第90話 誰がどう考えても羨ましい夏休み
202X年、夏休み終盤
① なんとなく、フユミの部屋で
≪タマキ:今、家?≫
送信。
秒で既読。
≪フユミ:家です≫
≪タマキ:行っていい?≫
≪フユミ:鍵開けときます。なんか買ってきてください≫
俺は着替える気力すら微妙だったので、下だけ履き替えて、外に出た。
歩く距離は徒歩三分。
途中のコンビニに寄っても十分もかからない。
――この三分が、今日の俺の最長移動距離になる。
◇
玄関を開けると、ほのかに冷房の効いた空気。
普通に雑然としているが、テレビとテーブル、ベッド周りだけは生活スペースが確保されている。
「いらっしゃいです」
「どうも」
フユミは、座椅子に座ってゲームをしていた。
眼鏡をかけたまま、コントローラーを持ち、画面に集中している。
「今ちょっと忙しいので適当に過ごしててください」
「うん」
ベッドに腰を下ろして、しばらくその背中を眺める。
特に会話もない。
なんとなく、それがいい。
昼の光が、カーテン越しに部屋を明るくしている。
エアコンの音と、ゲームの効果音だけ。
気付いたら、意識が落ちていた。
◇
なんか暑くて目が覚めた。
……近い。
フユミの頭が、胸元にあった。
いつの間にか、ゲームは中断されていて、彼女も寝ている。
小さく、規則正しい寝息。
俺の腕が抱え込まれている。
痛くはないが、簡単に抜けそうもない力。
「……」
起こすのは、さすがに悪い。
というか、起こす理由がない。
起こしたら、もったいない。
それに。
なんだかんだで、こういうのが一番、心が休まる。
◇
次に目が覚めた時、部屋は少し暗くなっていた。
カーテンの隙間から、夕方のオレンジ色の光。
時計を見ると、夜八時過ぎ。
「……腹減った」
小さく呟くと、フユミがもぞっと動く。
「……にゃふ……」
「起きた?」
「……起きました」
目をこすりながら、ゆっくり体を起こす。
「お腹……空きました」
「だよな」
「外、出ます?」
「めんどくさい」
「同意です」
数秒の沈黙の後。
「……ピザ、とかどうだろう」
「いいですね。タマキさん、何派です?」
「チーズいっぱいのがいい」
「にゃふ。私は……」
「うん」
「照り焼きチキンとかも、好きです」
「わかる」
「今日は二人いるので、欲張りませんか?」
「二枚頼む?」
「二枚です」
◇
届いたピザは、想像通りの味だった。
チーズ多め、特別感ゼロ。
「……美味しいですね」
「うん」
「外に出なくて済むのが最高です」
「それな」
床に座って、二人で食べる。
買ってきたポテチのうすしおも開封される。
「タマキさん」
「ん」
「これ、止まらないやつです」
「わかる」
指先に付いた塩を舐めて、ゲームを再開する。
今度は二人プレイ。
特にすごい盛り上がるわけでもないけど、楽しい。
◇
気付けば、夜中。
部屋の中は、昼とは違う静けさになっていた。
エアコンの音も、少しだけ低く感じる。
「……そろそろ寝ます?」
「そうだな」
コントローラーを置いて、明かりを落とす。
ベッドに並んで、特に会話もなく横になる。
「……今日」
「ん」
「なんで来たんですか?」
「なんとなく」
「それ、最高ですね」
「そうか?」
少しだけ、布が擦れる音。
「来てくれて、良かったです」
それだけ言って、フユミは俺の腕に潜り込んで、目を閉じた。
俺も、目を閉じる。
特別なことは、何もしていない。
でも、悪くない一日だった。
――夏休みは、こういう日が一番、長く続いてほしい。
そう思いながら、意識は静かに沈んでいった。
② 愚痴と酒と、帰る場所
≪タマキ:今日、飲みに行かない?二人で≫
送った相手は、アキハ。
既読は少ししてから付いた。
≪アキハ:いいよ。店のストックある?≫
≪タマキ:ある。18時でいい?≫
≪アキハ:じゃあ、大通りのいつもの辺り集合で≫
話が早い。
まあ、いつものことだ。
◇
大通りから一本外れて、さらにもう一本、細い路地を曲がった先。
扉に小さく店名が書いてあるだけの、こぢんまりした店。
カウンターが六席と、
二人掛けテーブルが二つ。
「いらっしゃいませ」
「……いいじゃない」
「だろ」
俺とアキハが二人で飲む時は、“事務局の人間が来ない店”を選ぶ。
それでいて、化物級を除けば、最強クラスの酒豪アキハが満足できる店。
中々難しいのだ。
「何にする?」
「ブルドッグ。タマキは?」
「シャンディガフ」
「好きねぇ、それ」
「ビール克服するために飲みまくった後遺症」
グラスが並び、軽く乾杯する。
「……で」
グラスを置いた瞬間、アキハがこっちを見た。
「今日はタマキから愚痴る?」
「まあ、呼んだ側だしな」
「ん。聞いてあげる」
まあ、そういう感じ。
だいたい、どっちが愚痴りたい時に飲むことが多いので、こういう店選びになる。
「先日のバー……ごめん?」
「……ん」
こっそり謝るのに使うこともある。
アキハの目が、少しだけ細くなり、早くも二杯目を頼む。
「何について謝ってる?」
こっちの考えていることを、確認してる顔。
「怖がらせた。俺がしっかりしていれば……」
「タマキ」
「はい」
あ、怒ってる。
「謝るとこ、そこじゃない」
「……え」
アキハは、二杯目を一口飲んでから言った。
「タマキ、あの時、守るべきものに自分自身入れなかったでしょ」
「……」
「別に間違ってはいない。多分、私たちとお店を守ろうとしたんでしょ」
「あの時、一番守りたかったのはカズネやアキハ達で――」
「うん、それはいい。でも、その後ろに自分も守るを入れなかったのがダメ」
「……」
「タマキが守ってくれると思ってたから、私は怖くはなかった。カズネとは裏口で話したんでしょ?」
「ああ、カズネとは話した」
「なら、私たちには謝らなくていい。あの時、私やカオル先輩、リン先輩はタマキを守ろうとした」
「……」
「だから私たちには謝らない。“助けてくれてありがとう”って言いなさい」
喉が詰まった。
俺は、返す言葉を探して、見つからなくて、ようやく出たのは。
「……ありがとう」
「うん」
それで、アキハは満足した顔で三杯目を頼んでいる。
……なんだこれ。
俺が謝ろうとしたのに、俺が救われた。
「はい、じゃあ、次、私のターンね」
「ん。聞きます」
「そのバーの時、あんたとカズネが裏口に消えた後、皆にからかわれたことについて」
「いや、なんでさ」
「最近、実家で『タマキくんは最近どうなの?』って妹と母からめっちゃ言われることについて」
「俺が悪いの?」
「ナツキとメグミのバイト先だけ手伝ってて、ずるいことについて」
「アキハのバイト先、ビルのインフォメーションじゃん。俺が手伝うことありえなくね?」
「全部、タマキ絡みなことに今気が付いて、ちょっとムカついた件について」
「無茶苦茶言うな」
そんなふうに、どうでもいいことを並べて、笑って、飲む。
「……タマキ」
「ん?」
「私さ」
「うん」
アキハは、グラスを眺めながらぽつりと言う。
「タマキが『おかえり』って言ってくれるの、ありがたいなって思ってる」
「……」
「だから、勝手に人が増えるのも、分かるんだけど」
「うん」
「たまに、『静かにして』って言いたくなる」
「……言っていい」
「言うと、私が悪いみたいになる」
アキハが、少しだけ笑う。
でも、言っている意味はすごくわかる。
俺は、グラスを置いて、小さく息を吐いた。
「正直さ」
「うん」
アキハは、こっちを見ない。
でも、“聞く姿勢”だけは崩さない。
「俺も最近、人の出入りが多すぎて、たまにダルい」
「言った」
「言った」
「でも、分かる」
アキハが深く頷いているのが、逆に笑える。
「嫌いじゃないんだよ。楽しいし」
「うん」
「『いつでも来ていいよ』って言ったの俺だし」
「うん」
「でも、“帰ってきて玄関開けたらもう誰かいる”みたいなの、続くと」
「一人になりたい日、ある」
「そう」
アキハはおかわりを頼みながらクスっと笑う。
「……正直、“お前ら全員それぞれの家あるだろ”って思う時はある」
「それは思っていい」
「ね?」
「うん、普通に思っていい」
矛盾した気持ちを、うまく言葉にできないまま、一口飲む。
「でも、“追い出せない”でしょ」
「追い出せないねー」
「“居場所であって欲しい”って気持ちも、本物なんでしょ」
「それは、そうなんだけど」
「“楽しい”と“ダルい”って両立するのよね」
「する」
「するよね」
「でも、“だるいな”って思った瞬間に、“みんな信頼してくれてるのに”って自己否定入る」
「それ、しんどいやつ」
アキハが、苦笑しながらグラスを呷る。
「“しんどいって言ったら、信頼を裏切ることになるんじゃないか”って思うパターン」
「……そう、それ」
「で、“そんな自分が一番めんどくさい”って、最後に自分にキレるやつね」
「うん」
「知ってる。私もそれやるから」
そこで、二人で少し笑った。
アキハが、次の一杯を頼む。
俺はコーン茶を頼む。
「……私もさ」
「ん」
「最近、ちょっと疲れてる」
わかる。
「人の世話しすぎ」
「……わかってるんだけどね」
「まあ、俺も世話になってるけど」
「タマキの世話っていうより、“皆の空気”の世話」
アキハは、自分のグラスを見て言う。
「楽しいんだけどね。嫌いじゃない。
でも、たまに、“私”がどこにいるのか分かんなくなる時ある」
俺は、ゆっくり頷く。
「……俺が言うのも変だけど、ありがとな」
「そういうこと言うと、飲む」
「いくらでも飲め」
言った端から、アキハはまた一口。
「……タマキ」
「ん?」
「今日誘ったの、偉い」
「それも褒めてる?」
「褒めてる。また誘え」
「アキハからも誘ってくれ」
「恥ずかしいから、タマキからの方が嬉しい」
褒め言葉が、妙に素直で。
アキハが酔ってるのは、そういうところに出る。
◇
店を出る頃には、夜風は涼しくて、頭が少しだけ冷える。
二人で小さく笑って、並んで歩く。
普段より少しだけ距離が近い。
そして――
どちらかと言うと、酔ってるのはアキハの方だ。
アキハは大人数の飲みで絶対酔わない分、二人で飲むときに、しっかり酔う。
「タマキ」
「ん」
「この後どうする?」
「うち来るんじゃないの?」
「それでもいい。それともホテル行く?」
普段なら絶対言わない一言が、ふいに落ちてきた。
「素面の時に言え」
「だって、タマキの部屋行ったら、二人きりにはなれないじゃん」
それはそう。
「二人きりになったら我慢できないから、ちょうどいい」
「あーあ、去年襲っとけば良かった」
「何度目だ、それ言うの」
酔うと、アキハは大体こんな感じだ。
まあ、だから俺がセーブして飲むんだけど。
「毎回思うが、俺が襲われる方なのか」
「だって、タマキ絶対拒否しきれないでしょ」
「…………」
「ヘタレ」
「うっさい」
歩きながら二人で笑う。
俺たちは、そういう夜が好きだ。
◇
アパートの前まで来て、鍵を出す。
「さて、今日の“居住率”は」
「賭ける?」
「じゃあ、“三人以上いる”に一票」
「じゃあ私は“二人以下”にしとくわ」
「開けてみましょう」
「オープン」
言いながら、アキハは俺の横をすり抜けて、当然みたいに玄関に入っていった。
――こいつ。
「ただいまー」
「アキハ。タマキは?」
「後ろ」
ベッドでゴロゴロしているナツキ。
沈殿ゾーンにメグミ、ソファにマシロ&マヨイ先輩。
テーブルでカズネが漫画を読んで、フユミがゲームしている。
全員、それぞれのポジションでごろごろしていた。
いつもの光景だった。
「タマキー」「タマキくーん」「タマキさん」「タマキ先輩~」
呼び方もいつもの通り、それぞれ違う。
アキハが、その光景を見て、ほんの少しだけ口元を緩めた。
俺も、同じタイミングで笑ってしまう。
「“三人以上”で、タマキの勝ちね」
「次回はアキハの奢りな」
「安い店探しておくわ」
小声で言い合う。
ほんの一拍の沈黙のあと、二人で苦笑する。
「え、何その顔」
「何かあったの?」
「にゃふ?」
「タマキ先輩~?」
四方向から視線が飛んでくる。
「いや」
「なんでもない」
アキハと目を合わせて、小さく肩をすくめる。
でもまあ――
こうやって、帰る場所に誰かいるのは、正直嬉しい。
だるくなる日もあるけど。
そういう日を、“だるい”って言える相手と飲みに行って、
こうしてまた、いつもの部屋に戻ってこれるのが。
多分、今しかない大切な時間なんだと思う。
③ いつでもリジェネ
昼下がり。
俺は沈殿ゾーンに半分溶けかけていた。
「タマキー」
背後から、甘い声。
「……んー」
返事だけする。
返事はするが、起きるとは言ってない。
すると、ナツキが俺の背中に体重を預けてくる。
この圧のかけ方――だいたい内容が分かる。
「ねぇ」
「んー」
「今日、バイト?」
「んー」
「じゃあ昼はデートね」
「んー?」
「よさげな雑貨屋見つけたの」
「んー」
「ちょっと早めの晩ご飯食べて、夜までに帰ってこよ」
「んー」
「さ、行くよ」
「んー」で全部流されていく俺の人生。
ナツキは勝ち誇った顔で俺の腕を引っ張り、俺は抵抗するフリだけして立ち上がった。
――こういう時は、抵抗しても無駄だ。
俺は学んでいる。
◇
いつもよりちょっと歩いて、植物園の裏側まで行くと、人の気配もだいぶ薄れる。
「ここ」
「……雑貨屋?」
「うん。外観かわいいでしょ」
「確かに」
ガラス張りの小さな店。
中には、食器や布小物、アクセサリー、よく分からないけどオシャレな置物がぎっしり。
「こういうとこ、好きでしょ?」
「好きなのはナツキでは?」
「タマキもでしょ」
まあ、そうなんだけど。
ドアを開けると、ベルが鳴る。
「いらっしゃいま――」
声が止まった。
店員がすごい顔でこちらを見ている。
「センパイたち!?」
カズネだった。
「ここ、カズネのバイト先?」
「そうです!!デートですか!?」
「ちがいます」
「デートだよ♡」
「いいなぁ……」
本気で羨ましそうな顔をしてる。
違うっつっただろ。
「カズネはバイト中でしょ」
「ご案内します!!」
カズネが“事務局の後輩”の顔と、“店員”の顔を行ったり来たりしている。
可愛いなぁ。
「カズネ的おすすめゾーンは?」
「こっちです!」
引っ張られて行った先には、
レターセットやポストカードがぎっしり並んでいた。
「紙ものコーナー?」
「そうです! 紙って、無限にいいんですよ!!」
急に早口になる。
「ほら、このレターセット、インクの乗りがめちゃくちゃ良くて、
万年筆で書いても裏抜けしないんですよ! 厚みも絶妙で!」
「お、おう」
「このポストカードのシリーズは、季節ごとに新作が出るんですけど、
“夏の夜の動物”ってテーマで、花火と一緒にキツネとかシカが描いてあって~~」
語りが止まらない。
「カズネ、仕事モードだと早口になるね」
「普段もでは?」
「だって! 好きなもの語ってると早口になるのは、人間の仕様です!!」
「仕様なんだ」
「仕様です!」
でも、その“語り”が嫌じゃないのは、
カズネが本当にこの店と雑貨が好きなんだろうな、って伝わるからなんだろう。
ナツキも横で楽しそうにしている。
「タマキ、これ」
「ん?」
ナツキが、小さなガラスの一輪挿しを手に取った。
「部屋に花置くスペース、あんまりないじゃない?」
「まあ、誰か倒しそうで怖いし」
「でも、窓際にこれくらいなら置けるでしょ」
細長いガラスの中に、
水と、一輪だけの花。
「“たまに誰かからもらった花、ここに挿しておきなさい”用」
「用途まで指定された」
「買ってあげる」
「なにゆえ」
「これは、私がタマキの生活に口出しする権利としての出費なので」
「聞いたことないタイプの権利」
会計を済ませて、袋を受け取る。
「ありがとうございました!また来てください!!」
「うん」
「センパイ!!今度はお一人でどうぞ!!」
「それを二人で来ている時に言うのがすごいな」
ナツキが、学年一の笑顔でカズネに微笑みかけている。
「カズネ?」
カズネが「にゃぁ……」みたいな顔で固まっていた。
考えて喋りなさい、カズネ。
店を出る前、カズネがもう一度、店員モードで頭を下げる。
「ご来店ありがとうございました。またお待ちしてます」
「バイト頑張れよ」
「はいっ!」
ドアベルが鳴って、外の光が差し込む。
「……カズネ、似合ってたね」
「だな。なんか、“店の子”って感じだった」
「うちの後輩たち、どこで何やってても結局可愛い説」
「それは否定できない」
ナツキが、俺の腕に指を絡める。
「で。次、カフェ」
「ん」
「タマキお気に入りの。この辺でしょ?」
「んー?教えたっけ」
「目撃情報が」
「やだなぁ」
「タマキと二人の時にしか行かないから安心して」
勝てない。
◇
お気に入りのカフェの二階。
人がそんなに多くなく、ご飯もケーキも美味しい。
ナツキは、メニューを見ながら言う。
「ここ、雰囲気いいね」
「そうだろ」
「おすすめは?」
「ポークソテー」
「じゃあ、タマキはそれね。私はケーキセット」
「おすすめを聞いた意味は?」
食べながら、どうでもいい会話をする。
雑貨屋の戦利品の話。
カズネのバイト先での反応の話。
ナツキがまた告白された話。
◇
軽くご飯を食べて、外が暗くなる前に家へ戻る。
夕方の風が少し涼しい。
アパートの前で立ち止まる。
「さ、買った荷物頂戴。代わりにコレ、バイト用シャツとエプロン」
「持ち歩いてたのか」
「部屋に入っちゃうと、切り替えが一回増えるでしょ、このまま行っておいで」
ナツキは、俺の前に回って、軽く背伸びして、俺のシャツの襟を直す。
何でもない顔で。
「さ、いってらっしゃい」
「……ナツキ」
「何?」
俺は一瞬だけ言葉を探してから、素直に落とした。
「ありがと」
「知ってる♡」
ずるい。
こっちが言う前に、全部分かってる顔をする。
でも、そういうところがナツキだ。
「行ってきます」
「いってらっしゃい」
俺が歩き出すと、ナツキは少しだけ後ろで手を振った。
夜の予定は変わらない。
バイトも、責任も、面倒も、たぶんある。
けど、なんとか立ち止まらずに向かえそうだった。




