28 胸騒ぎ
シンハラージャ宮殿
2階 保安部署 監視室
彼らが全員部屋に入ると、オカンポ隊長は端末に座る部下に席を外すように言った。
「ジス、たぶんあなたが直接操作したほうが早いと思うから、お願いします」
彼女がそう言うと、ジスはすぐさま監視カメラ映像にアクセスした。
「これが部屋の前の廊下の映像ですね。事件があったと思われる時間帯まで遡ってみましょう」
映像が早戻しになって、複数の人間が出入りしていた様子が映された。
「おや? タイムコードが合いませんね。削除されたフレームがあります。ここと、ここですね」
ジスがタイムラインを指さした。
「それよりも被害者が映ってねぇぞ」ウェンが画面を覗き込んだ。
「ホントだわ。最初の……これは誰かしら。この男性が部屋に入るわよね、そして数分後。部屋を出て、そのあとすぐ、彼がビカシュ王子よね?」
「ええ、そうです。今AIに消されたフレームを復元させていますが、少し時間がかかりそうです」
ジスが答えると、オカンポ隊長が続けた。
「その最初の男性については身元がすぐに判明しました。名前はリヒター・ヤンセン、年齢は38歳で被害者カリ・トンプソンのパートナーです。先ほどホールをうろついていたのを確保しました」
「あ、そいつさっきホールに居たやつだ。ふたりとも招待客なのか?」
ウェンがオカンポ隊長に言った。「いいえ、どちらも招待者リストに有りませんから、不法侵入ですね」
「実は私はこの被害者に見覚えがあるのですが」
ジスはそう言うと自分のUNIを取り出し、昨晩のオーシャンビュー・ホテルの屋上での監視カメラから再現された映像を画面に表示した。
「これが、カリ・トンプソンなの? 昨日私たちの前を通り過ぎた女性よね? ジスは何故この映像を」
エイカが不思議そうに尋ねた。
「皆さんには話していませんでしたが、昨晩私は妙なノイズを受信し、胸騒ぎを覚えたのです」
「アルタリの胸騒ぎは無視できないわ」エイカが言った。
「そうなのか?」ウェンがエイカを見ると、彼女は深く頷いた。
「今から私は突拍子もない『仮説』をお話しますが、決してこのことは内密に。この『仮説』が正しければ、これはただの『殺人事件どころの騒ぎ』ではなくなりますから」
ジスはそう言って、一呼吸し、部屋にいる全員の顔を見た。




