23 地下2
アミタとリゲルが隠れた部屋は扉がまだロックされたままだった。
扉に付いている小窓から見る限り、外にはもう誰もいない様子だった。
「あなた、見たことがない顔だわ。ママの友達じゃないわよね? こんなところで何してたわけ?」
アミタはカリを見て不審そうな顔でそう言った。
「ええ、このパーティーは初めて。とても広い宮殿だから、お手洗いを探していて道に迷ってしまったのよ」
カリは顔に少しだけ笑みを浮かべながら、その表情を維持したまま用意されたセリフのように言った。
「ふーん、怪しいけどまあ今はいいわ。あなたUNIは持っているわよね? 私たちのはうまく繋がらないの。あなたのもそう?」
カリはふと顔を上げ、何かを考えたような顔をしてから答えた。
「わからないわ。どこかで失くしたみたい」
「でも、一度は繋がったんだから、もう少し待っていれば──」
「そうだ! 思い出したわ。こういう倉庫って必ず、換気用のダクトがあるのよ」
アミタがまた話の途中で割り込んだが、リゲルはもう慣れてしまった。
「たしか、こういうところに……ほら、アンタもぼうっとしてないで探しなさいよ」
そう言ってアミタはリゲルの背中を押した。
「あれじゃないかしら」カリがそう言って指さす方向には直径1mほどの四角いダクトがあった。
「やったわ! ほら見なさい。けど、あんな高いところどうやって登れば──」
「私がふたりのどちらかを肩車すれば、あそこまで届くんじゃないかしら」
今度はカリがアミタが話すのを遮ったので、リゲルは苦笑いした。
「な、なに笑ってるのよ。でも、それは名案ね! カリ、手伝って」
アミタがそう言うと、カリはダクトの真下にある棚の前で中腰になった。
彼女はカリに近づくも自分がスカート姿なのに気がついた。
「しかたない、リゲル。あなたにお願いするわ」
「え? うん、わかった」
リゲルはカリに肩車をしてもらって、何とか棚の上に登ることができた。
「カリ、あなたってそんな細い体なのにとても力持ちなのね!」
アミタがカリを驚いた目で見た。
「見た目で判断しちゃダメ、ってこと」
彼女はフフフと笑ってアミタに言った。
リゲルはダクトのカバーを両手で掴んで外そうとしたがびくともしない。
「これ、ネジが錆びついてる……けど」
リゲルはそのネジが外れたらいいのに、と考えた瞬間、ものすごい勢いでその錆びたネジが吹き飛んで、ダクトカバーがバタンと手前に開いた。
「え?」
リゲルは自分が無意識に力を使った事に驚いた。
「なにまたぼうっとしてんのよ! はやく中に入りなさい」
アミタが下で叫んだ。
「もう、人使い荒いんだから。でも、真っ暗だし。どうしよう。」
リゲルは手のひらを前にだしてうーんと唸ってみたものの
「ひ、光よ出ろっ!……」思いのほか大きな声を出してしまった。
しかし……なにも起こらなかった。
「なーにひとりで馬鹿なことしてるのよ」
「うわ!!……イテッ」
いきなり真後ろからアミタが声をかけたのでリゲルは驚いて低いダクトの天井で頭を打ってしまった。「え?どうやって」とリゲル。
「私もカリに肩車してもらったのよ。あなたが横にいたらスカートまくりあげられないでしょ?」
そういって、アミタはUNIについているフラッシュライトをオンにした。
ふたりはゆっくりと奥へと進んでいく。
「どこまで続いてるんだろう」
「わからないわ。そもそもここは宮殿内の地図に載っていないもの」
しばらく進むと薄っすらと光が見えて、水の音が聴こえ始めた。
「あそこから出られそうじゃない?」
アミタが指さした場所はダクトカバーが外れていて、昇降用の手すりがついていた。
「僕が先に見てくるね」
リゲルはそう言って、慎重に手すりを掴みゆっくりと床に降りた。
そこは裏通路のような場所だった。通路の先が明るくなっていた。
直ぐ後をアミタがヒールの先を足場に引っ掛け、降りてきた。
彼女は彼を押しのけて、さらに先に進んでいく。
「まあ! 古いポート(港)だわ。宮殿のこんな場所にあったなんて」
通路の先はとても広い空間になっていて、部屋の真ん中あたりにフェンスが張られていて、その奥は潜水艇が出入りするための大きなプールになっていた。




