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最北大学学生事務局  作者: 萩原詩荻


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第99話 花火大会【中編②】

202X年 夏休み終了五日前、夕方~


④ 導きの手


 メグミとのサボりタイムが延長戦に入り、そろそろ戻るか?と言っていると。


「タマキくん」


 人混みの中から、低めの甘い声が現れた。

 ヒカリさんが、ゆるく手を振っている。


「メグミちゃん、タマキくん借りるね~」

「はい~。どうぞ~」


 メグミ、渡すな。


 ヒカリさんは、俺の袖を軽くつまみ、連行する。

 連行の仕方が堂々としていて、逆に抵抗できない。


「どこ行くんです?」

「んー、ちょっとだけ、こっち」


 大人しくついて行くと、

 屋台の裏手を少し進んだ、人気のないぽつんとしたスペース。


「……なんで毎回、ロケーションがギリギリなんですかね」


「だって、人気者くんは人目が多いでしょう?」


 ふふ、と笑いながら振り向くヒカリさん。


「……人気者は雑誌で引っ張りだこの人気デザイナー兼モデルさんじゃないんですかねぇ」


 浴衣が似合いすぎて、現実感が薄い。

 元々ショート気味の髪ではあるが、今日は少しだけまとめて、うなじと耳が綺麗に出ている。

 …………ずるい。


「ヒカリさん実在してます?」

「え?」

「もう、その見えてるうなじだけで理性削れるんですよ。めちゃくちゃ似合ってますし、とんでもなく綺麗です。なんすか、ゲームから出てきたヒロインかなんかなんです?」

「……うわぁ、タマキくんが本気で混乱してる。面白い」


 ヒカリさんが腹を抱えて笑っている。

 そういうとこ可愛いからずるい。


「ね。あとで、今日誰の浴衣姿が一番だったか教えてね」

「ヒカリさんじゃなくてですか?」

「んー、なんていうのかなー。みんなと二人きりで今日話してるでしょ?」

「あ、やっぱりわかります?」

「そりゃわかるわよー」


 まあ、そりゃそうだ。


 ヒカリさんは、少しだけ距離を詰めてきて、小さく囁く。


「誰といる時が、一番落ち着くのか。

 誰といる時が、一番ドキドキするのか。

 誰といる時に、“あ、この景色、忘れたくないな”って思うのか」


「……」


 それは……


「……みんな、いい子だもんね」

「はい?」

「タマキくんのこと、大事にしてる」

「……」


「タマキくんも、みんなのこと大事にしてる」

「……はい」

「大変だね」

「大変です」


 ヒカリさんが、楽しそうに笑った。


「……怖い?」


 ふと、柔らかく聞かれる。


「……怖いです」


 素直に言うと、ヒカリさんは「うん」と頷いた。


「怖いって言えるなら、大丈夫」


「そうですか?」


「“怖くない”って顔してる方が、見てて危なっかしいからね」


 そう言って、俺の頬に手を当てる。


「ちゃんと怖がって。ちゃんと悩んで。ちゃんと、決めなさい」


「……はい」


 ヒカリさんが、ちょっとだけ悪い笑顔になる。


「その時、“流されて決めました”って顔してたら、

 私は、ちょっとだけ怒るかも」


「ちょっとだけ、ですか?」


「そこそこ怒るかも」


 正直だ。


 ヒカリさんが、俺からスッと離れ、背を向けて上を眺める。


「ねぇ、タマキくん」


「はい」


「私がただの“女の子”だったら……どうしてた?」


「……ただの女の子、ですか?」


「OGでも、モデルでも、デザイナーでも大人でもなくて。

 ただ、普通に恋して、普通に甘えたい同級生の女の子だったら」


 喧噪が、遠くなる。

 ヒカリさんの、表情は、見えない。


「……ヒカリさん、そういうこと言うのずるいですよ」


「ずるいでしょ♡」


 認めた。

 自覚犯だ。


「……んー」


 俺は、彼女の背中を見たまま、正直に答える。


「俺は、やっぱり今の、ヒカリさんに会えてよかったです」


「……そっか」


 ヒカリさんが何を考えているのか、俺にはわからない。


 でも、俺は、ヒカリさんに会えて、良かった。

 それは本当に心から言える。


「ありがとう」


「いえ」


「うん、私は私。

 弱さも、強がりも、ぜんぶ抱えて立ってるの」


「はい」


「だから――」


 振り返ったヒカリさんは、いつもの“頼れる大人”の顔だった。


「これからも、夜はバーで愚痴を聞いて、朝は私を起こしに来て、昼は一緒に学校祭の準備進めてね」


「俺でよければ」


「いい子♡」


 そう言って、少しだけ身体を寄せてくる。


「ぎゅー、いる?」

「ここ、外ですよ」

「会社はダメだって言うから」

「どうして家でって発想ないんです?」

「タマキくん家、いつも誰かいるじゃなーい」


 それはそう。


 ヒカリさんは、勝った顔で、ぎゅっと抱きしめてくる。

 浴衣越しに伝わる温度。

 髪の匂い。

 大人の余裕。


 少し背伸びしたヒカリさんが耳元で囁いてくる。


「タマキくん」

「はい」

「学祭、絶対成功させようね」

「……はい」


 手を腰と頭に回し、軽く支える。


「成功したら、ご褒美あげる」

「何のご褒美ですか?」

「何が欲しい?」


 …………言ったら貰えるのかなぁ。

 やめとこうかなぁ。


「学校祭、終わっても」

「うん」

「合鍵貰ったままでもいいですか?」

「……」

「……」

「欲しいの?」


 うん、まあ。


「えっと、今までどおり起こしにも行きますし、掃除もしますし、バーで潰れたら送りますので……」

 

 言ってて、それは召使いか何かでは?という気がしてきた。


「……ふふふ」


 ぺろっ。


「!!!???」


 ヒカリさんから慌てて離れる。


「い、今!耳!舐め!ちょっと!」


「えー、なんにもしてないよ?急に離れてひどーい」


 ヒカリさんは、くすっと笑って、何事もなかったみたいに、上目遣いで見てくる。


「さ、戻ろ?誰かが待ってるよ、きっと」


 喧噪へ戻る道に立ち、手を伸ばしてくるヒカリさん。


「せめて、やったこと認めてくれません!?」

「続きは、今度うちに来てくれた時ね♡」

「今そういう話してねぇんだけど!?」


 ヒカリさんの手を取り、文句を言いながら、祭へ戻る。

 この人には、多分、10年経っても勝てないんだろうなぁ。



⑤ どこまでも隣を歩いてくれる人


「あ、アキハちゃん。タマキくん返すわね」

「ありがとうございます」

「俺の所有権はどう管理されてるの?」


 ヒカリさんに連れられて参道に戻ったところでばったりアキハと会い、返却(?)がされた。


「よーし、飲むぞー!!」


 用は終わったとばかりにヒカリさんが人混みに消えていく。


 ヒカリさん、浴衣姿の美人がそんなこと叫びながら歩くのダメですって。


「さ、タマキ。ちょっと歩こ」

「ねえ、俺の所有権は?」

「今は私の」


 諦めた方が早そうだ。


「タマキ」

「ん」

「マジでモテるようになったね」

「やめろよぉ」

「去年を知る身としては感慨深いわ」

「なんでだよ」


 心当たりはたくさんあるが、考えたくはない。


「こんなことになると思ってた?」

「……思ってなかったよ」


 正直に言うしかない。


 アキハは、空を見上げた。

 まだ花火は上がってない。

 でも、夜が「そろそろだ」って顔をしてる。


「……ねえ、タマキ」


 アキハが、こっちを見る。

 その目が、いつもより少しだけ真面目で、少しだけ寂しそうで。


「無理してない?」

「……無理してない」

「嘘」

「バレる?」

「バレる」


 即答だった。

 ……アキハに隠し事できたことないんだよなぁ。


「“嬉しい”と“めんどくさい”のバランス、

 ちゃんと取れてる?」


 問われて、

 少しだけ黙る。


「正直――」


「うん」


「嬉しいと、怖いが、半々くらいかな」


「……まぁ、そうよね」


 ああもう。


「……アキハ」

「なに」

「俺、どうしたらいいと思う」

「知らない」

「即答」

「決めるのはあんた」


 アキハは、少しだけ声を柔らかくした。


「でも、もし、あんたが怖くなったら」

「うん」

「私は、“隣”にいる」

「……」


 それが、アキハの優しさだ。

 引っ張りすぎず、放置もしない。


「言葉にすると、ちょっと格好つけすぎ?」

「かもな」


「でも、こういうのが必要な日もあるでしょ」

「……ある」


 アキハはこういうやつだ。

 本当に、本当に、イイ女で……


「……いっそ、俺がいなくなれば」


 言いかけたところで、

 アキハに、こつんと小突かれた。


「痛い」


「はい、ストップ」


 アキハは、少しだけ眉をひそめる。


「今の顔、“自己犠牲と自己憐憫を同時にこじらせてます”って顔」


「ひどい診断名」


「前から言ってるけどさ」


 アキハは、立ち止まって、

 真正面から俺を見る。


「“誰も傷つけない”なんて、とっくの昔に無理なのよ、あんた」


「……分かってるよ」


「じゃあ」


 軽く息をついて、続ける。


「せめて、“隣で見てる人間”くらいは、

 ちゃんと信じなさい」


「隣で?」


「うん」


 アキハは、目を逸らさない。


「私はね」


「……」


「“タマキが、自分でちゃんと決めた”って顔してくれるなら――」


 そこで一度、言葉を切る。


「その結果が、私にとって一番嬉しいかどうかは正直どうでもいいのよ」

「……は?」


 意外な言葉が出てきて、思わず顔を見る。


「いや、“どうでもいい”はちょっと言い方アレだけど」

 アキハが、苦笑しながら続ける。


「“その顔を見届けられる位置”にいたいの方が大事」


 風が、浴衣の裾を揺らす。

 周囲のざわめきが、少し遠い。


「多分、一番きれいに笑って、おめでとうって言えるの私よ?」


「……ずるくない?」

「どのへんが」


「そんなこと言われたら、

 もうちょっと頑張らなきゃって思っちゃう」


「でしょ」


 アキハは、にやっと笑う。


「“隣で同じ景色見たい人”ってさ」

「うん」


「嬉しい時の景色も、しんどい時の景色も、一緒に見てなんぼなのよ」


「……それ、滅茶苦茶しんどいんじゃないか」


「しんどいよ?」


 あっさり言われた。


「でも、所詮タマキ程度じゃ全員を幸せにできるわけじゃないんだから」

「程度って……」

「ちゃんと覚悟しなさいよって話」

「…………」


「だから、あんたの選択に口は出さない。

 でも、結果が地獄ならそれはそれで隣を歩いてあげる」


 振り向いて歩き出すアキハに並ぶ。


「地獄前提かよ」


「天国でもいいわよ。

 もし、タマキが私の彼氏になったら、それはそれで全力で幸せにしてもらうから」


 さらっと爆弾を投げてくる。


「要求が重い」

「当たり前でしょ。私は彼氏の理想高いのよ」

「前にも言ってたな……」


「だからさ」


「はい」


「怖いのは分かるけど、“怖いから逃げました~”だけは、

 わたし、許さないから」


「……」


「そんで、全部終わったら、また飲みに行くわよ」


「他の奴には会わないお店で?」


「そう。んで、あんたは『あの時の俺、割と頑張りました』って私に報告するの」


 その言い方が、“友達”で、“相棒”で、“でもそれだけじゃなくて”。


 イズミやシンジのような男友達とも、どこかがちょっと違って。


「分かった」


 素直に頷く。


「ちゃんと報告する」


「よろしい」


 丁度、参道が終わり、会場全部を見渡せる端に辿り着いた。


 ここまでくると、流石に人気も少ない。


「じゃ、そろそろ戻ろっか」

「うん」


「ナツキあたりが、

 『タマキどこー?私の浴衣コメントまだー?』って騒ぎ出す頃合いだし」


「容易に想像できる」


 そして、いつものアキハが戻る。


「ところで、私の浴衣姿、どう?」

「……似合ってる。綺麗」

「それだけ?」

「言っていいのか?」

「言ったら殺す」


 アキハが、少しだけ顔を赤くして、そっぽを向いた。


「……バカ」


 その言い方が、可愛かった。


 アキハが隣を歩いてくれるんなら。

 まあ、もうちょっとだけ頑張って歩けるかもしれない。



⑥ 正面から顔を見て話してくれる人


 アキハと一緒に集合場所に戻ると、

 予想通りの声が、即座に飛んできた。


「タマキー!」


「いた」

「いたな」


 ナツキが、眦を上げながら近寄ってくる。


「どこ行ってたの!? 私の番、明らかに後回しにされてない!?」

「順番とか言うな」


「カズネとラブラブしてた」

「してない」

「双子先輩ともどうせ変な約束してきてる」

「変ではない」

「メグミともベンチでイチャついてたでしょ」

「イチャついてない」

「ヒカリさんとも、なんか“いい空気”だったでしょ」

「いい空気とは」

「アキハとは間に誰も入れない空気作ってた」

「……」


 ナツキは、俺の腕を掴んで引っ張る。


「来て!」

「どこへ」

「二人きり!!」

「言い方!!」


 アキハがいってらっしゃーいと言わんばかりに手を振っている。


「あ~、ナツキ先輩が、誘拐してます~」

「にゃふ、タマキさん、花火までには戻ってきてくださいね」

「タマキくん、生きて!!」


 誰か助けてよ。


 花火の準備の音が、遠くから微かに聞こえる。


「で」


 ナツキが、じっと俺を見る。


「なんだよ」


 目は正直だ。

 嬉しそうで、寂しそうで、少しだけ怖がってる。


「ねえタマキ」

「ん」

「今日の私、可愛い?」

「可愛い」

「即答なのムカつく」

「実際可愛いから」

「言われ慣れてるのよ!」

「じゃあ何が欲しいんだよ!?」

「……特別感」


 明らかに照れた顔で言うな。

 ずるい。


「特別感ってなんだよ」

「……腕、組んでいい?」


 だから、照れた顔で言うなって。


「わかった、ほら」


 素直に腕を差し出す。


 ナツキが、俺の腕にぎゅっとしがみついてくる。


「えへへ」

「キャラ崩壊してません?」

「だって浴衣だし」

「浴衣関係ないだろ!」


 彼女は笑って、少しだけ真面目な声になる。


「夏休み、終わるじゃん」

「うん」

「終わったら忙しくなるじゃん」

「うん」


「“そろそろ何か変わるんだろうな”って、皆なんとなく分かってるんだよね」


 会場のざわめきが、大きく聞こえる。


 腕を握る力が、強い。


「変わるって言っても、全部が壊れるわけじゃないけどさ」

「……」

「“今のままではいられないんだろうな”って、皆勘づいてるっていうか」


 それは、多分、俺が一番分かっていなきゃいけないことだ。


「だからね」

「ん」

「終わらせないで」

「……は?」

「カズネが可愛いまま笑えるように、メグミが逃げ場所を失わないように、フユミが皆の中で笑顔でいられるように、アキハが前を向いて歩き続けられるように、マシロ先輩が元気で真っすぐ進めるように、マヨイ先輩が優しく温かいままであれるように、タマキが壊れないで幸せになれるように」


 ……そんなの。


 そんなの、俺だって終わらせたくない。


「……ナツキは?」

「え?」

「ナツキの分が無い」

「んー?んーーーーー。あ、じゃあさ」


 ナツキが、何か悪戯を思いついたような顔で顔を覗き込んでくる。


「今、言って」

「何を」

「“好きなところ”」

「自分だけ即支給求めるの反則じゃない?」

「私のぶんを聞いたタマキが悪い」

「こないだ部室で言ったじゃん」

「今ここで♡」

「なんで……」

「二人きりで、顔を見ながら言われたいなー♡」


 俺は天を仰いだ。

 もう空は大分暗い。


「……本気で生きてるとこ」

「それ、前も聞いた」

「じゃあ部室では禁止されてたことで」

「えー、外見ー?」


 不満気な声を出すナツキを正面から見て、言う。


「顔も、スタイルも、声も、風呂上がりの髪も、油断している時に見える肌も、眠そうな表情も、真剣な眼も、悪巧みしてるときの顔も、水着姿も、浴衣姿もいいと思う」

「……」

「総じて、ナツキの見た目が好き」

「……」


 恥ずかしい。

 自分の顔が真っ赤なのがわかる。


 ナツキの顔も真っ赤だ。


「……やばい」

「何が」

「今の、効いた」

「言えっつーから」

「ごめん」


 その瞬間、遠くで――


 ドン、と低い音。

 花火の一発目の試射みたいな音が響いた。


 ナツキが、ぱっと顔を上げる。


「……始まる」

「始まるな」


 ナツキは、手を繋いだまま、俺を見て笑った。


「帰ろ」

「うん」


 シートへ戻る道すがら、ナツキがぼそっと言う。


「ねえ」

「いいよ」


 即答したら、ナツキが一瞬だけ固まった。


「……え、まだ何もいってないよ?」

「何か知らんけど、お願いだろ。いいよ」

「待って、ちょっと照れる」

「悩む意味ないし」


 彼女は、浴衣の袖で顔を隠して、すぐに顔を出す。


「“学年一のモテ女のわがまま”叶えて?」

「自称した」

「一回言ってみたかった」


 笑いつつ、俺を見る。


「今日の花火、皆と一緒でいいけど、最後の一発が上がるときの隣は私」

「いいけど」


 言い方は軽い。

 でも、目は本気だ。


「“あの夏の終わりの花火、隣にいたのはナツキだったなー”って、

 あとで思い出す役は、誰にも譲らない」

「……」


「他の子との花火も、別に止めないよ?」

「うん」

「私も皆のこと好きだし、皆と遊ぶの楽しいし」


 ナツキは、ふっと笑う。


「でも、隣は、私にちょうだい」

「……ずるくない?」

「タマキよりは、ずるくないよ」


 ナツキは、ゆっくり言葉を続ける。


「だってさ」

「ん」

「タマキ、『本気で生きてるところ好き』って言ってくれたじゃん」

「言ったな」

「アレの方が、ずるいから」

「そうかなぁ」

「そんなこと言われたらさ、“あー、この人の人生に本気で口出ししたいわー”って思っちゃうじゃん」

「本気のスケールがでかすぎる」

「だって、私だもん」


 そう言って、笑うナツキの笑顔は、とても綺麗だった。


 腕にしがみついたまま、耳元で囁いてくる。


「ほら、行こ」

「ナツキ、重いんだよ」

「浴衣の女の子に“重い”は最低」

「言い方が悪かった」

「反省して」

「反省します」


 ナツキが満足そうに頷く。


「うん。よろしい」


 集合場所が見えてきた。


「タマキ先輩~、花火始まりますよ~」

「にゃふ、さっき試射あったんで、本当にもうすぐです」

「ほら、タマキくん!ここ座って!!」


 皆と合流した瞬間、ナツキが仕切る。


「はい!みんな集合!花火来るよ!!」

「いなかったの自分なのになー」

「モテる女の統率力です!!」

「黙れ、シンジとカズネ!」






(つづく)

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