4 ヴァルナ・オービタルⅠ
ヴァスダヴァ・クタンバ星域
第二惑星ヴァルナ 軌道上
『ヴァルナ・オービタルⅠ』からⅣまでの4つの宇宙ステーションが、惑星付近の保安と防衛を担っている。訪問者は入国手続きに加え、このステーションで必ずボディチェックとメディカルチェックを受けなければならない。
イシュマール号の周囲には、現在3機のセキュリティ・ドローンが浮遊し、船外と船内を念入りにスキャンしていた。脅威度分析が終わるまで、ドッキングは許可されない。
「基本的に惑星内には持ち込み禁止だと考えて下さい」
ジスは操舵室からラウンジに降りる階段の途中で、UNIを確認しながら言った。
「第一惑星と比べて随分と違うわね?」
エイカはまだ凍ったアサイボールをフォークで少しずつほぐしながら言った。
「数年前に参加した医学シンポジウムでも、ヴァルナだけリモート参加だったわ。しかもかなりセキュアを重視した暗号化回線だったから、遅延は酷いし画質も音も悪くて、配布された資料の内容も、殆どが黒塗りのデータだったのよね」
「お前、アサイボールなんか一体どこで……まあいいや」
ウェンはコーヒーをズルズルすすりながらキッチンから出てきた。
「シンハ・ドームシティか。王国だってことしか知らねぇけど、海底都市って言う夢あふれる名前とは裏腹に、小規模ドームの貧困と老朽化問題とか噂にはなっているよな」
「王様がいるの?」まだ眠そうな声でリゲルが聞いた。
「ええ、王族の血筋を引く王女様がいらっしゃいます。ただし、今は王立国家ではないので、王族はシンボルとして、国政以外の役割を担うだけで、実情は立派な民主主義国家です」
ジスのUNIに通知が入った。外にいたセキュリティ・ドローンがようやく去っていったようだ。
「オービタルⅠ宇宙ステーションとドッキング可能になりましたので、皆さん下船の準備を」
イシュマール号はゆっくりとオービタルⅠに近づいていく。やがてドッキングをサポートするアームが船体を捕らえ、最適な位置に角度が調整された。見事にエアロックがポートに接続される。




