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江戸城燃ゆ 下<急>

 周囲の空が黄金色に輝き、西洋の絵画のような世界へと誘われた。

 流徹(るてつ)は身構える。


 天草四郎は大薙刀、岩融(いわおとし)を作り出し、ぶん回す。

 流徹はそれを跳躍で避け、天草四郎へと刃を剥ける。

 だが、待っていたと言わんばかりに天草四郎は赤黒いオーラを左手に纏わせて掴みかかろうとする。

 しかし、それを完全に見切り避けた。


「忍法・傀儡繰(くぐつく)(いと)


 死した五月雨を操り、氷の刀を作り、襲い掛からせてきた。

 しかし、流徹は五月雨を一瞬のうちに斬り伏せた。

 その瞬間、伸びた天草四郎の髪が流徹を捕える。

 伴天連(ばてれん)忍法・髪切丸だ。

 その隙を更に狙わんとばかりに、天草四郎は次々攻撃を続ける。


富岳三十六景ふがくさんじゅうろっけい


 何処からともなく大波を発生させ、城もろとも飲み込んだ。


赤龍斬(せきりゅうざん)


 次に刀から龍の覇気が放たれる。

 そしてとどめの一撃と言わんばかりに雷撃を放った。


 満身創痍の流徹。

 だが、それでも目を開け、眼前の敵を見据え立ち上がる。


「ここからが本気だ」

「……深淵ノ門」


 周囲の空間が魔界へと変化していく。

 生身の肉体を徐々に紫色に焦がしていく。

 大きな火傷を負い、右手を失ったお町が駆け寄り、忍法でその術を防ぐ。


 だが、それだけでは終わらない。


「星幽界ノ門」


 血の流れた能面が出現し、その能面の目が開く。

 瞬間、強い引力が流徹達を吸い寄せる。

 お(まち)も周囲の何かに掴まった。

 由比(ゆい)五月雨(さみだれ)が最後の力を振り絞り、お町を掴んだ。


「貴様だけは……逃がさん!」

「やめろ、死ぬ気か!?」

「死なばもろとも!」


 流徹はお町に手を伸ばすも、既に遅かった。

 しかし、お町はその能面を忍者刀で切り裂いた。

 超重力で身体がバラバラになるのとほぼ同時に。


「……」


 流徹は唖然とした。

 天草四郎は言う。


「一対一だ……」


 流徹の無言の圧。

 天草四郎の髪が伸びる。

 流徹はその瞬間を逃さなかった。

 妖刀に妖気を込め、力強く振るう。

 髪が次々斬られ、力を失っていく。


「なにっ!?」


 そして、流徹が迫る。

 縮地で距離を取ろうとするも、もう遅かった。


 一撃目は花のように咲き乱れる斬撃。


 二撃目は鳥のように羽ばたく切り上げ。


 三撃目は風のように軽やかな回転斬り。


 四撃目は月のように美しい切り落とし。


「花・鳥・風・月!」


 だが、天草四郎の刀が最後の一撃を防ぐ。


 その時だった。

 (じん)の勾玉と(てい)の勾玉が合わさる。

 そして、その勾玉が猛烈な閃光を放ち出した。


「届け……届け!!」


 勾玉が砕ける勢いで刀を突き立てる。

 妖刀の中に自身の生命を注ぎ込む。



 やがて、周囲の音が消え、光が消え、全てが無となった世界へと誘われた。

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