第伍歌<急>
棋歩は作戦概要を伝える。
「あの江戸城を取り巻く魔界の炎はおおよそ二十七間。超えるには至難の技でしょう」
「また、おそらくだが、舞鶴姫の力でそのまま連れて行ってもらってもいい的になるだけです」
棋歩は大仰な仕草で平賀を指す。
「そこでですね。彼に新しいものを作ってもらいました」
平賀は腕を派手に動かしながら説明する。
「このたび……なぁーんと!」
「すっばらしい発明品の紹介の場にあたって……」
長くなりそうなので流徹が止めた。
「端的に説明せよ」
「おほん、この度発明したのは炉決筒なる代物です」
「私一人の力ではなく、火蜥蜴による火薬技術、土竜と人魚の技巧も借りましたがね」
筒状の巨大な物体がそこにはあった。
翼のようなものが映え、不格好ではあるものの、大きさと装飾は立派なものである。
「君達はこの中に入って江戸城に向かって飛ぶのです!」
その言葉に、一行は驚く。
「――飛ぶ!?」
流徹達は平賀の説明をしばらく聞いていた。
説明によると、この炉決筒に入り、炉決筒を打ち上げる。
そして江戸城に突入するという単純明快な作戦であった。
だが、流徹は気になる事があった。
「しかし、そんな勢いよく叩きつけられたら我々は……」
その質問に、平賀は自信満々に答える。
「着地は忍法でなんとかするという算段です」
「な、何も考えていねえ!」
行き当たりばったりな作戦に流徹は顎を外した。
一行は炉決筒の中に入り、発射を待つ。
「だがよぉ、俺様もこういうのは初めてでよぉ……」
菊三十兵衛は不安を吐露した。
だが、発射の衝撃で、その言葉の続きは紡げなくなった。
皆は歯を食いしばる。
圧倒的な重力が身体を押しつぶすのだ。
「飛んだ! 成功じゃ!」
平賀が子供のように大はしゃぎする。
他の皆は祈るようにその様子を見ていた。
何度か切り離しが行われながら、炎が噴射し続ける炉決筒。
だが、狙いが大きくずれていた。
「江戸城とは別方向ではないか!」
菊三十兵衛が慌てふためく。
「まかせて、ここからは荒っぽく行くよ!」
舞鶴姫がその翼で飛ぶ先を制御した。
そして、ある程度方向を制御すると、最後の切り離しが行われた。
それと同時に、舞鶴姫はその場を離れる。
「私ができるのはここまで! あとは健闘を祈るよ!」
徐々に江戸城が迫ってくる。
すると、炉決筒の外殻が割れ、一行が空中に投げ出された。
即座に流徹は皆を捕まえる。
「野衾の術!」
お町は皆を抱えて大きな布を開く。
落下速度を落とし、ゆっくりと降りていく。
次第に景色が歪み、邪悪な空気感に包まれる。
四方八方に妖怪がいるような、そんな気配だ。
一行は江戸城の中へ入りこむ。
決戦が始まる。




