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そして現在、ひとしきり楽しんだアリシアはお気に入りの話し言葉を模索中だ。


(別にアーロンと話すのが嫌ってわけじゃないのよ)


真面目で口うるさくて堅物な婚約者の、有難〜いお説教タイム。

折角ならお互い楽しい時間に出来たら良いじゃない?とか何とか考えているアリシア。

お説教されないで済む言動を心掛けようとは、思わないらしい。




「アリシア。今日のきみの言動の何が問題だったか、ちゃんと理解しているか?」


今日アリシアはアーロンと街に出掛けた。

お茶をして帰ろうと店に入ったところ、アーロンは忘れ物をしたと席を外した。

その時を狙ったように話しかけてきた、お父様くらいの年齢の貴族男性がいたのだ。


「分かってるってば。おっさんのカツラがおかしくて、飲んでたお茶を吹き出した水圧でカツラをずらしちゃった事でしょ?」


「⋯⋯。どうするべきだったと思う?」


「あれは、カツラにも問題があると思うのよね!もっとしっかりピッタリかぶっててもらわないと!もっと良いカツラ屋さんを紹介してあげたら、許してくれるかしら」


名案と言わんばかりに両手をあわせるアリシアに、アーロンが深い溜息で返す。

珍しくアーロンは怒っている。

でも、アリシアだって怒っているのだ。


明らかにアリシアの家の財産目的のオッサンが、自分の息子は眉目秀麗で、社交界でも女性に人気だなんだとしつこかった。


だったらその父親もさぞかしイケおじなんだろうと、面をじっくり拝んでやったら、財産目的だけあって安っぽいバレバレのカツラを被っているから、思わず吹き出してしまったのだ。


カツラがズレたのは気の毒だが、アリシアのせいだけではないと思う。


「紹介だけじゃなくてカツラを贈るべき?でも好みもあるだろうしサイズだって…。今度は簡単にズレないようなカツラを⋯」


「アリシア、人の容姿を馬鹿にするような真似は感心しない。」


アリシアが人を見た目で笑うような人間じゃないことは、アーロンもちゃんと分かっている。

アリシアがそんな事をしてみせるからには、何か理由があったのだと言う事も分かっている。


「確かに、貴族社会において容姿も重要な判断基準となり得るし、疎かにするべきではない。ただし淑女としては、それを表情に出すべきではなかった。」


きっと、自分か家族が馬鹿にされたのだろう事も推測した上で、アーロンは怒っている。

その為にアリシアの評判が落ちることを、憂いているのだ。


「アリシア、きみの感情豊かな所は美点であるけど貴族社会に於いては⋯」

「だって!あいつは⋯…っ」


(婚約者がいる令嬢に、自分の息子を売り込むようなやつなのに!!)


「あいつじゃない、ハグー男爵と呼ぶんだ。」


アリシアだって、アーロンが全部分かったその上で怒ってることも憂いていることも、分かっている。

分かっているつもりである。それでも⋯


「⋯⋯っ、アーロンの⋯」


それでも、腹が立つものは腹が立つ。


「アーロンの、ばか!!」

「アリ⋯」


このやり場のない怒りをどうしてくれよう。


「アーロンのクソマジメ!アンポンタン!おたんこなす!!うんこ野郎!!!」


(こうなったら…、アーロンが絶対言わなさそうな事を言わせてやる!!)


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