2 招待状
リゲルは髪の毛を引き抜かれた部分を擦りながら、医療室からラウンジに降りてきた。
「おつかれ!」
ウェンが明るく声をかけた。
「やっと終わったな! ん? どうした? ま、まさか、エイカに頭を殴られたのか? あいつ、リギーにまで手を……あイタッ!」
後ろから突然現れたエイカが、ウェンの頭を軽く叩いた。
「私がリゲルを殴るわけ無いでしょ! DNA検査のために髪の毛を一本もらっただけよ」
「それでどうでした?」ジスが尋ねると、エイカは少し表情を緩めて答えた。
「まだ一部は分析中だけど、今のところ数値に異常は見られないわ。あなたはすこぶる健康体よ」
エイカはリゲルに向かって言った。
「でも凄いわね。BARの値が……ベネオンの吸着率のことだけど、これが30%を超えているのよ。リローデットの中でもかなり高い数値よ。驚いたから3度もチェックし直したわ。ウェンの火傷の回復がやたら早い理由はこれね」
エイカがウェンの右手をぐいっと持ち上げた。
「どういう意味?」
リゲルが首を傾げると、エイカは説明した。
「ベネオンには、人間の治癒能力を活性化する働きもあるの。つまり、怪我や病気になってもベネオンが近く大量にあると、早く治るのよ」
それを聞いたリゲルは不思議そうに自分の体を見回した。「だから……僕の病気も……」
「え? なにか言った?」
「ううん、別に。なんでもない」リゲルは誤魔化すように笑った。
「おお? もうこんな夜中なのか? 宇宙にいると時間の感覚が変になるな」
ウェンがポケットからUNIを取り出しながら言った。そのタイミングでジスが切り出した。
「今後の予定なんですが、テラへのゲートはしばらく通行禁止状態らしいので、少し寄り道して『ヴァスダヴァ・クタンバ』に行きたいと思っています」
「『プラカーシャ』? 大きな都市が沢山ある惑星よね。人口も多いし」
エイカが反応すると、ジスは首を振った。
「いいえ、『第二惑星ヴァルナ』の方です。プリヤンカー・シンハラージャ王女に生誕記念祝賀パーティに招かれました」
「ヴァルナってあの、海底都市のか? しかも王女様と知り合いなのかお前。はー。たまげたぜ」
ウェンが目を丸くした。
「こんなときにパーティーなんかに参加しても大丈夫なの?」エイカが心配そうに聞いた。
「ヴァルナのドームシティの中でもパーティーが開催される『シンハ・ドームシティ』はかなりセキュリティの厳しいところですから、寧ろ安全だと言えます」
「でも、俺達も参加していいのか?」
「そうよ、王室のイベントでしょう? 正装する必要があるはずよね? 私たちはドレスもスーツも持ってないわよ」
ジスは穏やかに微笑んだ。
「そのあたりは問題ありません。全てあちらで用意してくれます。惑星ヴァルナはCUBEから少し離れているので、ゲートを越えてから約10時間後に到着となります。というわけで、皆さん、それまでよく休んでくださいね。お休みなさい」




