第壱歌<破>
安房を目指し、上総を歩く。
夜を明かすべく、小さな寂れた農村へと立ち寄った。
小屋は風化し、行く先々で出会う人々はやせ細っている様子だ。
ここにも既に魔人の魔の手が伸びているのだろう、と推測した。
「これ、旅の若者や、ここで起きたことを聞いてはくれぬか」
流徹が物陰に腰かけていると、老婆が話しかけてくる。
その老婆の眼差しは真剣であった。
「お主らは、強い力を持っているのだろう?」
「そこで、この村に襲い来る妖怪の退治をしてほしいのじゃ」
「妖怪……?」
老婆の話から察するに、妖怪の一匹二匹ではないのだろう。
だが、今は安房に急ぐ身、こういった事にかまけている余裕はない。
「なあなあ、手伝ってやっても良いんじゃねえか?」
トゲイが口を挟む。
「同感だ、俺様も困ってる婆さんを放っては置けねえ」
菊三十兵衛も同じ意見だ。
流徹は渋々重い腰を上げた。
「あい分かった……」
流徹の隻眼が老婆を捉える。
その老婆の顔は絶望の中に僅かな希望を見出したようだった。
「して、その妖怪とやらは……」
「毎晩になると地下から出現するのじゃ」
そうして、一行はその村に泊まる事となった。
「蜘蛛だー!!」
その大きな声で一行は飛び起きた。
気が付くと、周囲には人間大の蜘蛛が無数に闊歩している。
村に駐留していた武士が必死に戦うも、一人、また一人と敗れていた。
「これはッ……!!」
流徹が事態の深刻さを知り、息を呑む。
「助太刀いたすぞ!」
介郎が武士達の間に入り、次々と蜘蛛を倒していく。




