6 待合室
身体検査が終わり、地表までの専用シャトルの出発まで少し時間があった。
待合室はガランとしており、先に検査を終えたリゲルとウェンが、シルバーの硬いベンチに雑に並んで座っていた。ふたりともオービタルⅠのロゴが入った、着心地の良さそうな濃いブルーのスウェットに着替えている。
反対側の廊下の奥から、タオルで髪を拭きながら同じスウェットのエイカが歩いてきた。
「みんな、おそろいの服だね」リゲルが笑うと、エイカとウェンは苦笑いした。
「あなたたち早かったわね。検査もそうだったけど、ここも私たちだけなのね。静かで落ち着くから良いけど……キャッ! 冷たい! 何よ、この椅子は……」
金属の長椅子の座り心地があまりに不快で、エイカは飛び上がった。イラつきながら腕を組み、壁にもたれかかる。
「脱衣所のあの人、面白かったね。きっとウェンのことが大好きなんだよ」
リゲルがからかうように言うと、ウェンはまた苦笑いした。
「ウェンは誰にでも好かれるのよね?」エイカが目を細めて言った。
「ハハハ、笑える」
ウェンは大きく首をブンブンと振りながら言った。
「ドクターのところの人も、面白かった?」「いいえ、無人だったわよ」
「え? じゃなんで俺たちのとこだけあんな……うわ!」
ウェンが言いかけたその時、廊下の奥のドアが開いて、先程の大男と一緒にジスが検査室から出てきた。
「遅くなりました。アルタリだけ検査が厳しくなったようです。幸いこちらのミスター・フガジが話を通してくれたおかげで、何とかなりました」
「やあね、もう。大したことじゃないわよ。ちょっと融通が利かないのよね、まったく最近のAIちゃんたちは。あとで、しっかりお仕置きしちゃわないと。……あら? そちらのクールなレディは初めましてね。アタシは、ここの管理員ザイオン・フガジよ。よろしく。そこのハニーとぼうやは、2回目ね」
ザイオン・フガジはリゲルにウィンクし、ウェンには濃厚な投げキッスをした。
ウェンが眉間にシワを寄せて笑うのを見て、リゲルがエイカに「ほらね?」という顔をした。エイカもまた苦笑いした。
「どうも、私は医師のドクター・エイカ・サガラです。ところで、普段からここはこんな感じなの? エアドックを過ぎてからここまで私、誰とも出会わなかったけど」
「ええ、そうよ。このステーションの人間は私ひとりっきり。まぁ残りの3つのステーションもこんな感じなんだけど。仕事自体も殆どAIちゃんたちがやってるし、とっても素敵な仕事でしょ?」
ザイオンは大きな手で口元を隠しながら、フフフと上品に笑った。
「そうねぇ数年前はもう少し賑やかだったんだけど、近頃はヴァルナの社会情勢もちょっと怪しい感じになっちゃってて、惑星への来訪者もグーンと減っちゃったのよね。おそらくここも1年以内に完全無人のステーションになるんじゃないかしら。真面目な話、アタシも次の仕事探さないとね」
ザイオンは少し寂しそうに言った。
そうこうしている内に、シャトルの準備が整ったことを告げるアナウンスが流れた。
「ザイオン、まったね~!!」
リゲルが手を振ると、ザイオンは筋肉質の大きな肩をすくめて、巨大な手でハートマークを作って彼らを見送った。




