剣閃
目が覚めると、そこは瓦礫の上。
江戸城は崩れ落ち、紅蓮と闇夜の支配する世界のみがそこにはあった。
「終わったのか……」
流徹は多くの犠牲と共に掴み取った未来を心で掴み、その場に立ち尽くす。
彼が帰ろうとしたところ、どこからともなく声がした。
「……逃さんぞ。お前だけは……」
瓦礫の中から再び顔をのぞかせた天草四郎。
「貴様……まだやるってのか!!」
流徹はボロボロの刀を構える。
「……救世主の代替物、救済の徒とされてきた私にも夢ができたのだ……」
「一対一での真剣勝負を所望する」
その真剣な眼差しは武士のものだ。
「……ああ」
流徹は応える。
「……天草四郎時貞」
「充盈流徹……いざ、尋常に……押して参る」
共に名乗り合い、刀を構える。
一進一退の攻防を繰り広げ、崩落した江戸城の中で火花が散る。
「名刀胡蝶……咲け!」
天草四郎は掌で自らの刀をなぞると、刀が桃色に輝く。
そして、大きく跳躍した。
「切支丹剣術……薔薇十文字」
空中から流徹を捉え、四つの分身を放つ。
それは流徹の四方に発射された。
四方を取り囲まれた流徹は目の前から迫る天草四郎本体を迎え打つ。
だが……。
「がはっ!?」
流徹の右目が斬られた。
無明の世界へ誘われる。
何も見えない。
ひたすら身体が刻まれる感覚と、天草四郎の刀が空を切る音のみがある。
もはや勝負ではない。
だが、彼はこの剣の道の中で、一つの極致に辿り着いた。
それは空気を掴む道。
肉体に宿る目では無く、心の眼で相手を捉える。
即ち天眼通。
無明の中に視える敵が迫る。
呼吸を合わせ、刀を振るう。
「秘剣・天眼斬り」
その一太刀は、天草四郎の剣閃よりも速く、その肉体を切り裂いた。
天草四郎はその場に倒れ伏した。
彼の身体は光に包まれ、徐々に消滅していく。
「良い剣であった」
その光と共に、流徹は目の前が白に包まれた。




