16 謎の女性
ジスは昨日感じた胸騒ぎが、ただの思い過ごしであると願いつつ、ホテルのオーナーに昨晩の屋上の様子が映った監視映像へのアクセス許可を貰った。
自室に戻り、目を閉じてUNIにダウンロードされたファイルに触れると、ジスの脳内で複数のカメラアングルから撮影された監視カメラの映像が同期され、ひとつの3D映像に変換されていく。
カメラの死角になっていた部分と足りない解像度は、昨晩ジスが実際に見た記憶から鮮明に補間されていった。
「これは私たちがエレベーターの通路から出て、リゲル達が空を見上げてるところですね……そして、そう、この緑のカクテルドレスの女性!」
ジスがそう言うと、モザイク状の彼女の輪郭が少しはっきりしたものの、どのカメラにも顔が映っていなかった。
「確か、長身で黒い肌の30代の女性だった……気がしますが」
景色は更に鮮明化して補完され、生成された完全な写実映像に切り替わっていく。
ジスは慎重に彼女の後を追った。
「まだ、顔は見えないですね……おや?私以外にも彼女をつけている人がいるようですね」
彼女と一定の距離を置いて、少しずつ近づく30代の長身で痩せ型の白人男性がいた。彼は眼鏡をかけていて、時々UNI取り出しては何かを確認していた。ジスが近づくとその画面がはっきりと表示された。
「これは使えますね。なるほど追跡アプリですか。ここからは簡単にトレースできます」
そうジスが呟く《つぶや》と一瞬で彼の個人情報が顔写真と共に表示された。
「すみません! ジセリオス・ラムダ様?!」
突然の〈外からの声〉にジスは驚いて目を開けた。
眼の前にホテルのスタッフが立っていた。
「申し訳ありません、ノックをしてもお返事がなかったものですから」
ホテルスタッフは何度も頭を下げた。
「いいえ、少し考え事をしていて気が付きませんでした。何事ですか?」
「シンハラージャ宮殿の保安部隊長のマユミ・オカンポ隊長が、至急お会いになりたいそうです」
「わかりました。すぐ向かいます」
ジスは作業途中のデータをUNIにセーブしてから、タクシーに乗り宮殿に向かった。




