第伍歌<破>
静まり返った町に朝が訪れる。
流徹はゆっくりと体を起こした。
そこに、ふらふらと町長がやってきた。
「う、うぐ……」
その言葉に、緊張が走る。
蜘蛛の生き残りかと警戒していると……。
「食べすぎた……」
一行は安堵のあまり崩れ落ちた。
妖怪は全て討伐され、町の生き残りは町長の家に集まった。
なんと、あの土竜、棋歩、人魚も集まり、大所帯となっていた。
そこには、初めて見る人影もあった。
背中に鶴の羽根を持った姫君のような姿の者。
「私は舞鶴姫。木行の一族です」
「この度はこの町を救っていただきありがとうございました。この御恩は今後、させていただきます」
「それでは、作戦会議に移りましょう」
棋歩が地図を広げて江戸入りの策を提案し始めた。
「我々は手先が器用な事が取り柄です。その時になったら呼んでください。ですが、かならず力は貸します」
土竜と人魚がそれぞれ地中、水中へと戻る。
「後は発明が得意な優秀な頭脳が居ればいいのだが……」
棋歩は唸りながらそう呟く。
流徹は薄っすらと嫌な予感を感じ取る。
「この、大天才、平賀源内を呼んだかね!」
色とりどりの爆発と共に出現したのは、白い装束に身を包み、色とりどりの化粧をした男性であった。
「…………」
一行は無言になる。
トゲイを除いて。
「すっげーなそれ、どうやってんだ!?」
「これ、関わるな! ろくなことにならんぞ!」
棋歩はその奇妙な出で立ちに困惑しながらも、興味を持つ。
「ふむ、天才であることは間違いなさそうだ。これならいけるやもしれぬ」
流徹達は作戦会議から離れ、岩場で瞑想をしていた。
「……剣というのは縁も繋ぎとめるものなのか……」
「縁の力か、侮りがたし……」
そう考えていると、平賀から声がかかる。
「おーい」
「今は瞑想中故、話しかけないでもらいたい」
「そうか、無視か。ならば肯定とみなす」
平賀の勝手な言葉に、流徹は立ち上がった。
「あのなぁ、俺はお前に構っている暇などないのだ!」
平賀が絡繰り仕掛けを作動させると、木々の隙間から無数の刀が音を越えた速度で飛んでくる。
一瞬の判断力でそれを回避した。
「なっ!?」
平賀は飄々とした態度でこう言った。
「これを全部避けてくださいな」
「そして、あの高速で動き回る的を斬ればこの鍛錬は終了です」
流徹が慌てて抗議するも、刀の飛び交う音で聴こえない。
「がっはっはっは。お似合いだぜ流徹」
「そうだな! たまにはいい修行ではないか。瞑想しているだけというのも退屈であろう」
「兄ちゃんにはこれくらいがちょうどいいぜ!」
菊三十兵衛、球磨、トゲイが外野から笑う。
「貴方がたもですよ」
平賀はそう言って、絡繰り仕掛けの腕でトゲイや菊三十兵衛、球磨をつまみ出す。
彼らも巻き込まれた。
「ふっざけんな! あんのやろう……すべて終わったらとっちめてやろう」
「賛成だ!」




