3 アヤ、再び
リゲルが自分の寝室に入ると、ネオ・トンデムン・モールでウェンに射的で当ててもらった大きなクマのぬいぐるみが、ベッドの真ん中に堂々と居座っていた。
「ただいま……」
そっとクマさんを隣にずらして、ベッドに仰向けに寝転がった。今日はお昼過ぎまでずっと寝ていて、その後も医療室で長い検査を受けていたため、まだ全然眠くなかった。
ゲームの続きでもしようかとUNIに手を伸ばした、そのとき——
「こんばんは、リゲル」
目の前にあのときの少女が突然現れた。
「うわっー、出た!!」リゲルは驚いてベッドから転がり落ちそうになり、慌ててバランスを取ると、大きなクマさんの後ろに隠れて顔をうずめた。
「ごめんなさい。違うの、違うの、私はお化けとか幻覚とかじゃないから。これは私のオプト……特殊能力でね。お願い……出てきて」
アヤは怯えた子供をこれ以上怖がらせないように、できるだけ声を落として優しく話した。
リゲルは恐る恐る、クマさんの後ろから顔を覗かせた。
「ふー……。まぁ、そうなるわよね」アヤは小さく息を吐いて、改めて微笑んだ。
「あのね、もう一度ちゃんと自己紹介するわね。私はアヤ・ヒビノ・ファーガソン。あなたと同じ、リローデットなの」
リゲルはまだ半分隠れたまま、じっとアヤを見つめていた。
「私は……どう言ったらいいかなぁ。直接会ったことあるリローデットに、自分の姿を見せることができる特殊な能力があるの」
アヤが丁寧に説明を始めると、リゲルはようやくゆっくりとクマさんの後ろから出てきた。
「え? 直接僕と会ったって、それいつのこと?」
「実はね、あなたが最初に捕まっていたラボに、私も居たの。と言っても、あなたはずっと眠らされてたから、きっと覚えてないわね……」
リゲルはようやく落ち着きを取り戻し、小さく頷いた。
「ジスからその話は聞いたけど、目が覚めたときはアル・サフィア孤児院の診療室だったんだ」
「そうなのね。私はあなたが運ばれてきた頃にリローデットとして目覚めたんだけど、この少女の記憶に全くアクセスできないのよね。まあ、それは今はいいか。とにかく、あまり長くは話していられないの」
アヤの姿が徐々に薄くなり始めた。
「ねぇ、大丈夫?」
「ええ。ありがとう、平気よ。ただ、お願いがあるの。ラボで調べたとき、少女の名前〈アヤ・ヒビノ・ファーガソン〉しかわからなかったの。だから……調べてほしいのよ。……まく……かに話して……に」
アヤの言葉は途切れ途切れになり、やがて姿が完全に消えてしまった。
「そんな……」リゲルは大きく肩を落とした。
(どうしたらいいんだろう……なんとかして彼女のことを助けてあげたいけど、どうすれば……)
考えているうちに、だんだん瞼が重くなってきた。リゲルはベッドに横になり、大きなクマのぬいぐるみをギュッと抱きしめて、静かに目を閉じた。




