第参歌<破>
沈没船の影から、一本の槍が突きだす。
船体を破壊しながら巨大な男が飛び出した。
大数珠と鹿角の兜を身に着け、水中を疾駆する首なし馬に跨る黒い鎧武者。
巨大な槍を構え、一行に向ける。
「貴様が充盈流徹か」
「ここが酒造蛭子の縄張りと知っての狼藉か?」
「我が海域を荒らすことなど、言語道断。立ち去るがよい!」
怒りをぶつける蛭子に、流徹は質問を投げかける。
「この海は魔人のものではない!」
蛭子は静かに頷く。
「そうか……所詮、下等動物には理解できぬというわけだな」
水中を舞うように泳ぎ、兜の中心に瞋と刻まれた勾玉がきらりと光る。
荒伐が先陣を切って斧を振るう。
だが、巨大な槍がその斧を弾く。
その後ろから介郎、球磨、菊三十兵衛が飛び出す。
刺突と斬撃が奏でられ、水中に衝撃が伝わる。
流徹が沈没船の柱を蹴り、背後から蛭子を斬る。
お町は水流の忍法を放ち、トゲイは下から蛭子を狙う。
だが、無傷であった。
「馬鹿な……妖刀の力をもってしても無傷だと!?」
「その程度か?」
「では、こちらからも行くぞ」
首なし馬が疾駆し、曲線を描いて果敢に攻めてくる。
球磨がその攻撃を全て受け止める。
「あの頑強さにあの敏捷さ、どうなっている!」
流徹は妖力を刀に込めて再び刀を振るう。
だが、蛭子には傷一つつかない。
蛭子は怪しい笑みを浮かべて、槍を振り回す。
「つまらぬ、くだらぬ、これで終わりだ……」
「富岳三十六景」
槍の回転により、水中に巨大な渦が現れる。
それは、周囲の沈没船や一行もろとも巻き込んで、圧倒的な破壊をもたらし始めた。




