第参歌<急>
蛭子の圧倒的な渦潮攻撃により、一行はバラバラに吹き飛ばされ、全身が砕かれそうになっていた。
魔人の強力な妖術。
それは人間では遥か及ばない力であった。
それでも、流徹は立ち上がる。
つられて他の者も武器を構えた。
それぞれが攻撃を仕掛ける。
その中でも、介郎は果敢に攻撃に出た。
同じ槍使いとしてか、負けるわけにはいかないのだろう。
高速で薙ぎ払う三連撃を繰り出す。
「神速三段」
水中でも火花が散るほどの激しい激闘であった。
荒伐も続く。
荒伐は大きく跳躍し、上方から叩き割ろうと斧を振るう。
「薪割り大団円」
流徹、トゲイ、お町、菊三十兵衛も次々攻撃を繰り出す。
無傷ではあっても、何度も攻撃を浴びせるほかないと、流徹は攻撃を続ける。
その時、介郎がある事に気づく。
「……わずかに傷はついているでござる! だが……」
攻撃の後に蛭子に傷がついている事を伝える。
その傷はすぐに再生し、元の状態へと瞬時に戻っている。
「では……」
介郎は槍を再び構え直し、大きく跳躍する。
そして、龍の如く突進した。
「降竜」
菊三十兵衛が止める。
「無茶だ! おっさん!」
強力だが隙だらけの攻撃であった。
蛭子は笑みを浮かべる。
狙い通り、と。
蛭子の持つ大槍が介郎の胸を貫いた。
「おっさん……」
だが、介郎は首なしの黒馬を槍で切り裂いた。
「三国黒二世……」
蛭子の纏う覇気が変質した。
怒りを増長させたようなそれは、沈没船を圧のみで木っ端みじんに砕く。
球磨はようやくその正体を口にする。
「その不死身、三国黒二世、鹿角脇立兜、黒糸縅胴丸具足、蜻蛉切……やはり、本多忠勝なのだな」
介郎は近くにいた菊三十兵衛に言葉を紡ぐ。
「菊三十兵衛……」
「おい、まだ死ぬって決まったわけじゃねえだろ!」
「いいや、死ぬでござるよ。人はいつか死ぬのでござるよ。だからこそ、こうして戦っておるではないか」
介郎の言葉に、菊三十兵衛は悲しみを表情に出す。
「おい、おっさん!」
その時、介郎は何かを手渡す。
「菊三十兵衛……これを」
拳を開くと、そこには緑色に輝く勾玉が。
「勾玉はお主を選んだでござる。強くなったでござるな、菊三十兵衛」
菊三十兵衛は涙を呑んでそれを受け取った。
その瞬間、未練はすべて消えたと言わんばかりに、介郎は息を引き取った。




