19 挨拶
14時30分
中央ホール大扉前のテラス
王女の短いスピーチが終わると、弦楽カルテットにホーンセクションが加わり、賑やかで明るい音楽を奏で始めた。ホール入口から続くテラスのテーブルには、色とりどりのフルーツやケーキが並べられている。
ジスと合流したリゲルたちは王女に挨拶をしようとするも、プリヤ王女は沢山の来客たちに囲まれていた。
「なんか、すごい人だかりだね」
今日は濃い茶色の子供用のスーツに赤の蝶ネクタイ姿のリゲルが、ちょっと疲れた顔で言った。
「本当だわ、彼女すごい人気ね。私たちなんだか場違いな気分ね」
紺色のつややかな生地に細かな真珠が散りばめられたゴージャスなドレスを身にまとったエイカだったが、人の多さに気後れしていた。
「なあこのケーキめちゃくちゃ美味いぞ! ほら、リギーの分を持ってきてやった」
せっかくのタキシード姿が台無しになるほど、沢山のケーキを皿いっぱいに盛ったウェンがリゲルに言った。
「ええ? さっきウェンもお昼たくさん食べたのにまだ食べるの?」
「この人の胃袋はブラックホールなのよ」エイカの一言にウェンはガハハと笑った。
「ジセリオス!」
プリヤ王女は人混みを丁寧にかき分けて、少し離れたジスたちに手を振った。
「プリヤンカー・シンハラージャ王女、おめでとうございます!」
リゲルが真っ先に挨拶をした。
「あら、初めまして、あなたはリゲルね。そして、その素敵なお二人はカーマインとエイカね。パーティーはいかがかしら」ウェンとエイカが一礼した。
「そんな固くならないで。ジセリオスとは大昔からの知り合いなんだから」
プリヤ王女は満面の笑みを浮かべて言った。
「ジスとはそんな古いお知り合いなんですか?」エイカが驚いて訊いた。
「ええ、大学が地球だったのよ。彼とはその時からね」
「おお、じゃあジスとは同じ大学の後輩とか? だったんですか?」
ウェンがぎこちない敬語で訊いた。
「いいえ、まさか! 彼は大学の教授だったのよ」
「マジか! え? ジスってそんな歳だったのか?」ウェンは目を丸くした。
「ウェン……いつも通りとても失礼な人ですね、あなたは」
ジスが目を細めると、ウェンはまたガハハと笑った。
「それはそうと、プリヤ王女、ビカシュがどこにいるかご存知ですか? ずっと探しているんですが見当たらなくて」
そう言われてプリヤ王女は周りを見渡した。
「私も見てないわね。ずっとバタバタしてたから、見かけたら彼に伝えるわね。そういえばアミタもどこ行ったのかしら。ごめんなさい、ちょっとあの人達を待たせているからそろそろ行くわね。みなさん、パーティーを楽しんでね」
そう言って、プリヤ王女はまた人混みの中に消えていった。
「ねえ、ウェン。僕もちょっと、あのお手洗いに……」
リゲルがウェンに小声で言った。
「ん? ああ、トイレな!」それをウェンが大声で言った。
「もう、恥ずかしい」
エイカが顔に手を当てた。
「リギー、一緒に行ったほうがいいか?」
「ええ? それくらい、ひとりで行けるよ!」
「おい! リギー、待てって」
怒ったリゲルはひとりで行ってしまった。




