13 朝
ドームシティ北部に位置するシンハラージャ宮殿は、インドの歴史的建造物とモダンでシャープなデザインが美しく調和していた。それは、オーシャンビュー・ホテルの窓からも、黄金色に輝く宮殿の姿をはっきりと確認できるほどだった。
リゲルは彼の体にはまだ大きすぎるサイズのベッドの真ん中で、体を丸めてエビのような格好でぐっすりと寝息を立てていた。しかし、窓から差し込む光が顔を優しく照らしたので、シーツを顔まで上げてみたものの、すっかり目が覚めてしまった。
体を起こし、両手で大きく背伸びをしてから、ゆっくりと両足を床に付けた。床のカーペットは柔らかくてくすぐったい。
「エヘヘ、フワフワだ」
リゲルは嬉しくなってその場で何度も足踏みをした。
バルコニーに出ると、賑やかな街の雑踏が目に入った。
今日はシンハラージャ王女生誕記念日ということもあり、朝からドームシティ全体にわたって活気にあふれていた。
リゲルはまるでこの国を治める若き王子になった気分で腕を腰に当て、胸を張った。
「おはよう! わが国民よ! 面を上げぇい! やや、くるしゅうないぞ!」
ひとり舞台を披露しはじめた。
「これはリゲル王子、お目覚めですかな?」ジスが声をかけた。
「びっくりした! え? いつからそこに居たの? やだなあ、もう恥ずかしい」
リゲルが赤面した。
「ついさっきですよ。ささ、朝食の準備が整いましたぞ、閣下!」
そう言って深々とお辞儀をしてみせた。リゲルは照れながら部屋に戻っていった。
ジスとリゲルはゆったりとした私服に着替えて1階の食堂に移動すると、ウェンとエイカはもうテーブルに着いていた。リゲルは大きなガラスのコップにたっぷりの牛乳を注ぎ、卵が入ったサンドイッチと一緒にトレーにのせて、こぼさないように慎重にテーブルに向かった。
「お、王子がお見えだぞ!」ウェンがからかうように言った。
「んもう、ウェンまでからかうんだから!」
リゲルがしかめっ面をした。
「おはよう、二人とも。よく眠れた?」エイカが微笑んだ。
「おはようございます。リゲルはよく眠ってましたね。私はあまり眠りませんが、久しぶりにゆっくり過ごせました」
「ホテル内だけじゃなくて、ドームシティ全体がここまで環境が快適に制御されているなんて思いもしなかったわ。ずっとここに住みたくなるわね」エイカが紅茶の香りを嗅ぎながら言った。
「空気や水がきれいなのは、燃料の使用を禁じているのが大きいでしょうね」
「そういや部屋の暖炉もロウソクも全部が偽物だったのは、そういうことか」
ウェンがいつものようにコーヒーをズルズルと音を立てて飲みながら言った。
「パーティの開始は午後なので、それまでは自由時間ですが、どうしますか? 先程、昨日の送迎車の運転手からメッセージが届き、よければ街を案内するそうですよ?」
ジスがUNIを取り出して言った。
「やったー。ねぇそうしよう?」リゲルが〈お願い〉という顔をして言った。
ウェンはエイカに目で合図する。
「いいわね。一緒に行きましょう」エイカがそう言うと、リゲルの顔が溢れんばかりの笑顔になった。
「では三人で楽しんできて下さい。私は調べたいことがあるので、後ほどシンハラージャ宮殿で会いましょう」




