21 不通
同日
15時10分
〈ロックダウンが開始されました。速やかにスタッフの指示に従って行動して下さい〉
宮殿内に音声メッセージと警告音が交互に再生され、あたりは騒然としていた。正面ゲートはロックされ、宮殿をぐるっと囲むように地面から剛鉄の壁が高くせり上がった状態になった。
「皆さん、落ち着いて下さい。状況がはっきりするまで、その場にお座り下さい」
中央ホールにいたプリヤ王女は冷静な態度で招待客に呼びかけた。
続いてすぐにオカンポ隊長が現れ、プリヤ王女に話しかけた。
「セキュリティ侵害によるロックダウンです。今、AIが宮殿内のサーバーを一時的に自閉モードに切り替え、侵害された場所のスキャンを行っています」
「それはいいわ、この警告音とあのメッセージをなんとか止められないかしら。それから、ビカシュもアミタも連絡がつかないの? 少し心配になってきたわ」
プリヤ王女はなんとか笑顔を見せているものの、その目には不安が宿っていた。
「了解しました、お任せ下さい。AIによるスキャンが終われば、宮殿内に限りネットワークは復帰するはずです」
オカンポ隊長がそういい終わらないうちに警告音と音声メッセージは止まり、招待客らの不安な声が一層目立つようになった。
プリヤ王女のUNIに着信が入る。「アミタ! 良かった……無事なのね? 一体どこにいるの?」
「ママ! 今、宮殿の地下にいるの。パパの私兵たちがいたから倉庫に隠れたんだけど、この倉庫もロックされちゃったみたい。それから、ほら、リゲルもここにいるわ」
アミタの隣のリゲルが笑顔で手を振った。
「え? 一体どういうことなの? じゃあ、ビカシュもそこにいるの?」
「ううん、パパは居ないみたい。ここからじゃよくわからないけど……ねえ、さっきからなにか変なノイズが乗ってるんだけど、ママのUNIも……」
そう言って通話が終了した。
「アミタ?! アミタ!! そんな、再接続できないわ、どうなっているの?」
王女の目は涙で滲んでいた。
「なんですって? 了解。プリヤンカー王女、ビカシュ王子を発見しました。ただ、その……」
オカンポ隊長はうまく言葉が出てこなかった。
「夫は無事なの?!」
その王女の叫び声に辺りは静まり返った。
「はい。ビカシュ王子の、お体はご無事です。詳しくお話いたしますので、こちらへ」
プリヤ王女はオカンポ隊長の腕に捕まり、ヨロヨロとホールを出ていった。
「もう! なんで? また繋がらないのよ! このポンコツ!」
アミタはUNIを叩いている。
「ねぇ、それ僕のUNIなんだけど……」
相変わらずリゲルのことは目に入っていない。
リゲルは部屋にあるコンテナの上蓋をそっと開けて中を確かめた。
「これ、備蓄用の食料みたい。沢山の飲料水もある。これは、薬かな」
そのとき部屋の奥で何かが動いた。
「だれかいるの?」
リゲルは怖かったが精一杯の大声で言った。
「こんにちは。驚かしてごめんなさいね」
声の主はゆっくりと立ち上がる。それは背の高い黒人女性だった。
「あなたは、だれ?」アミタがその女性に尋ねた。
「私の名前は、カリ・トンプソン」




