあえず髪の毛を丁寧にとかして、おめかしする。うん、これでいいかな!
「今日は気合入れて営業しなくっちゃね!」
「そうだね、クリスちゃん」
「ああ、僕メガネを磨いておいた」
「が、頑張るよっ。ボク、平気だんっ」
こうして、私達は気合を入れた。
**********
旅芸人の仕事を始めてしばらくして、人込みができてきた。
今日も大繁盛だ。しかしだ、王族はなかなかやってこない。
『あちらの方の天候が荒れているらしいぞ』
(なるほど、それで来るのに時間がかかってるのね)
そう思いながら私は歌を続ける。
私なんかの歌でも、拍手がもらえるのは嬉しいなあ。
中には食べ物の差し入れをくれる常連さんも出てきた。
チェリーの喜びっぷりが好評らしい。
「結局どうなるのかなぁー」
「さあ? 僕に聞かれても」
「ブルーノお兄ちゃんには聞いてないー」
「…………」
「まあ、来たところで今のオレらだと何もないと思うけどー」
確かにね。今は人間四人と動物一匹だし。
今時ペットに宝石をつける人間も、いなくはないだろうし。
「あ、雨が降ってきたよー」
チェリーがそう言って空を見上げる。
「本当だ」
「クリスちゃん、濡れると風邪ひくからオレにくっついててー」
「あ、うん」
「あー、ずるい。チェリーおにーちゃんっ」
「ショート君じゃ小さくて雨避けにならないよ?」
「ぐぬぬぬ」
チェリーに悪気はないんだろうなあ。
結構しっかりした胸板に抱かれながら、宿につく。
途中冷やかされたけれど、気にしてる場合じゃない。
「なんか外で、王族は来なくなったって聞いたぞ」
「ブルーノ」
「村人が話してた」
「そっか」
ほっとする私、ショートもため息をついた。
やっぱりこの天候じゃね……。
『まあ、いつか会う日が来るだろう』
(そうだね……)
そう思いながら、私達は数日同じような事を繰り返した。
**********
ふと思い立って近くの森に出る私達。キノコを食べたくなったからだ。
「キーノコないかなあ」
「クリスちゃんはキノコ好きだよねー」
「うん、おっきいのがすきー」
そう言いながらキノコを振り回す私。
結果、キノコはどこかに飛んでいった。
「いたっ」
誰かの声がしてそこに目がいく私達。
そこにいたのは……。
「人間君」
ピンク系の茶髪と、鋭い青い目……間違いなく人間君。
服は部屋着にしか見えないものを着ていた。
「クリス達……なんでこの国にいるんだ。それに、耳たちは?」
「見えなくしてるけど、あるよ。そう言えば何で私達の事を言ったの? 大人に」
「脅されてな……」
「なるほど」
悲しそうな人間君。まあ人間君はそこまで気が強そうには見えないしね。
「今度こそは言わない」
「どうだか」
「ブルーノ!」
「人間は信用ならない」
「……悪かった」
「ところで! 人間君はまた迷子?」
「……はぐれた」
ああ、やっぱり予想通り。方向音痴なのかなあ。
「じゃあ、一緒に宿に泊まってこ! 明日にはこの町も出てくし」
「それは……」
「窓から入ってもらうことになるけどね、宿には」
「なら、いいか」
え、逆に文句言うべきとこじゃないの?
まあ、堂々と入ると料金がかかるとか、ケチな理由なんですけどね。
今の状況では、少しでお金をためておきたい。
「一日だけ、世話になる」
「旅もついてきなよ」
「でも、騒ぎに……」
「少しぐらい平気だよっ、私達と一緒に遊ぼう!」
私が目を輝かせて人間君に言うと、人間君は苦笑いした。
「しかたがないな……少しだけだぞ、少し」
「やったあ」
「クリス達は、早く獣人の国へ帰れ。このままだと危険な目に合う」
「大丈夫だよー、オレもいるしね?」
「ボクもー」
「子供じゃどうにもならないな」
「人間の言う通りだ、僕達は非力だ」
ブルーノは冷静に言った。そんなあ。
「まあ、とにかく今日はキノコ採りいっしょにしようよー? 私キノコ大好きなんだあ」
「……任せとけ。俺はキノコには詳しい」
「本当!?」
「山菜の知識もあるが」
「えっ、そうなの! 食べたいっ」
「あそこに生えているのが食べれるやつだ、ぎざぎざのやつ」
人間君に指さされるがままに、私は山菜を取っていく。
これを旅先で食べれば美味しいはずだ。
つゆにつけて……うんうん、よさげ!
「クリスちゃん、よだれよだれ……」
「はっ」
「山菜って苦そうだけど……」
「何言ってるのチェリーものによるし、苦いのもおいしいのよ」
「オレはあまり苦いの好きじゃないー」
まあ、子供はそうだろうなあ。
そうしていいるうちに、バスケットがキノコと山菜でいっぱいになった。
なので帰宅することにする。私達は普通に帰って、人間君は窓から木登りして入ってくる。順番にお風呂に入って、ご飯を皆で食べた。
ご飯は、私の分を分けてあげた。
「お布団はショート、一緒に寝てあげて」
「ちっちゃくないもん! ボク」
あ、やっぱり選ばれた理由わかっちゃったか。不満だよね。
「いちばんやさしいのはショートだから、お布団分けてあげれるよね?」
「……うんっ」
ああ、単純でかわいいなあ、ショートは。
尻尾ぶんぶん振ってるし。人間君には見えないんだろうけど。
ショートはにっこにこで枕を譲ってあげていた。
「人間君、どーぞっ」
「助かる、ショート」
「えへへ、ボク優しいから」
ショートを撫でる人間君には、耳が見えていないんだよなあ。
だから、なぜかフカフカするぐらいにしか思わないんだろうなあ。
「皆、すまないな」
「別に―山菜教えてくれたもん、オレはいいよ」
「僕はどうでもいい、人間なんか興味ない」
ブルーノはそう言って布団に入っていった。
なんだか人間君は寂しそう。
たぶん、仲良くしたいんだろうなあ……。
「まあ、何かあればオレに言ってよ」
「ありがとう、チェリー」
「間違ってもクリスちゃんに迷惑かけないでね?」
どすの利いた声でチェリー。え、どうしたの!?
私が驚いていると、チェリーはにっこり微笑んだ。
「クリスちゃんは気にしなくていいよー」
「そ、そう言われても」
「ね?」
「……はい」
なんかチェリーが怖いんだけど!?
あのほのぼのとしたチェリーはどこ行っちゃったの!?
人間君は気にしてない様子だけれど……。
こうして、私達と人間君は旅に出ることになった。




