第壱歌<急>
一行は村落の中に巨大な穴を見つけた。
その中から次々と人間大の蜘蛛が湧いてくる。
流徹は蜘蛛を切り捨てながら、その穴の中へと進んでいった。
複雑な構造の穴の中には、蜘蛛の巣が幾重にも張り巡らされ、進むにつれて濃くなっていく。
トゲイが直感で進路を決めていく。
「多分こっちだ!」
介郎が訊ねる。
「良いのか、流徹殿!」
「ああ、こういう時は彼の直感に頼るのが一番であろう」
進んでいくと、小さな地下の集落のような場所に辿り着いた。
そこでは奇妙な出で立ちの男達が蜘蛛に囲まれていた。
目が小さく、毛は薄く、手足は短い。
まるで地中でずっと生活していたかのような姿であった。
「た、助けてくだされ~っ!」
流徹は迷わずに周りに蔓延る蜘蛛を両断した。
「た、助かりました~。この御恩はいずれ返させてくだせえ!」
「我々は土竜と言う、土行の一族でごぜえます」
「この地底で暮らしていたのですが、突然あの蜘蛛の化け物が地下から湧いてきまして……」
彼が指をさした場所には更に奥へと続く穴があった。
そこからは禍々しい妖気が漂う。
「あの奥か……」
一行は奥へと進む。
巣の奥には無数の骸骨が浮いていた。
そして、最深部の行き止まりには何かが蠢いている。
巨大な蜘蛛。
だが、よく見るとそれは牛の頭部、玉のような鬼の胴体、細長い手足、長い尾を持ち、手足の先から先までを測ると二十丈程の大きさであった。
「土蜘蛛だ!!」
八束脛の異名を持つ伝説の妖怪であった。
一斉に跳び出し、斬りかかる。
「おらあああああっ!!」
菊三十兵衛の一撃が土蜘蛛の足を切り裂く。
白い血しぶきが噴き出し、土蜘蛛が喚く。
球磨は白い血からは不気味な妖気を感じた。
「いかん、アレに触れると不治の病を患うぞ!」
「返り血を避けながら戦えって事かよ! 無茶言うぜ!」
介郎とトゲイが華麗な連携で攻撃をする。
「やるでござるな、小僧!」
「小僧じゃない! トゲイって名前があんだ!」
大妖怪であるが、幾多もの困難を潜り抜けてきた流徹らの敵では無かった。
土蜘蛛は卵をいくつも生み出した。
その卵は瞬時に孵り、蜘蛛が生まれていく。
「仲間を増やすとは、卑怯なッ!」
それでも流徹は蜘蛛を切り裂きながら前へと進む。
土蜘蛛は口から紫色の靄を吐きだす。
「毒か!?」
瞬時に距離を取る一行。
その靄を浴びた蜘蛛が強靭に、強固に、敏捷になった。
「ムムッ!」
追い詰められていく一行。
トゲイが刀を構える。
礼の勾玉が輝きだした。
「四極一閃!」
周囲の蜘蛛を一瞬で粉微塵に切り裂いた。
「トゲイ……やるな」
流徹がその隙を縫って、土蜘蛛へと跳びかかる。
そして、縦に切り裂いた。
だが、強固な外殻に阻まれ、致命傷とはならなかった。
それどころか、白い血が撒き散らされ、逃げ場を失う。
流徹目掛けてその太く鋭い足が振り下ろされる。
「爆熱土竜砲……てーっ!」
土竜達が発射した砲弾が、土蜘蛛の頭部に命中する。
すると、土蜘蛛は大きくのけぞり、耳をつんざくような雄叫びを上げる。
「我々は手先が器用でごぜえまして……こんな武器もあるんです!」
次に、土竜達は鏃の付いた鋼糸を発射した。
それは土蜘蛛の動きを容易に封じる。
「今でごぜえます!」
「だが、奴の外殻は硬すぎる!」
流徹が妖刀を構えて言う。
「外殻にも隙間はあるはず、そうでなければ動けない!」
土竜の言葉により、敵をよく観察する流徹。
隙間を見つけ、一点に力を込めて振り下ろす。
返り血を全て吹き飛ばす様に勢いよく……。
「でやあああああああっ!!」
その一撃が、土蜘蛛を死に至らしめた。
「お見事……でごぜえます」
土竜達が飛び跳ねる様に喜ぶ。
「まさか、土蜘蛛退治までしてくれるとは、この御恩はどう返したらよいか……」
「良い。こちらもすべきことをしたまでだ」
流徹はそれだけ言って、安房へと向かった。




