32 ノイズ
「HIMoD (ハイモッド) についてどのくらい知っていますか?」
ジスはこれまで見せたことのない厳しい表情で話した。
「500年前のマシン戦争のことだよな?」ウェンが答えると、オカンポ隊長が続けた。「確か、AIが暴走して人類に対して宣戦布告したんですよね? それが今回の事件と関係あるのですか?」
「私が昨晩感じた胸騒ぎの原因は、ある種の電磁信号です。ただこれは一般的にはただの干渉ノイズに見えます。しかし、複雑ですが特定のパターンがあり、それを発する唯一の存在が──」
「HIMoD、なのね……つまりそれは、彼女が、カリ・トンプソンがそうだと」
エイカは全貌を理解したようだった。
「そんなことはありえません。HIMoDはCUBEが干渉して全滅したはずです」オカンポは半ば呆れ顔になったが、ふとアミタとの通話のことを思い出し、表情が変わった。
「そうだ。あの時、アミタはノイズがどうのって、そう言って通信が切れたんでした。まさか」
「おいちょっと待て、ってことはリゲルたちの近くにヤツが居たってことだろ?」
「ねえちょっと、落ち着いて。オカンポ隊長、先ほど名前の上がっていたカリ・トンプソンのパートナー。彼を拘束しているのよね? 尋問は済んでいるの?」
「いいえ、まだです」
「だったらまずは尋問をして情報を集めましょう。そもそもあの場所にビカシュ王子がいた理由もはっきりさせないと。それに、カリ・トンプソンに化けているHIMoDの目的も探らなきゃ。この事件は謎が多すぎるわ。さあ、みんな気を引き締めていきましょう!」
エイカの圧倒的な態度に全員が沈黙した。
「……え? ちょっとなによ。なんで黙るのよ。私なんか変なこと言った?」
「ドクターには、まだまだ驚かされますね」ジスが笑った。
「典型的なボスザルタイプってやつだ」
「なんですって?」エイカがウェンに握りこぶしを構えた。
皆がエイカの態度のでかさに呆れる中、ひとりだけ違う人物がいた。「ああ、素敵です! これぞ素晴らしいリーダーシップです! 私も見習わないと。それでは早速尋問の準備を始めます」
マユミ・オカンポはうっとりした目で彼女を見つめてそう言うと、急ぎ足でUNIを片手に監視室を出ていった。




