8 海底ドーム
専用シャトルが海底付近に近づくと、窓の外にいくつかの巨大なドームが浮かび上がってきた。
ドーム自体は光を取り込むために半透明の素材でできており、様々な大きさのものが連結したり、単独で存在したりしている。中には古くなって支柱が剥き出しになっているものもあった。
そのうちの中規模なドームにシャトルが近づくと、海底に設置された大きな円形のゲートがゆっくりと開いた。シャトルは縦穴のトンネルを垂直に降下し、そこから横穴のトンネルを通って再び浮上した。すると、そこは大きなプール状の空間——海底港になっていた。
シャトルを降りると、制服姿の保安部隊員が彼らを出迎えた。ジスは貸し出されたUNIでIDと招待状を見せる。
「ようこそ!シンハ・ドームシティへ。歓迎いたします。長旅でお疲れのところ申し訳ありませんが、規則ですので再度メディカルチェックを受けていただきます。こちらへ」
「はー、またかよ勘弁してくれぇ!」ウェンがぼやきながらズボンをおろし始めた。
「ああ、お待ちを! いえいえいえ! お客様、服はそのままで結構ですので!」
保安部員が大慌てで裸になりかけたウェンに駆け寄った。それを見てリゲルが思わず大笑いした。
「もう、恥ずかしい人ね」
エイカが大きなため息をついた。
メディカルチェックを終えたジスたちは、だだっ広く薄暗いトンネルを抜けた。
すると、そこは高台になっており、見渡す限り明るく近代的な都市が広がっていた。
「こりゃすげーな! こんな街全体があのドームに収まっているのかよ」
ウェンが立ちすくんだ。
「ああ、ねぇ鳥もいるよ! 海の底なのに不思議」リゲルが指差して言った。
「ほんとね。空気も澄んでて、あのドームの天井がなければ野外と区別がつかないわね」
すぐ先に広い駐車場には、いかにも高級そうな黒い送迎車両が停まっており、スーツ姿の背の高い女性運転手が近づいてきた。
「ジセリオス・ラムダ様御一行ですね。招待客用のホテルまでお送りいたします。さあどうぞ」
送迎車はゆっくりと速度を上げ、都心部に立体的に敷かれたハイウェイに乗った。都市自体はそれほど大きくないものの、かなり近代的な建物が密集している。
車内はゆったりとした空間があり、備え付けのミニバーには各種アルコールと飲料水のボトルが用意されていた。
「お、ありがてぇ!」ウェンが早速ワインボトルに手を伸ばしかけたところ、エイカの鋭い視線を感じた。
「ええと、ワインはひとまずここに置いておいて……。ほら、飲料水のボトル。他に喉乾いたやついるか?」
ウェンはうまくはぐらかした。
「あれって、人工太陽だよね?」リゲルが空に浮かぶ小さな光を指さした。
「そうだよ、このドーム自体はそれほど深海にあるわけじゃないけど、流石に地上の光は弱くなるからね。しかも本物の太陽と同期しているから、地表で太陽が沈めばここも夜になるんだ」
運転手の女性が丁寧にリゲルに話してくれた。
「でも夜になったら、星が見えないから空は真っ暗になっちゃう?」
「フフフ、そう思うだろ? 今夜、空を見上げてみな。きっと、面白いものが見えるよ」
「ええー。楽しみ! ありがとう運転手さん」
リゲルはワクワクしながらまた空を見つめた。




