15 公園で
「そういうわけで、このドームシティは3つの主要ドームの中でも一番古いのさ。とまぁ、こんな感じかね。流石に生誕記念当日ってのもあって、街はパレードで交通規制がかかってるから、全部は案内出来ずに悪かったねぇ」
運転手のファニータ・ガルザは、街外れの見晴らしの良い公園に車を停めて、高台にあるベンチに案内した。
「そんな事ないよ。勉強になったし、お店のカレーもチャパティも美味しかった」
リゲルが笑顔で言った。
「ファニータ、ありがとう。私もドームシティ自体が初めてだったから、いろいろ聞かせてもらって印象が変わったわ。それにこんなにゆっくりと過ごしたのは久しぶりよね? ウェン」
珍しくエイカは上機嫌だった。
「だな。しかしファニータ、ここに住んで長いのか? 随分と詳しいよな」
ウェンが訊くと、ファニータは照れくさそうに答えた。
「妻と一緒になってからだから、もうかれこれ30年かねぇ。実をいうと、あの宮殿で式を挙げたんだ。あの頃はプリヤ王女のご両親、つまりヴィクラム王とキミコ王妃の時代だったけどね」
ファニータは結婚指輪を見せてくれた。
「フフフ、素敵な指輪ね。ところで王妃って、名前からするともしかして日本ルーツの方なのかしら?」
エイカが興味深そうに尋ねた。
「ああ、確かにそうだったね。そうよ、しかもドクター・サガラ、あなたと同じで地球出身だったよ。思い出したわ。私の結婚式の時に珍しいキモノというドレスを着てたのよ。なんだか不思議な偶然だねぇ」
「ってことは、プリヤンカー王女って混血なのか。王族でもそういうアレは、いいのか?」
ウェンがデリカシーのない言い方をしたので、エイカが顔をしかめた。
「まあね、昔は血統っていうのかい?ああいうのに厳しかったらしいから、キミコ王妃が嫁いだときも一悶着あったらしいね。さすがの私でもそのあたりのことは噂になったってことぐらいしか知らないけど……おっと、そろそろ時間だね。ホテルまで送るよ!」
彼らはファニータの運転する車に乗り込んだ。
リゲルは窓の外の景色を見つめながら、今日はあまり家族のことを思い出さなかったこと、ウェンとエイカがずっと一緒だったこと、こんな楽しい旅行は生まれて初めてだったことを考えていた。
もしかしたらもう、寂しくなったりしても、父さんと母さんに会えなくてもウェンとエイカとジスがいれば平気かもしれない。そう思いながら心地よく揺れる柔らかなシートに深くもたれて、リゲルはそっと目を閉じた。




