第参歌<序>
流徹は海底で目が覚める。
確認するところ、全員無事なようだ。
すると、人の顔を持つ魚が泳いできた。
「目が覚めたようね」
流徹は妖怪かと身構えたが、その言葉に、安心を感じた。
恐らく彼女達が助けてくれたのだと考える。
「助けてくれたのか……」
人魚は小さく頷く。
「我々は人魚。水行の一族」
一行はそれぞれ目を覚まし、水中に立ち上がる。
「どうして俺達は水中でこうして動けるのだ?」
流徹は一番気になる疑問を投げかける。
「これを使ったの」
そう言って、人魚はヒレを器用に使い、丸薬を取り出す。
「これは人魚の一族に伝わる丸薬よ」
「少しの間だけ水中で呼吸ができるようになるの」
球磨は気味悪がって流徹に聞く。
「胡乱な連中を信じるというのか」
「是非もなし」
その返答に、球磨はむうと唸る。
お町が笑顔で言う。
「アタシは助けてくれたなら味方だと思うよ~」
一息つくと、人魚は話を切り出す。
「助けてほしいのです」
「この一帯の海は魔人酒造蛭子によって支配されていて、狩りもできなくなっているのです」
「魔人だと!?」
流徹が立ち上がる。
「聞いたか皆の衆……」
流徹はその魔人という言葉だけで彼女のヒレをとる。
「安心せい。我々は魔人を倒しに来た者だ」
その姿に、荒伐は頷く。
「流徹、気に入ったぜ」
「コイツはなかなかにいい肝を持っている。協力は惜しまん。海の事なら俺に任せろ」
荒伐が豪快に笑うと、人魚もくすりと笑顔になる。
「それで、その蛭子とやらはどの方向にいるのだ?」
人魚はヒレで方向を指し示す。
向かう先には、沈没した帆船があった。
そして、その帆船からは強力な妖気を感じる。




