第弐歌<序>
安房に着いた一行。
屋久杉の積み出しで栄えている港町であった。
そこで、流徹は見覚えのある姿を見た。
「あっ!」
愛くるしい小顔に細長い手足、忍び装束に身を包んだ少女。
伊賀のお町であった。
「なんだ、子供じゃん!」
トゲイが口悪く言った。
「子供じゃないですーっ、お姉さんでしょ~?」
お町はトゲイを追いかけながら叫ぶ。
「体の調子は大丈夫なのか?」
流徹が訊ねる。
お町はトゲイをオシオキしながら答えた。
「大丈夫大丈夫! こう見えてもアタシは強いから!」
流徹はいつも通りの彼女の笑顔を見て安心した。
一行は、介郎によって町外れにある小屋へと案内された。
その中は薄暗く、光源は木材の隙間から微かに漏れる太陽光のみであった。
「すまんな、常に海で過ごしている故にこうした小屋を転々としているものだ」
その声の方向には、青色の羽織に身を包んだ恰幅のいい男が一人。
信と書かれた水色に輝く勾玉がそこにはあった。
介郎が紹介する。
「彼は房州の船乗り、名を荒伐と言うのでござる」
「元水軍で改易され海賊稼業で暮らしている者だ」
その言葉に彼は訂正を加えた。
「海賊は引退した。今では一介の漁師に過ぎん」
そして、介郎が続ける。
「この者達は拙者のお墨付きでござる」
ジッと流徹らを見る荒伐。
「いまいち信用できねえな……」
呆れた声色で言った。
その言葉に、一行は息を呑む。
しばらくすると、荒伐は続ける。
「だが、いい……介郎に手を貸すと言った手前だ。海の男に二言はねえ」
流徹の表情は僅かに喜びで満ちる。
その代わり、と言わんばかりに荒伐は立ち上がろうとする流徹を止める。
「ただ、そのまま乗せるって訳にも行かねえ」
一行に緊張が走る。
「まずは……」
「船の掃除をするこったな」
荒伐は笑顔でそう言った。




