第弐歌<急>
目の前からは巨大な海坊主が出現し、甲高い声を吐きだす。
霧の海はやがて雨模様へと変わり、暗く、荒れた海へと誘われていく。
「掴まれ!!」
荒伐の大声も雨音と風にかき消されてしまう。
この嵐には妖力を感じ、海坊主の力であることを流徹は察した。
落雷が轟く。
立つ事すらままならない状況の中、荒伐は言う。
「信頼を得たければ奴を討伐して見せい!」
その言葉に、流徹は拳を握る。
今まで戦ってきた魔人や妖怪、その経験から、決して勝てない相手ではない。
むしろこの程度で倒れていては天草四郎など倒せるわけもない。
そう信じて、刀を握る。
風に逆らい立つ。
「行くぞっ!」
球磨、お町が先陣を切る。
トゲイ、菊三十兵衛が左右から攻める。
介郎と流徹が構える。
海坊主は口をバックリと開き、光を放つ。
「させん!」
球磨はその光を刀で弾いた。
お町が忍者刀で接近戦を仕掛ける。
だが、海坊主の表面はヌルヌルとしており、まったく刃が通らない。
「なにっ!?」
一定の速度、一定の力、一定の角度で刃を入れないと全く効果がないのだ。
それを見たトゲイ、菊三十兵衛が攪乱に転じる。
トゲイが刃毀れした刀で、菊三十兵衛が大太刀で、牽制を仕掛けた。
彼らは高度な刀の技術がない事を自覚していた。
故にこそ仲間に賭ける。
海坊主は再び口から光を放つ。
「風車!」
介郎が槍を回してそれを弾き飛ばした。
その光は海坊主の光る眼に命中した。
海坊主は身体を振るわせて威嚇する。
一行は再び武器を構える。
球磨は刀を、介郎は槍を、菊三十兵衛は大太刀を、トゲイは刃毀れした刀を、お町は忍者刀を。
そして、流徹は姿を消していた。
否、跳躍していたのだ。
流徹が頭上から海坊主の身体に妖刀を突き立てた。
海坊主は奇妙な甲高い声を上げながら暴れ狂う。
そして、最後の力を振り絞り、口から光を放つ。
それが船体を破壊した。
そのまま、一行は嵐の海の中へと放り投げられる。




